すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

読書録1 ~座布団20枚

2025年01月09日 | 読書


 元旦の読み始めは例年と違った。『残酷人生論』のことは一区切りついたように思ったのか、昨年末に買い貯めた中から『未来のだるまちゃんへ』(かこさとし 文春文庫)をまず選んでみた。2018年に92歳で没した偉大なる絵本作家、児童文学者のいわば自伝とも呼んでいい一冊だ。「迷い道人生」に学ぶべきことは多い。


 大正生まれの生き様を見る時、なんいっても「肚のすわり方」に圧倒される。学ぼうと思って学べるものではない。戦争体験がそれを支えていることには間違いなく、修羅場のくぐり方が決定づけるのかもしれない。「だるまちゃん」シリーズはその結晶であろう。重みを感じつつ、想像力を発揮して軽やかに読みたい。


 併行して読んでいたのが『噺は生きている 「古典落語」進化論』(広瀬和生 ちくま文庫)。落語評論家の著者が、有名な5つの噺をその成り立ち、落語家ごとの特徴などかなり綿密に分析している。初級ファンであるが、いずれの噺も何度か聴いた。しかし、ここで噺家という仕事に関して認識を新たにしたことがある。


 演者による噺の違いは、今まで「脚本」「演出」だと解釈していた。それは間違いではないが、それ以前に「解釈」「判断」があり、そして演出する「自己の表現技能」を生かすトータル性によって成り立つ。さらに時代性があり、やはり初級者としては「現代性」に惹きつけられる。それを、簡単に「好み」と言うが…。


 ちくま文庫にこんな本が…『しかもフタが無い』(ヨシタケシンスケ)。これは著者が絵本作家になる10年前に刊行された、なんと「アイデアスケッチ」集である。今につながる妄想の数々が並んでいる。なんとなく分析的に見てしまう自分には及びつかない真実への希求。文句なく、座布団20枚あげたい一節があった。


 「神サマに言われたくない言葉」
  ・・・何度もチャンスをあげたでしょう?