すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

長月十番勝負その九

2023年09月25日 | 絵本
 9月22日。午前は昨日書いた中学校でのビブリオ。12時半までかかり、図書館へ戻っておにぎりを食べ、すぐに三輪小学校へ向かう。5,6年生への読み聞かせがある。選書は結構悩んだのだが、結局、水曜日と同様にする。構成がいいと思うし何よりここ数日絶不調で新規練習ができない。ドリンク剤で凌いでいる。


 最近のお笑い『ねこ、いる!』、昔の?お笑い『ねこのさら』、そして実に絵本らしい絵本『なまえのないねこ』という流れは、20分弱としてはまとまっている気がする。落語が入っているのでどうしても上学年向きだろう。今回は、語ってからオチについて話したら、「あああっ」と反応してくれた子もいて嬉しい。





 さて、メインの名作『なまえのないねこ』。わずかに知っていた子はいたようだが、これは何度でも触れさせたい作品である。「名づけ」こそ存在証明であり、それは存在を認めてくれる他者がいることと結びつく。限られた文章の中で、世の中には知らず知らずのうちに疎外されている者がいることにも気づく。


 当然、落ち着いた調子で語りかけていく。他の猫の台詞もあるのだが、極端に声調を変えない方が全体のトーンを乱さない。クライマックスは、女の子との出会い。手でページをめくる時も今回のようにPPTで行う場合もここはゆっくりと進む。一語一語の重みが伝わるようにしたい。工夫のしどころがある作品だ。

長月十番勝負その七

2023年09月22日 | 絵本
 9月20日。午前のこども園に続いて、午後は高瀬小学校へ。ここは小人数なので4年生から6年生までが一緒だ。多少学年差に気を遣う必要はあるのだが、そこは絵本の持つ強みがある。ストーリーだけでなく、絵の面白さ、何よりジャンルの広さが大きい。冒頭に「今日はいろいろなタイプの本を読みます」と語る。




 動物愛護週間でもあり、図書館で「犬・猫特集」をしていることを紹介しつつ、数多い「猫」の本を取り上げる。最初は、もはや定番ともなった『ねこ、いる!!』である。お笑い芸人が描いた絵本で、フリップ芸に近いと話し、それから昔の笑いということで「落語絵本」に移っていく。春に取り上げた『ねこのさら』だ。


 講談も含めこうした類の絵本は、内容的に難しい面があるかもしれない。だから感想で一人の子が「五七五の連続を聞いているようだった」と、話の調子に着目してくれたのは嬉しかった。語りを磨くというところまではいかないが、何度が読み込んでいるうちに、いくらか手慣れてきている。慢心せず練習したい。


 最後は『なまえのないねこ』。数年前発刊され、数々の賞に輝いた作品である。少しめくってはいたが、実は今回初めて読み聞かせに取り上げる。実にいい。町田尚子の絵のタッチは他の作品でも堪能しているが、竹下文子の展開させる物語性の深さに惹かれる。語り方も考えざるを得ない。22日にもう一度チャレンジ。


長月十番勝負その六

2023年09月21日 | 絵本
 秋めいてきた9月20日午前。来週の予定を繰り上げてのこども園読み聞かせがある。この頃は続けて紙芝居を最初に取り上げていたが、今回は大型絵本とする。図書館の棚を一通り漁ってみていて、これがいいかなと実のところ軽い気持ちでピックアップした一冊だ。名作『だるまちゃんとてんぐちゃん』である。





 40人ほどを相手に「前に読んだことがあると思うけど…」と通常版の本を出して訊くと、「あるう」と声を出した子は数名だった。確かにそうなのかもしれない。次々に新しい絵本が発刊されているし、大人が知っていても今どきの子の多くが読んでいるとは限らない。大型版を出すと、わあっととたんに見入ってくる。


 ストーリーは単純で、だるまちゃんがてんぐちゃんの持っているあれこれを欲しがり、だるまどんに用意してもらって見せに行くという形。読み聞かせ方を考えると、改めて絵の見せ方もポイントになるなあと気づいた。たくさん用意してくれたもののなかから、てんぐちゃんが選ぶものは…といった見せ方が有効だ。


 今どきの子どもたちの受け止め方はどうかやや心配もあったが、やはり名作は名作だ。子どもたちの目と耳が惹きつけられているのが伝わってきた。長く読み継がれる作品には、心をとらえる芯のようなものがある。それは達磨と天狗という対照的な造形と、筋の繰り返しの妙と変化、明朗さといった点が挙げられる。


 大相撲中継をしている今の時期ならと思い、力士が登場する絵本を一冊取り上げた。『たぷの里』という書名が、力士の体型とあいまって面白い。子どもたちの頭などに「たぷ」と胸部が乗っていく繰り返しがユーモラスだ。これなら乳児であっても笑えるかなと思う。そのあとに2冊短いものを取り上げ、終了

長月十番勝負その五

2023年09月16日 | 絵本
 昨日は、今月上旬に急に学級閉鎖になり読み聞かせを延期したこども園に向かった。一つの紙芝居と3つの絵本のラインナップは、今までと同様だった。わずか12人なので、非常に反応が拾いやすい。女の子が多くお転婆な雰囲気もあるので、今回のラインナップの締め(笑)として、ちょっとした工夫を入れてみた。

 

 ページのめくりのタメと台詞の繰り返しで、期待感を持たせ、盛り上げる手法だ。『わにくんのだめだめアイス』では、わにくんがぶたくんから預かったアイスを食べたくなってしまう場面…十分に間を取って、子どもたちの心を寄せさせる…一昨日、高校生の読み聞かせを聞きながら、自分ならと思いついたことだった。


 他人の読み聞かせを聞くことの大切さを、今さらながらに知った。そしてもう一つ、今回のラストに使っている『ぱれーど』の反応が良くて、少し驚くほどだった。この絵本はなかなか面白い、惹きつけられると考えて選書したのだが、今までの三館では集中してみているが、能動的な反応は今一つ感じられなかった。



 しかし、今回は「あれっ、〇〇がいる」「●●も」「すごい」などダイレクトに喜んでいた。集団の雰囲気と言えばそれまでだが、読み手としての声かけ…絵を見せるための勘所のようなことが不足していたかもしれない。本当にたくさんの生物・無生物の先頭に立つ「ぼく」への共感は、子どもなら誰しもあるはずだ。

長月十番勝負その二

2023年09月07日 | 絵本
 実は「その2」は一昨日のはずだった。朝にいつものようにこども園に電話をして確認した。そしてその30分後になんと「学級閉鎖が出てしまって…」という連絡をもらい、急遽来週に延期となった。まだまだ怖いコロナ感染である。ということで昨日は別のこども園、こちらは無事に年長組さんへ4冊読んだ。


 最初の紙芝居。最近はそれぞれの園で別タイトルになっている。というのはどうにも反応が…、というより語っている自分自身が楽しめない感覚になっていて、そこでごそごそと書棚を探して見つけたのが『ぬすびととこひつじ』という新美南吉作品。これは学校にいた時、ずいぶん低学年に読んだお気に入りである。


 シンプルなストーリーだし、羊の「メェー」の鳴き声の変化も語り手としては楽しい。それにしても、今さらながらに気づいたことがあった。この紙芝居は題名が下部に書いてあるではないか。扉を開く順番を変えなくてはならない。「右⇒左⇒上」が定番なのは題名を最後にする演出だから、上から開くことになる。





 この作品は案の定じっと聴き入ってくれた。安定感ある定番を持つのは心強い。その後は3つの絵本。『わにくんのだめだめアイス』(すみくらともこ)…短くてもウイットがあってよい。それから園児でも十分面白いと思い『お月さんのシャーベット』(ペク・ヒナ)を出してみた。独特の色味に惹きつけられていた。


 最後は『ぱれーど』(山村浩二)…とんとんとん ぼくが たいこを たたいたら みんな めが さめ おきあがる」と始まる。リズムに乗った文章と、パレードに連なって登場する多くの生物、無生物が賑やかで、心浮き立つ。「きょうはおしまい またあした」というエンディング。まさにおやすみ前の一冊にふさわしい。

長月十番勝負その一

2023年09月04日 | 絵本
 「勝負」と気張ったタイトル付けをしてみたが、なんのことはない備忘である。「十番」としたのは、実は今月はこども園や学校に出かける回数を予定表に書き込んだらなんと10回。ほとんど読み聞かせだが、いずれにしても子どもたちを前に語ることであり、最近沈滞気味の拙文活動(笑)の手がかりとしたい。


 今日月曜は西馬音内小学校2年生への読み聞かせ。メニューは『みち』(五味太郎)を皮切りに、『つかまえた』(田島征三)『お月さんのシャーベット』(ペク・ヒナ)、そして『トラネコとクロネコ』(宮西達也)の4冊だった。2冊目、3冊目は夏にふさわしい内容で、この夏何度か取り上げたのでかなり安定して読めた。



 『みち』は、なんと五味太郎28歳の絵本作家デビュー作。福音館書店から出ている「かがくのとも絵本」シリーズで復刻された一冊だ(2010年)。「せまいみち、ひろいみち、いっぽんみち、わかれみち…」と始まり、様々な「みち」を描く。語の意味を拡げていく時期に触れさせたいと考えた。じっと見入っていた。


 宮西達也さんが本館絵本ライブの今年度講師である。参加対象が2年生なので、ティラノサウルスやウルトラマンシリーズなどの紹介をして、少し興味づけしてから、自分の一番のお気に入り『トラネコとクロネコ』に入った。この作品をとりあげるのは3年ぶりだ。二匹のキャラクターの使い分けがポイントだ。


 20分以上びっしり語り続けた。選書に迷いもしたがバラエティに富んでいたので、子どもたちの集中も切れなかった。感想も別々の本を取り上げてくれた(さすがに『みち』は出なかったが)。宮西作品でブックトークしても面白かったかなとふと思った。とはいえ十番勝負、まずまずな滑り出しと評価しよう。

「かないくん」を読む

2023年07月31日 | 絵本
 「ほぼ日」ファンを自称していたので、絵本『かないくん』の存在はもちろん知っていた。ただ、発刊された当時も関連ページを読み込むことはなかったし、図書館に勤めてからも恥ずかしながら蔵書としてあることさえ認識していなかった。「一般芸術」に置かれている絵本は何冊か読んではいたけれど、見落としていた。




 今回、「大人のための読み聞かせ会」はどうかと思いついた5月の頃に、書架で見つけ、自分が読むならこれだとすぐに思った。こういう展開は「入れ子」構造と呼べるかどうかわからないが、それまで語られたことが「書きかけ」になっている物語と知るときに、すっと心に落ちる感覚、そしてそこから続く生の営み…


 全体的に淡く、色調としてはやや暗めの絵が続く。しかし、後半の二人の対話は、弱まっていく煌めきと、新しく強さを増していくような輝きとの対比も感じられる。ことさらに声色の変化を取り入れなくとも、読み方は自ずとその人物になりきっていくようだった。時間的な飛躍もあるので、間はたっぷり必要だ。


 さて、テーマは「死」で間違いない。死によって完結する物語はあくまで個人のものである。しかし「生」は個から個へ引き継がれていく。その歩みはけして止まらない。幼くして命を落とす子も大往生を全うする者もその価値に変わりはなく、結局は誰かの心の中にしまい込まれ、幾たびも出会える…と信じたい。

雨の日、晴れ間に語った本

2023年07月20日 | 絵本
 先月末から今月にかけて読み語った絵本はどれも印象深い。忘れないうちにメモしておきたい。


「2ひきのカエル」



 時季的にぴったりと取り上げた。PPTとして取り込もうとスキャンしたが大判なので文章部分が切れるので、久しぶりに全文打ち込みした。それもあるのか一つ一つの会話が実にしっくりと入ってきた。落語のようなテンポもあり、また英国?らしさも随所に感じる。読んでいて楽しい一冊だった。新レパートリーとなった。



「ダンデライオン」



 閉架書架を調べていた時、手に取り気に入ってしまった。少し長めなので小学校低学年くらいからだなと判断した。最初はごくありきたりの話だが、途中であれあれとなる展開なので、聞いている子どもたちの目が集中してきて心地良かった。黄土色とこげ茶が主体の色構成も特徴ある。タンポポの英訳がダンデライオンと知ることも楽しい。



「つかまえた」



 なんといっても田島征三の独独のタッチが素晴らしい。単純明快なストーリーは、氏ならではの躍動感あふれるものだ。短いセリフだけれど、今の子どもたちがなかなか体験できない世界を端的に語るので、子どもたちはじっと見入って、聴き入ってくれる。小学生に向けて語ったが、このあと園児にもぶつけてみたい。



 そして大人のための読み聞かせ会で取り上げた「かないくん」。
 これは、もうちょっと心を落ち着けて語りたい。

落語絵本、二席終え

2023年06月05日 | 絵本
 先月と今月は5年生、6年生の読み聞かせがあり、購入した落語や講談絵本の出番だと思った。紙芝居も含め今まで何度か試みたが、正直子どもたちの反応は今ひとつ。今回もその覚悟はできている。しかしこうした文化に触れることも大切だと考えるし、読み聞かせの大きな前提、自分が気に入っている点が大きい。


 さらに言えば「語り」の味が心地よい。去年いただいた感想集にたった一人だが、語りの速さが気持ちよかったと書いてくれた子がいて、嬉しかった。そう表現してくれなくとも、生の声で耳に届けられたらという思いもある。さて、今回選んだ落語絵本は次の二席。とても有名な噺であり、何度も高座で聴いている。


     

 道具屋が茶店で見つけた貴重な茶碗。猫の食べ物皿にされているのを見つけ、一芝居たくらむが…。道具屋と茶店の主人のやりとりはごく自然に運ぶが、最後のどんでん返し(オチ)が楽しい。解説を入れたのは「三両」の部分。やはりどの程度の価値か子どもにわかるようにしたい。のどかな時代の雰囲気も伝えたい。


     

 これも寄席などでよく語られる噺。お馴染みの熊五郎、八五郎のキャラクターの演じ分けは大事だろう。「そこつ」は現代では死語であるが、こうした滑稽さには江戸文化の持つ強さも同時に感じられる。「浅草」という舞台が地方の小学生にはわかりづらいとはいえ、雰囲気は絵からもある程度伝わるのではないか。


 さて二席演じてみて(笑)、自分の出来としては80点ぐらいはやれるのだが、やはりどうしても反応は薄い。表情をみると面白そうという目がわずかに感じられたことが救い。言い訳めくが、場の設定をもっと限定すれば雰囲気が生まれたかもしれない、と困難なことも浮かぶ。ともあれもう少し継続して語りたい。

絵本漬け、幸せな一日

2023年05月11日 | 絵本
 予想していなかったが、こども園と学校の読み聞かせが重なった。もっともこども園は午前、学校は午後なので他の迫った仕事もなく、計画通り行うこととした。こういう日はこの先ないかもしれないし、残しておきたい。こども園では4冊(うち紙芝居が一つ)、学校は下学年対象で3冊取り上げ、計7冊読みきった。


『あか あお ふたりで』先日書いた通りのなかみ。これは、鉛筆で何が描かれているか、子どもの反応があるほうが楽しいし、やりやすかった。問いかけてもいいと感じた。

『あばれネコ』…キューライス作の、楽しい絵本だ。ただネコが暴れて、最後に母親に叱られるという顛末だが、その単純さが楽しい。暴れ具合で聞き手のボルテージも高まった。

『きみなんか だいきらいさ』…これも先日書いた。小さい絵本をモニターで拡大したのはよかった。仲よくなる結末は予想していたようだが、二人の表情がいいし、子どもたちも食い入るように見つめてくれた。

『となりのさくら』(紙芝居)…落語をもとにした絵本。長野ヒデ子さんの絵が可愛いし、ストーリーも単純なので見入ってくれたようだ。「花」と「鼻」の違いの妙が伝わったかどうか。




『てんてんきょうだい』…「一年生のために」とひらがな学習を意識させたが、それはお構いなしの楽しい絵本である。セリフにも濁点をつけるので、読みは結構大変だが、たいそう盛り上がった。

『ゴリラさん、だめです』…声をかけるうさぎと、しゃべらず行動するゴリラのズレの繰り返しが楽しい。子どもたちも先を予想して読むが、山場でひっくり返る面白さは印象に残ったかな。

『まっくろいたちのレストラン』気に入りの「恋の絵本」。さすがに一年生には無理だったかもしれないが、静かに聴いてくれた。何が心に残るかは、それぞれなのだが「まっくろいたちの…」と言えば思い出してくれる話になった気がする。

 一度に多くこなすとなると、散漫な脳みそがさらにばらけて集中できないのが常だ。しかし今回は準備期間もあったので、まずまずの出来だった。この経験を少し糧にしたい。