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参参参(二十六)その日暮らしの…

2023年07月03日 | 読書
 半月以上かけた新書、二日で読みきった小説、頷き、首を傾げて読んだ「哲学」本と、まあいろいろ。


『なつかしい時間』(長田弘  岩波新書)

 これほどゆっくりと新書を読んだのは久しぶりだ。しかも再読である。そしてこの後も繰り返し読む気がする。風呂で濡らしてしまい、すぐまた注文したほどだ。今まで同様保存用として書棚に置く。キーワードをランダムに挙げていくと、「風景」「本」「記憶」「一日」「習慣」「読書」「見つめる」…そのどれもが日常語だけれど、深く入り込めばそれらが新しい意味を持つことを知らされる、そんな一冊だ。だからこそ何度も読む。頭の出来の悪い自分は、これからも読まねばならない。まさに「本」といえる本。今回はこの一節を引用しておこう。
「じぶんの記憶をよく耕すこと。その記憶の庭によくそだってゆくものが、人生とよばれるものなのだと思う」





『黒紙の魔術師と白銀の龍』(鳥美山貴子  講談社)

 新聞で見かけた気もしていたが、先日知り合いから教えられた作家。なんと隣市在住だという。児童文学新人賞に輝いた一作ということで手に取った。それにしてもこうした類は何年ぶりに読んだか。ファンタジー、スペクタクルと表現していいかどうかわからないが、いかにもアニメネイティブには魅力的な素材や展開のような気がする。自分の好みとは別ではあるにしても、勝手に親近感を抱きながら、今後を注目して見たい。



『21世紀の楕円幻想論』(平川克美  ミシマ社)

 読んでいてふっと心を安らがせてくれる一節に巡り合えると嬉しい。それはきっと、自分を縛っている縄を解き放つまではいかなくとも、緩めてくれる感覚だろう。これはまさしく、その典型だ。「わたしたちは、ある場合には自己利益のために働き、ある場合は他者のために、自己犠牲を強いているかのような行動をするのです。」この本の書名にある「楕円幻想論」とは、中心点を一つにせず二つ持ってみようという提言と自己解釈した。絶えず二者択一を迫る社会状況の中で生き延びるために、そんなふうにイメージすることが役立つに違いない。そもそもミドルネームに「about」を選んでいる自分(一体、いつ使っているんだ・笑)なのだから。