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桜と絵本と豆乳と

あの頃、渾身の演出を

2024年10月06日 | 雑記帳

 孫の学習発表会を観に出かけた。9年ぶりの「学校」の発表会。長く続けているこのブログには、何度となく発表会のことやその時期のことを書いている。直截に「発表会の季節が好きだ」と綴った文章もあるほどだ。担任をしていた時と離れて携わった時の違いはあるけれど、時季の醸し出す雰囲気が好きなのだ。

 

 孫は一年生なので、見終わってふと思い出したのは、唯一自分が一年生を担任していた時のこと。これは拙著には記していないが、実は印象深い出来事だ。発表会の定番はいつも一年生によるオープニングである。ここにも自分はある工夫を凝らした。山間小規模校のわずか9名の子どもたちを、存分に照らしたいと。

 

 舞台だけでなく会場の体育館をフルに使った。5人を幕の後ろに控えさせ、4人は体育館の四隅に一人ずつ配置した。観客を取り巻くように声を響かせてから、全員がステージに揃うように姿を見せる。「はじまるよう」「はじまるよう」…と走ってこさせる。「こっちだよう」「そろったよう」…で、全員が舞台に上がる。

 

 凝らさなくとも一年生は喜んでもらえる。ただそれに甘えられないと、渾身(笑)の劇脚本を書いた。話は「ねずみの嫁入り」である。一番身体の小さかった女児をネズ子に、当時一番おとなしそうな男児をネズ夫にした配役だ。婿候補に様々なキャラクターが発揮できるので、少人数にはお似合いのストーリーだ。

 

 ハイライトはネズ夫のプロポーズ場面。ネズ子に「ネズミは小さくて、弱くてすぐ死ぬから…」と言わせて、ネズ夫に返させる言葉は「ボクは死にませーん」。ご存知、あの有名なドラマの名セリフ。間を置かずにタイミングよく、あの曲が流れ出す…ねらい通りに会場は一瞬あっけにとられ、笑顔に満ちあふれた。