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読書録9~天災は、忘れさせまいと…

2025年03月10日 | 読書
 「天災は忘れた頃にやってくる」という警句は、昨今の状況をみると「天災は、忘れさせまいとやってくる」と言い換えてもよいほどだ。先日、NHK震災関連で1月に大船渡綾里地区を取材した番組が放送されていて、過去の津波災害を教訓にして高台へ移転した歴史と経緯を知り、なんとも言えない気持ちになった。




 「天災は忘れた頃にやってくる」は、寺田寅彦のことばとされている。この随筆集にも「災難雑考」の章があり、20ページ弱にわたって地震、台風だけでなく事故も含めた災害について語っている。「吾々人間はこうした災難によって養いはぐくまれて育って来た」と受けとめる、この先達の見方に学ぶことは多い。


 「(歴史は)殆どあらゆる災難の歴史という事実」を「科学的宿命観」と位置付けながら、対策はどの範囲でできるか、またその結果予想されることなど、途方もなく目配せの広大な文章であった。科学の限界という言を聞くが、「科学は不思議を生み出すものである」と言う氏は、見ている方向が凡人と明らかに違う。


 「」という章に「笑うから可笑しいので、可笑しいから笑うのではない」とあり、懐かしく思い出したのは有田和正先生の言だ。同様に言っておられたが、多分に教師の姿勢、習慣として認識していた。しかし、この本では生理的現象として神経刺激と緊張緩和作用の関わりが示され、信条が裏打ちされた気がした。





 10年以上前の小説だが、角幡唯介(文庫解説)つながりで読んでみた。林業小説といわれる内容は、地方の過疎問題と一体とも言える。そして登場人物たちの多くが目と心を向ける「山」という存在は、ここ数年でまた大きく変容していると思いを馳せる。山火事があり、野生動物との境界問題ありで考えさせられる。


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