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【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「レンタルチャイルド 神に弄ばれる貧しき子供たち」石井光太

2010年05月23日 23時02分30秒 | 読書(ノンフィクション)
「レンタルチャイルド 神に弄ばれる貧しき子供たち」石井光太(新潮社)

石井光太さん最新刊、5/18発売されたばかり。
(私は先月から予約して購入した)
次の三部から構成される。
第1部 傷つけられし子の群れ
第2部 幼き者たちの黒い城
第3部 街の夜明けと離散

「物乞う仏陀」という本がある。
アジア各地の障害者や乞食を取材したノンフィクションだ。
この第八章がインド編になっていて、レンタルチャイルドの話が出てくる。
マフィアが路上生活している幼い子どもの手足を切断したり、目をえぐったりして障害者にする。
なぜなら、その方が乞食をしても儲けが大きいから。
マフィアはそうやって稼がせて上前を撥ねるのだ。

この作品は、『その後』を取材して約10年にわたって経過を描いている。
ここ数年、インドは著しい経済成長を遂げている。
路上生活していた子供たちはどうなったのか?
マフィアはどうなったのか?
時代はどのような影響を与え、飲み込んでいったのか?
詳細なレポートによる、圧倒的な現実に打ちのめされる。
ほとんどの人は言葉を失うでしょう。
(あるいは、読み進むことが出来ないかも)

【著者のブログ・発売のコメント】
新刊『レンタルチャイルド』発売!

【関連書籍】


【ネット上の紹介】
インド、ムンバイへの三度の旅。貧困の最深奥を描く問題作。高度成長真っ只中、インドの商都ムンバイの街角。物乞いは憐れみを誘うため、マフィアから借りた赤ん坊を抱き路地に立っていた。だが月日を経て、その赤子は「路上の悪魔」へと容赦なく変貌させられていく。そして、今。子供たちの「その後」は? 最後に著者の目に映るものはなにか。執筆に十年をかけた渾身のノンフィクション!

「アラベスク」第2部(1)(2)山岸凉子(メディアファクトリー)

2010年05月23日 16時38分54秒 | 読書(マンガ/アニメ)
「アラベスク」第2部(1)(2)山岸凉子(メディアファクトリー)

「アラベスク」完全版第二部が発売された。
これにて完結である。
第一部も面白いが、この第二部が「アラベスク」真骨頂であり核心部分。
前半は、ノンナ同様ユーリに見いだされ田舎から出てきたヴェータが物語を牽引し、
後半は、ドイツからやって来たピアニスト・カリンが牽引する。
前半は、亡命シーンにハラハラする。
後半は、モスクワコンクールへ向けての盛り上がり・・・特に、コンクール・シーンは圧巻。

レミル:かつて劇場がこんなにも静まりかえったことがあっただろうか
ユーリ:この目ではじめて見る 霊感というものを・・・・・・


今日の「テレプシコーラ」に繋がる初期傑作である。
ノンナは長身であるが、この時既に著者は、現在のバレエ界を予想されていた事になる。
素晴らしい眼力である。
未読の方は、この機会にぜひ読んで欲しい。
既読の方は、改めてこの傑作を再読し鳥肌を立て、感涙にむせんで欲しい。

PS
ちょっと気になるんだけど、「テレプシコーラ」で、空美ちゃんのお母さんがヴェータに似ている。
スターになれなかったヴェータが娘の空美にたくして、ノンナである六花ちゃんに挑戦している、と考えると面白い。

「天人唐草」山岸凉子

2010年05月23日 14時43分47秒 | 読書(マンガ/アニメ)
「天人唐草」山岸凉子(潮出版社)

先日、チラリと紹介したが、きちんと書いておこうと思う。
(参考:「雨無村役場産業課兼観光係」(3)岩本ナオ
山岸凉子さん過去の短編集からの選りすぐり。
全6巻のうちの5巻目。

私はファンなので、たいていの作品を読んでいるつもり。
1巻~4巻は、購入済み単行本と内容がダブってしまうので買わなかった。
でも、5巻目収録の「流々草花」は未読なので即購入。
この内容は、簡単に言うと「デビュー裏話」、って感じ。
山岸凉子さんが、どのように苦労してデビューしたか、って話。
イニシャルになってるけど、講談社や集英社と解る。
また、M編集部やR編集部となってるのも(トーゼン)マーガレット編集部とりぼん編集部と解される。
非常に興味深い話である。(ただしファンにとって)
著者のデビュー作は「レフトアンドライト」であるが、今読んでもおもしろい。
でも、さすがに今日の山岸凉子さんを予想するのは困難。
りぼん編集部のA氏はエライ!
山岸凉子さんをデビューさせた眼力に恐れ入る。
それだけで、編集者として一生分の価値がある。
以下、「アラベスク」第2部、モスクワコンクールでの場面。

ザカレフスキー:しかしきみの眼力にはおそれいるね 今日の彼女を予想していたとは
ユーリ:いえ正直いってノンナがこれほど踊ってくれるとは・・・


ノンナと山岸凉子さんがダブル。
現在日本で漫画家と呼ばれる方が何人いるか知らないが、
山岸凉子さんは最高位の1人。
まぎれもない天才である。

山岸凉子スペシャルセレクション 第Ⅰ期全6巻 各巻の内容

Ⅰ わたしの人形は良い人形
わたしの人形は良い人形/鬼来迎(きらいごう)/ハーピー/グール(屍鬼)/白眼子(はくがんし)

Ⅱ 汐の声
汐の声(しおのこえ)/天鳥船(あめのとりふね)/八百比丘尼(やおびくに)/笛吹き童子/蛭子(ひるこ)/鬼

Ⅲ 神かくし
月読(つくよみ)/肥長比売(ひながひめ)/天沼矛(あめのぬぼこ)/黄泉比良坂(よもつひらさか)/海底(おぞこ)より/夜叉御前/海(わだつみ)の魚鱗宮(いろこのみや)/神かくし/神入山(神かくし Part.2)

Ⅳ 甕のぞきの色 
甕のぞきの色(かめのぞきのいろ/ウンディーネ/木花佐久夜毘売(このはなのさくやひめ)/スピンクス/パニュキス/月氷修羅(げっぴょうしゅら)/着道楽

Ⅴ 天人唐草  
天人唐草(てんにんからくさ)/銀壺・金鎖(ぎんこ・きんさ)/シュリンクス・パーン/負の暗示/悪夢/星の素白き花束の(ほしのましろきはなたばの)/蜃気楼/流々草花(るるそうげ)

Ⅵ 夏の寓話
籠の中の鳥/時じくの香の木の実(ときじくのかくのこのみ)/二口女(ふたくちおんな)/化野の…(あだしのの)/千引きの石(ちびきのいわ)/鳥向楽(ちょうごうらく)/夏の寓話/パエトーン/夜の虹

PS
漫画家と編集者のトラブルは良く聞く。
集英社、講談社、小学館・・・いずれも一流出版社。
就職できるのは一流大学出身エリートであろう。
それがノンキャリアの漫画家に仕え、しかも相手の方がずっと稼ぐとなると、心中穏やかでなかろう。
簡単に言うと「嫉妬」、と思われる。
でも、よく考えてみて欲しい。
「才能」があるから漫画家や小説家になり、
「非才」だから、サラリーマンになるのである。
そこのところが解ってない編集者が多い。
中途半端に頭が良くて、プライドが高いので始末に負えない。
もちろん、そんな編集者ばかりではなかろう。
上記のAさんのような優れた編集者もいる。そこが救われる。

ちょっと聞いたエピソードがある。(言葉は不正確だが内容大筋は以下のとおり)
昔、赤塚不二夫さんが編集者に言った、「魔法を使えるヒロインの作品を作りたい」、と。
「ひみつのアッコちゃん」の構想が既にあったのである。
編集者は言った、「この科学の時代に魔法なんてバカか」、と。
バカはお前である。

なお、出版社内実を知る作品として「格闘する者に○」(三浦しをん)がある。
おもしろいから読んでみて。