「名画で読み解くブルボン王朝12の物語」中野京子(光文社新書)
先月から予約して購入した。
オビの文句は『全点オールカラーで楽しむ250年のブルボン王朝史』。
これは面白いよ・・・高校・世界史教科書の百倍くらい面白い。
学校の教科書なんて、私に言わせれば、『味の付いていない料理』のようなもの。
いくら素材が良くても、味が無かったら美味しくない。
だいたい教科書では、人物像を描かない・・・「どんなキャラクターなのか」とか「行いは良かったのか、悪かったのか」とか。
その点、中野京子さんは香辛料きかせた描写をしてくれる。
例えば、マリー・ド・メディシス。
次のように書かれている。
●「告白好きの人間は逸話が少なく、面白みもない」
●政治より自己陶酔が大事だったのだろうか?「見て見て、わたしを見て!」と主張せずにおれなかったのか。確かに、周囲の顰蹙に対して徹底して鈍感なのが、ある意味彼女の強みではあった。
●自意識と自惚れは強いが強烈な個性やカリスマ性に乏しく、周囲を平伏させる能力はなかった。
・・・いかがでしょうか?
もうぼろくそ、である。(だから面白い)
さて、私の好きな人物はアンヌ・ドートリッシュ。(まっ先に読んだ)
次のように書かれている。
アンヌ・ドートリッシュの人気が高いのは、女性としての魅力もさることながら、この母性、それも盲目的な愛ではなく賢明な愛を息子に与え、導き、偉大なる王にし、さらには息子からも深く愛されたという、その点にあるに違いない。
・・・う~ん、褒めてもらって嬉しい!
マリア・テレサについては・・・
「王妃になって以来、幸せな日はたった1日しかなかった」と言い残して44歳でみまかった。悲しい言葉だ。(中略)王妃の死を知らされたルイの感想は「彼女が余に迷惑をかけるのはこれが初めてだ」・・・さらに悲しい。
私にとって、興味深く、長年の疑問を解決してくれた文章がある。(P176-P178)
フランス革命→ロベスピエール→ナポレオン
この移り変わりを分かりやすく説明してくれているのだ。
さらにこの後、王政復古がくるがこれについても以下の説明がある。
かくも大量に流されたあの血は、いったい何だったのかという展開ではないか。徳川の大政奉還を知る身には、驚きとしか言いようがない。いや、それともむしろ日本の無血革命のほうが、よほど異常だったのだろうか・・・・・・。
ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』についても興味深い。(P190)
実は彼女は人間ではない。人間の姿形をとった抽象概念なのだ。
擬人像「自由」は従来、フリジア帽をかぶった女性として描かれるのが決まりである。
最後に総括。
栄華を誇ったブルボン王朝だが、こうして見ると、終わるべくして終わったとの感が強い。ルイ太陽王の過去の威光があまりにまばゆく、プライドばかりが肥大して柔軟性を欠き、自滅の様相を呈しての終焉だ。とはいえ壮大なヴェルサイユと、世界に対するフランスの文化的優位は立派に残したのであった。
以上、簡単に紹介したけどいかがでしょうか?
素材の調理が巧く、味付けも良く、盛りつけもバッチリ。
三拍子揃った作品を楽しんでみては?
【ネット上の紹介】
[要旨]
世継ぎの混乱と血みどろの宗教戦争に彩られた王朝の誕生から、十九世紀、ヨーロッパ全土に吹き荒れた革命の嵐による消滅まで、その華麗な一族の歴史を、十二枚の絵画が語りだす。『名画で読み解くハプスブルク家12の物語』に続く、ヨーロッパの名家を絵画で読み解く第2弾。
[目次]
ルーベンス『マリーのマルセイユ上陸(『マリー・ド・メディシスの生涯』より)』;ヴァン・ダイク『狩り場のチャールズ一世』;ルーベンス『アンヌ・ドートリッシュ』;リゴー『ルイ十四世』;ベラスケス『マリア・テレサ』;ヴァトー『ジェルサンの看板』;カンタン・ド・ラ・トゥール『ポンパドゥール』;グルーズ『フランクリン』;ユベール・ロベール『廃墟となったルーヴルのグランド・ギャラリー想像図』;ゴヤ『カルロス四世家族像』;ダヴィッド『ナポレオンの戴冠式』;ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』
なお、姉妹編に「ハプスブルク家の12の物語」もある。
こちらもオススメ。
先月から予約して購入した。
オビの文句は『全点オールカラーで楽しむ250年のブルボン王朝史』。
これは面白いよ・・・高校・世界史教科書の百倍くらい面白い。
学校の教科書なんて、私に言わせれば、『味の付いていない料理』のようなもの。
いくら素材が良くても、味が無かったら美味しくない。
だいたい教科書では、人物像を描かない・・・「どんなキャラクターなのか」とか「行いは良かったのか、悪かったのか」とか。
その点、中野京子さんは香辛料きかせた描写をしてくれる。
例えば、マリー・ド・メディシス。
次のように書かれている。
●「告白好きの人間は逸話が少なく、面白みもない」
●政治より自己陶酔が大事だったのだろうか?「見て見て、わたしを見て!」と主張せずにおれなかったのか。確かに、周囲の顰蹙に対して徹底して鈍感なのが、ある意味彼女の強みではあった。
●自意識と自惚れは強いが強烈な個性やカリスマ性に乏しく、周囲を平伏させる能力はなかった。
・・・いかがでしょうか?
もうぼろくそ、である。(だから面白い)
さて、私の好きな人物はアンヌ・ドートリッシュ。(まっ先に読んだ)
次のように書かれている。
アンヌ・ドートリッシュの人気が高いのは、女性としての魅力もさることながら、この母性、それも盲目的な愛ではなく賢明な愛を息子に与え、導き、偉大なる王にし、さらには息子からも深く愛されたという、その点にあるに違いない。
・・・う~ん、褒めてもらって嬉しい!
マリア・テレサについては・・・
「王妃になって以来、幸せな日はたった1日しかなかった」と言い残して44歳でみまかった。悲しい言葉だ。(中略)王妃の死を知らされたルイの感想は「彼女が余に迷惑をかけるのはこれが初めてだ」・・・さらに悲しい。
私にとって、興味深く、長年の疑問を解決してくれた文章がある。(P176-P178)
フランス革命→ロベスピエール→ナポレオン
この移り変わりを分かりやすく説明してくれているのだ。
さらにこの後、王政復古がくるがこれについても以下の説明がある。
かくも大量に流されたあの血は、いったい何だったのかという展開ではないか。徳川の大政奉還を知る身には、驚きとしか言いようがない。いや、それともむしろ日本の無血革命のほうが、よほど異常だったのだろうか・・・・・・。
ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』についても興味深い。(P190)
実は彼女は人間ではない。人間の姿形をとった抽象概念なのだ。
擬人像「自由」は従来、フリジア帽をかぶった女性として描かれるのが決まりである。
最後に総括。
栄華を誇ったブルボン王朝だが、こうして見ると、終わるべくして終わったとの感が強い。ルイ太陽王の過去の威光があまりにまばゆく、プライドばかりが肥大して柔軟性を欠き、自滅の様相を呈しての終焉だ。とはいえ壮大なヴェルサイユと、世界に対するフランスの文化的優位は立派に残したのであった。
以上、簡単に紹介したけどいかがでしょうか?
素材の調理が巧く、味付けも良く、盛りつけもバッチリ。
三拍子揃った作品を楽しんでみては?
【ネット上の紹介】
[要旨]
世継ぎの混乱と血みどろの宗教戦争に彩られた王朝の誕生から、十九世紀、ヨーロッパ全土に吹き荒れた革命の嵐による消滅まで、その華麗な一族の歴史を、十二枚の絵画が語りだす。『名画で読み解くハプスブルク家12の物語』に続く、ヨーロッパの名家を絵画で読み解く第2弾。
[目次]
ルーベンス『マリーのマルセイユ上陸(『マリー・ド・メディシスの生涯』より)』;ヴァン・ダイク『狩り場のチャールズ一世』;ルーベンス『アンヌ・ドートリッシュ』;リゴー『ルイ十四世』;ベラスケス『マリア・テレサ』;ヴァトー『ジェルサンの看板』;カンタン・ド・ラ・トゥール『ポンパドゥール』;グルーズ『フランクリン』;ユベール・ロベール『廃墟となったルーヴルのグランド・ギャラリー想像図』;ゴヤ『カルロス四世家族像』;ダヴィッド『ナポレオンの戴冠式』;ドラクロワ『民衆を導く自由の女神』
なお、姉妹編に「ハプスブルク家の12の物語」もある。
こちらもオススメ。