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「海街diary4 帰れないふたり」吉田秋生

2011年08月16日 22時36分28秒 | 読書(マンガ/アニメ)


「海街diary4 帰れないふたり」吉田秋生

シリーズ最新刊、4作目。
出版されて、すぐ読んだんだけど、アップするのが遅れた。
以下、ネタバレありなので、ご注意。

前作では、過去を振り返ったり、現状に行き詰まったりで、それが緊迫感を演出していた。
本作では、登場人物たちが前を見て歩き出した、あるいは一歩を踏み出した。
すずは、風太と大仏を見に行ったし、
幸は、不倫に区切りをつけ、ヤスと食事をしたり、
佳乃は、職場の上司・坂下さんと飲みに行って、お互いのハンドルネーム「えべす」さんと「弁天」さんであることが判明、「え~」となったし。(こんな早くバレる、とは思わなかった・・・もっと引っ張るかと思っていた)
それぞれに、新しい展開があった。

さて、本作では4つの作品が収録されている。
「帰れないふたり」
「ヒマラヤの鶴」
「聖夜に星降る」
「おいしいごはん」
・・・私が特に印象に残ったのは「ヒマラヤの鶴」。
店長が自分の撮った写真を、裕也に説明しているシーン。

「岩の横に白く光る点々が見えない?」
「え?あれが鳥!?」
(中略)
「だってすごいと思わないか?
鳥がヒマラヤ山脈のさらに上空を飛んでいくなんて」

(中略)
「アネハズルって種類でね、秋になるとチベット高原からヒマラヤを越えてインドへ渡っていく 経験豊かなやつがトップを交代しながら仲間どうし助けあって8千メートル級の山を越えていくんだ」

それにしても、レベルが高い。
キャラクターの造形、その絡み合いの見事さ、さりげない資料と取材の駆使。
以前も書いたが、その業界をよく調べている。
「ひどい医者ばかり見てるから、医者に対してハードル低いんじゃないか」、ってセリフがあった。(「海街diary3-陽のあたる坂道-」)
医療業界に身を置いてないと言えないセリフである。
佳乃の金融業界・・・地方銀行についても、よく調べてリアルに表現されている。

そして今回は千佳が勤務するスポーツ店で、店長の語る山岳知識。
(いったい、どうやって調べてくるんだろう?)
これらのディーテイルが積み重なって、名作となっていくのである。
心理描写、演出、表現力・・・どれをとっても見事。

PS
初巻から比べて、すずの表情がだいぶ大人っぽくなってきた。最初はホント、子ども子どもした、まるみのある顔立ちだったんだけど。成長を感じる。

【参考リンク】
「海街diary3-陽のあたる坂道-」吉田秋生...