「レインツリーの国」有川浩
図書館シリーズ2巻目「図書館内乱」で、テーマに関わる作中作品が「レインツリーの国」。
架空の作品だったけど、著者自ら作品化したのが、この作品。
著者の甘いだけじゃない、シビアな面を知ることが出来る。
P144
狭い歩道を歩いているときのことだった。(中略)
耳が悪いためにどうしても歩調が遅くなりがちなひとみを、男がわざとらしく横へ突き飛ばしたのだ。
モタモタすんなと吐き捨てた男に、程度の合った隣の女も「やだぁ、イジワル-」などと聞こえよがしにケラケラ笑って通り過ぎようとした。(中略)
「ちょっと待てやお前ら!」
(中略・・・・ここで一悶着おきる)
「だから私、ああいう人はもう同じ人間だと思わないんです。同じ形をしているだけの別の生き物。だから理解したり気遣いあったりもできないの。あれは、私にとっては人間じゃないの、もう」
このシーンに絡んで、さらに別な作中人物ミサコがひとみを分析する。
P160
「何かね-、わざと空気読まない人が多い感じがする。普通なら流すところ、わざわざ突っかかってわざと喧嘩になるようなことするのよ。ミサコも『こないだあたしのツレがねー』って言ったら、『ツレって相手を見下した言葉だよね、そういう言葉遣いの女性って下品でどうかと思う』とか言われたの。チョー余計なお世話でしょ?別に見下してないし、こっちはフツーに遣ってる言葉だし。でもね、それって試してるんだって。そんなイヤミな言い方してもその人が自分のこと嫌いにならないかどうか。(後略)」
さらに、ミサコは「甘えてるんだと思うけど、甘え方すごくヘタだよね、彼女」、と。
さて、タイトルにつても説明されている。
(「レインツリーの国」とは、ひとみのブログのタイトル、である)
P219
レインツリーはアメリカネムノキの別名で、ひとみ的にはレインツリー=ネムノキ。
そして、ネムノキの花言葉は「歓喜」、「胸のときめき」。
【ネット上の紹介】
きっかけは「忘れられない本」。そこから始まったメールの交換。共通の趣味を持つ二人が接近するのに、それほど時間はかからなかった。まして、ネット内時間は流れが速い。僕は、あっという間に、どうしても彼女に会いたいと思うようになっていた。だが、彼女はどうしても会えないと言う。かたくなに会うのを拒む彼女には、そう主張せざるを得ない、ある理由があった―。