8月3日号のScienceの書評で、プリンストン大のMichael D. Gordin著の「Five Days in August: How World War II Became a Nuclear War」について書かれていました。普段このセクションに眼を通すことはないのですが、原爆に関したことなのでちょっと読んでみました。この評論では、この本の主題は「原爆が第二次世界大戦を終結させた」という一般的に広まっている認識についての再考にあるようです。広島、長崎とその他の都市が、余り攻撃を受けていなかったのは、二種類の原爆の効果を調べるための「実験」場所であったからであると書かれています。一種類のみしか実際に落とされるまでテストされていなかったそうです。ですからアメリカ軍も実際の原爆の威力というものを十分には理解しておらず、実際、長崎の原爆投下の後も1000機以上にわたる飛行隊で日本各地に空襲を継続しており、また原爆生産も継続されていたという事実があります。この書評では、第二次世界大戦を終結したのは、原爆ではなく、「日本の無条件降伏」であると書いてあります。日本に限って言えば、原爆が降伏への大きな要因であったのは間違いないでしょう。しかし世界大戦という目でみれば、原爆が直接大戦終結に結びついたというのは言い過ぎではないかという意見のようです。原爆は落とされなくても、日本の降伏は時間の問題でした。しかし戦争末期のソ連の満州への侵攻は、アメリカにとっては、より早い日本の降伏を目指させる大きな動機であったに違いありません。以前に「原爆はしようがなかった」発言で辞任した大臣についてコメントした際、私が間違っていたことは「原爆が戦争終結の最終兵器」であるとアメリカ軍が確信していて使用したと考えていたことでした。この書評からは、どうも当時のアメリカ軍は原爆で一気に片がつくと思ってはいなかった、というよりどれだけの威力があるのかはっきり把握していなかったらしいです。「原爆が大戦を終結させた」というコンセンサスは、大戦後に原爆の実際の効果が明らかになってから、徐々に形成されていったもののようです。戦争終結に導いた原爆を、正義の味方の強いアメリカの輝かしい科学の勝利と位置づけたい人々が、その世論の形成を誘導したのでしょう。
原爆であれ何であれ、人が人を殺すことは理由無しに悪いことです。良い戦争などというものはあったためしはない。そうしたものを正当化しようとするものは、「殺される」ということがどういうことか理解できない愚か者か、理解しようとしない卑怯者でしょう。
数年前のロマンポランスキーの映画「ピアニスト」では、ユダヤ系ポーランド人のピアニストがナチの弾圧による苦難を生き延びることが主題となっています。私の最初の印象では、ナチの非情な弾圧をひたすら描いていて、一方的な描写になっていて、感心しませんでした。ポランスキー自身がユダヤ系ポーランド人であることを考えれば、この感情的な映画も無理はないと思えるのですが、映画としては面白くない。しかし原爆のことを考えていて、この映画のメッセージが、単純にナチに対する嫌悪感の昇華ではなく、戦争の悪というものを人間のレベルで強く訴えたいというものであれば、あのしつこいまでのユダヤ人迫害の描写はわからなくもないと思ったのでした。
人間というものは、のど元過ぎれば熱さを忘れるものなのです。誰かがしつこく言い続けなければ、また同じ誤りを繰り返してしまいます。戦後60年以上たった今も、八月には原爆があったこと、それがどれ程多くの人に多大な悲しみと苦しみを与えたかを思い出さなければなりません。
原爆であれ何であれ、人が人を殺すことは理由無しに悪いことです。良い戦争などというものはあったためしはない。そうしたものを正当化しようとするものは、「殺される」ということがどういうことか理解できない愚か者か、理解しようとしない卑怯者でしょう。
数年前のロマンポランスキーの映画「ピアニスト」では、ユダヤ系ポーランド人のピアニストがナチの弾圧による苦難を生き延びることが主題となっています。私の最初の印象では、ナチの非情な弾圧をひたすら描いていて、一方的な描写になっていて、感心しませんでした。ポランスキー自身がユダヤ系ポーランド人であることを考えれば、この感情的な映画も無理はないと思えるのですが、映画としては面白くない。しかし原爆のことを考えていて、この映画のメッセージが、単純にナチに対する嫌悪感の昇華ではなく、戦争の悪というものを人間のレベルで強く訴えたいというものであれば、あのしつこいまでのユダヤ人迫害の描写はわからなくもないと思ったのでした。
人間というものは、のど元過ぎれば熱さを忘れるものなのです。誰かがしつこく言い続けなければ、また同じ誤りを繰り返してしまいます。戦後60年以上たった今も、八月には原爆があったこと、それがどれ程多くの人に多大な悲しみと苦しみを与えたかを思い出さなければなりません。