百醜千拙草

何とかやっています

Slap down SLAPPs

2008-03-18 | Weblog
前回、Pfizerの弁護団が、薬害訴訟で弁護に有利な証拠材料を求めて、科学雑誌、New England Journal of Medicine (NEJM)にピアレビューを含む編集プロセスの開示を求める申し立てをおこした事件について触れました。私は法律には全く知識が無いのですが、その後、SLAPP (Strategic Lawsuit Against Public Participation) と呼ばれるタイプの裁判があって、今回のPfizerのNEJMに対する裁判もこれに準じるものではないかとの意見を述べている人がいました。SLAPPは、大企業や団体など力のある勢力が、反対意見や住民運動を封じ込めるために起こす高額の恫喝訴訟を一般に言うようです。法律のルールを悪用したオドシということらしいです。今回のPfizerの場合、NEJMを含む科学雑誌業界に対して、「言うとおりに情報を出さないと、どんどん訴訟をおこして、科学出版業界の営業を妨害してやるぞ」という嫌がらせであるとも解釈できるということです。日本のSLAPP WATCH (http://slapp.jugem.jp)というサイトでは、SLAPPの実例と判例を収集、公開しています。多くのSLAPPは特定の集団の利益のために言論の自由を封じ込めるために行われているようです。もちろん、言論の自由と称して特定政党のプロパガンダを垂れ流すマスコミや、嘘八百を並べ立てただけのタブロイド紙のようなものが存在するから、それを訴えるものがいるわけではあります。科学論文は科学界のルールの範囲の中で処理されるという建前がある以上、その科学界のルールの妥当性にまで、その業界外のものが疑いを挟もうとするのは、越権行為であると私は思います。
ところでSLAPP WATCHの中で、SLAPPとはいえないようですが、ちょっと情けない例が紹介されていたので、転載します。コーヒーショップチェーンの「ベローチェ」を経営するシャノアールが、雑誌「おとなの週末」昨年10月号の「人気カフェ チェーン ランキング」という記事で、11チェーン中最下位と記載されたことに対し、出版元の講談社に、1100万円の損害賠償と出版差し止めを求める訴訟を東京地 裁に起こし、すでに口頭弁論も始まっているという事件です。ベローチェ側は、ランキングが一般的評価に基づくものではなく、担当したライターの個人的感想に基づいていると指摘。このランキングについて、「個人の主観的評価であるこ とを示す記載が目立たず、わかりにくい」と主張、「記事の内容が客観的事実であるかのような印象を読者に与えている」と述べています。うーん、大手のコーヒー店が、たかだか一雑誌のランキングにいちいち目くじらを立てるようなものでしょうか?これを機会に他店よりも優れたサービスを提供しようと思えないのだろうかと思ってしまいました。人間、お金が絡むと必死になってしまうのでしょうが、少なくともその記者に最低と感じさせたのは事実のようですから、子供のけんかではあるまいし、もうちょっと大人の対応をした方が長期的にはプラスではないのかと思ってしまいました。同雑誌のある編集者は権威あるミシュランのレストランガイドも同様に審査員の主観によるランキングであることに触れています。サービスの提供者と受け手というやりとりがあるのですからお互いに評価しあうことは当然でしょう。たかだか一雑誌のランキングの書き方が気に食わないから訴えるというのは大人げないのではと思います。そもそも雑誌の読み手もコーヒーショップのランキングなど真に受ける人は余りいないでしょうし、雑誌のランキングなど星占い程度の信用性しかないのは皆知っていることです。
 もっと影響力の強い新聞や放送局などのほうがよっぽどひどい情報操作を行っているようです。以前にも触れましたが、一時は日本最大の総合商社であった神戸の鈴木商店が崩壊にいたったのは、大阪朝日新聞の悪意ある中傷デマ記事がきっかけでした。また、同サイトによると、現時点でも、大手のY新聞は自社に批判的なジャーナリストに対して不当な言論妨害を行っているそうです。
コメント (1)
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