百醜千拙草

何とかやっています

クリントンのエゴ、一粒の麦

2008-03-25 | Weblog
アメリカ大統領選の予備選、地方議会選挙は終盤と言ってもよいにもかかわらず、オバマ、クリントンの民主党候補が接戦を演じ、民主党候補が未だにはっきりしていないという異常事態となっていますが、先日、ニューメキシコ州、州知事のビルリチャードソンがオバマをエンドースしたというニュースを聞きました。メディアの取り上げもそう大きくはなく、対するクリントン側もリチャードソンのオバマエンドースメントは「大して意味はない」との発表しました。以前触れたように、私はリチャードソンが大統領選撤退を表明したときから、オバマ、クリントンのどちらを彼がエンドースするかが民主党予備選ならびに大統領選本選に大きな影響を与えるのではないかと考えていました。まず民主党予備選においては、アメリカ合衆国唯一人のヒスパニック系州知事であるリチャードソンが、これまで、ヒスパニック系ならびにワーカークラスのアメリカ人を主な支持層としてきた白人のクリントンではなく、半黒人のオバマを支持したということは、複数の含みがあると思います。すぐに心に浮かんだのは、このリチャードソンのエンドースメントによって、マイノリティーの中での黒人対ヒスパニックという対立構図を越えて、マイノリティー対保守派白人というレベルへと構図を昇華させることで、民主党の重要な支持層である黒人とヒスパニックをまとめることができるのではないかということです。リチャードソンは賢い人(と私は思っています)ですから、彼は民主党のことを考えて、このタイミングでエンドースをしたのであろうと思います。このエンドースメントがクリントンにとって痛手でないわけがないと思います。リチャードソンはビルクリントン政権時代にエネルギー省長官を務め、クリントンとは個人的に強いつながりを持っていたのですから(確か今年のスーパーボールもリチャードソンとクリントンは一緒に観戦していたはずです)、そのリチャードソンがクリントンではなく、対立候補のオバマの支持を表明したということは、リチャードソンが大統領候補としてのクリントンを見限ったとも取れますし、必ずしもそうでなくても少なくともオバマに協力する方が自分自身、ヒスパニック層そして民主党にとってプラスになると計算したからに違いありません。私は必死に巻き返しを図っていたクリントン陣営にとって、リチャードソンのオバマエンドースはfatal blowとなるのではないかと思います。いつまで経っても決着のつきそうにない民主党候補指名争いは長引けば長引くほど、本選での共和党との戦いへの準備が遅れ、民主党にとってはマイナスとなります。リチャードソンは、クリントンに対して間接的に撤退を進言したということだと思います。民主党候補の指名争いが長期に紛糾してきた結果、この両候補の人間性みたいなものがニュースやテレビ画面を通じてはっきりしてきたように思います。政治家としての能力は分かりませんが、少なくとも人間性という点で、オバマの方が器が大きいと感じざるを得ません。おそらくアメリカ国民の多くも同じ感想でしょう。オバマの方が若く人間的にも大きそうだとなると、人種と性の問題は双方とも抱えているわけですから、もうそろそろオバマで民主党はまとまるべきであろうと私は思います。このエンドースメントにおけるリチャードソン個人の思惑は、副大統領候補への指名ということがあると思います。もしこれが実現したら、アメリカ政治史きわめて画期的なことが起こり得ます。つまり大統領候補が半黒人、副大統領候補がヒスパニックというマイノリティーがアメリカのトップをとる可能性がでてくるわけです。しかし、共和党との本選を考えると、半黒人とヒスパニックの大統領、副大統領候補で勝てるかどうかという危惧が民主党内に出てくるのは当然であろうと考えられ、最終的にはリチャードソンの副大統領候補という線はないのではないかと私は思います。前回の大統領選で民主党から出馬を表明したものの、予備選早期に撤退したハワードディーンが現在、民主党委員長を努めています。前回の大統領選では、彼は知識層には非常に支持されていて、ダントツの前評判でした。実際に彼がしゃべっているところを聞いたところでは、私はハワードディーンは非常に頭の良い人であると思いました。これがヒラリークリントンならTVレポーターの挑発的な答えにくい質問に対しては、ポイントをずらせてあいまいにしてごまかそうとするでしょう。ディーンは良い質問には良い返答で答えるし、悪い質問にはその質問がどのように悪いのかを端的に指摘するのです。レポーターはインタビューしている自分がバカに見えてくるのでディーンのインタビューをするのはさぞ嫌であっただろうと思います。頭が良すぎる人は普通の人には嫌われたりしますから、そういう人は表に出るよりは、裏で調整係をする方が向いていると思います。そのハワードディーンが民主党委員長を努めているということは民主党にとって、大変心強いと思います。オバマはディーンほど頭は切れないかも知れませんが、ディーン以上の包容力というか度量があるのではないかと思います。そこが一般人に好かれるのでしょう。あいにく、クリントンには頭の良さも包容力も感じません。オバマが民主党大統領候補というのはおそらく動かないであろうと思うのですが、副大統領候補はどうなるのでしょうか。オバマの包容力とディーンの采配でクリントンに副大統領候補を受けさせるというのが、本選を戦う上でベストのシナリオではないかと私は思います。しかし、クリントンの方に自らのエゴを殺して、喜んで副大統領候補を受け入れるだけの大局観と度量があるのか、そこが鍵のような気がします。クリントンには、是非、聖書の一節を思い出してもらいたいと思います。「一粒の麦も死なずばただ一つにてありなむ、もし死なば数多の実を結ぶべし」民主党政権という実を結ばせるためには、クリントンのエゴにはここで死んでもらわねばならないように思います。
コメント (1)
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