八ツ場ダム建設中止を公約に揚げた民主党は、その直接の関係者である県や住人の一部から、建設中止反対の強い要望を受けており、メディアは例によって民主党が「建設中止」の前提を崩さないと非難しているようです。公約に挙げて、国民の多くがそれを支持したのですから、「建設中止」を中止するわけにはいきません。これは非難されるべきことではなく、公約を守ろうとしているのですから、誉められてしかるべき態度であると思います。メディアは一体、何が言いたいのでしょうか?国交省の前原氏は、推進派の人々に頭を下げて、「国」がこれまで、計画から50年以上も、やるやらないで、関係者の人に迷惑をかけて来たことを謝罪し、具体的な補償案を提案しました。正しい態度であると思います。50年も前に計画して、その予算の7割を使っていながら、ダムの建設は殆ど進んでいないという現実から、その必要性と投資回収効果を考えれば、誰でも、ダム建設は中止するのが正しい判断と思うのではないかと思います。ダム建設を継続すれば、中止に伴う補償費用などを考慮しても、中止するよりも多くの支出となる上に、その効果については疑問というわけで、「冷静に」考えたら中止するのが当然です。推進派には、国全体の視点で「冷静に」考えられない事情があるわけで、ハコモノ-天下り-ゼネコンという従来の癒着構造でおいしい思いをしたい人は、ダム建設に税金が注ぎ込まれて、国の借金がいくら増えようと、一般国民の福祉が切り捨てられようと、自らの不利益になることには首を縦に振らないでしょう。また、一部の住民には、ダムになるという前提で家を移転したり、職を替えたりと将来設計を行ってきた以上、いまさら計画の変更は困る、という意見があるのもよく分かります。しかし、一方で、推進派以上の数の反対派が活動してきたことも事実であり、ダム建設がこれ以上進んでは困ると思う人も多いのも間違いないでしょう。この推進派と反対派の利害の衝突をどう解決すればよいのか、考えていたのですけど、一つ、思いついたのは、これまで国が国民に対して良くとってきた方法が最適なのではないか、と思いました。つまり、「問題の先送り」です。ダム建設は50年以上前からやってきて、まだダム本体の建設は手つかずという状態です。50年間、無くてもやっていけたものですから、今後50年間(あるいは永久に)も無くても大丈夫だろう、というのが常識ある人の推論でしょう。前原氏、地元住人の理解が得られるまで、中止手続きは取らない、と言ったらしいですから、引き分け時間切れで、問題が自然消滅するのを待つというストラテジーではないかと想像するのです。工事の推進を凍結すれば、仮に中止にしなくても、反対派は、いずれ中止するからと言えば、しぶしぶ納得するでしょうし、推進派には、凍結はしたが中止したわけではない、と強弁することも可能でしょう。それで、あと50年どっちつかずでやっていれば、直接利害の及ぶ地元住民の多くは世代交代し、ダムなどどうでもよくなっているでしょうし、ハコモノ-天下り派もすぐ金にならないと悟れば、あきらめるでしょう。
利害の衝突が激しい場合に、すぐに解決を望むのは、傷が深くなります。ここで、一呼吸おいて頭を冷やすために、問題を先送りする、という手は、しばしば有効ではないかと思います。反対派と推進派がそれぞれの理由で激しく対立しているとき、どちらかに決めて問題の帰趨を決定するというやり方以外に、対立して平衡化している現状を意図的に維持するという方法があってもよいと私は思います。私も決断しがたい決断を下さないといけないときは、常に決断を先延ばしにするという手が無いかどうか探るようにしています。問題を先送りすることは解決ではありませんが、時にはそれが長期的によりよい解決に結びつくことがあると思います。物事を成り行きにまかせ、意図的な問題解決に伴う抵抗を受け流す、決断しないという決断が、多くの異なった価値観を持つ人々からなる社会において、ときには有効なのではないかと思うのです。
利害の衝突が激しい場合に、すぐに解決を望むのは、傷が深くなります。ここで、一呼吸おいて頭を冷やすために、問題を先送りする、という手は、しばしば有効ではないかと思います。反対派と推進派がそれぞれの理由で激しく対立しているとき、どちらかに決めて問題の帰趨を決定するというやり方以外に、対立して平衡化している現状を意図的に維持するという方法があってもよいと私は思います。私も決断しがたい決断を下さないといけないときは、常に決断を先延ばしにするという手が無いかどうか探るようにしています。問題を先送りすることは解決ではありませんが、時にはそれが長期的によりよい解決に結びつくことがあると思います。物事を成り行きにまかせ、意図的な問題解決に伴う抵抗を受け流す、決断しないという決断が、多くの異なった価値観を持つ人々からなる社会において、ときには有効なのではないかと思うのです。