百醜千拙草

何とかやっています

変わらないもの

2014-06-17 | Weblog
どうでもいい個人的な話ですが。

先週末、講座にいた1人の臨床系教授が引退を決めて、その引退記念講演会とその後パーティーが教授宅でありました。私が講座に下っ端としてやってきて、三部門(臨床部門と二つの基礎部門)合同のプロジェクトに参加したとき、臨床チームを率いていた人です。基礎部門の一つは別の講座のグループで、そのリーダーは当時でさえかなりの高齢の大教授で、講座長こそ退いてはいましたが、現役研究者として研究グループを率いていました。この高齢の大教授と最後に口を聞いたのは多分、二年ほど前で、その時は、すでに現役を退いておられましたが、病院内のオフィス移って論文を読んだりする日々を送っておられました。当時、思いついたプロジェクトに関して、意見を聞きに行ったのです。そのとき関連したグラント申請書(これが通らなかったので現役引退を決意したのだそうです)のコピーをくれて、「研究費の申請にも協力するよ」と言ってくれました。あいにく、書いたグラントは通らず、プロジェクトは頓挫して、それでしばらく会うこともなくなっていましたが、相変わらずあの小さなオフィスにいるのだろう、と何となく思っていました。昨年末に、その元大教授の直属の部下だった人から、自宅を尋ねたが、まずまず元気そうだったという話も聞いていましたし。

引退記念バーティーの朝の会合で、その元大教授が介護施設に入院中であることを知りました。半年前から記憶力や理解力が低下して、本人もそれを自覚してイライラしていたのだそうです。検査で正常圧水頭症があるということでシャント。その後シャントからの感染で髄膜炎、いろいろあって、急激に認知症症状が悪化し、介護施設に入ったということでした。

私が知し合ったときには、別講座ということもあったでしょうし、講座長を退いた後ということもあって、「大教授」という感覚はなかったのですが、現役時代を知っている人々にとっては、「あの人」が他の認知症老人の人々と混じって介護施設で昔のこともよくわからなくなってしまっているという状況はかなりのショックだったようです。

私も話を聞いて驚いて、しばらく沈み込んでしまいました。15年前の共同ブロジェクトのリーダーのうち、一人は引退、一人は介護施設、という週末の朝でした。

振り返れば、今いる講座の最盛期は多分30-15年ぐらい前だったのだろうと思います。講座の隆盛を人の一生に例えれば、私が来た15年ぐらい前は実は講座が壮年期のピークで、おそらくそれから下り坂に入ろうかというぐらいのタイミングだったのでしょう。隆盛期を支えた人々が一人一人、去って行く中、資金難などで、若い世代も充実しない、そのような落魄の(というと言い過ぎかと思いますが)寂しさを感じることが多くなりました。そういう私も講座内の立場的には中堅なのでしょうが、明日をも知れぬ零細研究者に過ぎません。

般若心経でも唱えてみようかと思う日々です。
生まれれば死に、昇れば下り、栄えれば衰える、世に変わらないものはない、それだけが変わらない真理のようです。
コメント
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