百醜千拙草

何とかやっています

北朝鮮化

2022-07-15 | Weblog
なかなか濃い一週間でした。おかげで今回も長くなってしまいました。

これまでは、他の同名の人々と区別し、非難の意を込めてカタカナ二文字で呼んできましたが、もはや故人となって非難の届かぬところへ行ってしまった人ですから安倍元首相と呼ぶことにします。

この元首相の殺害事件について、当初、民主主義の冒涜であると与野党政治家が揃ってコメントを出しておりました。ところが、蓋を開けてみると、韓国のカルト宗教団体の統一教会(旧名)への容疑者の怨みが、その広告塔をやっていた元首相に向いたための犯行、とのこと。これが真相なら、これは民主主義の冒涜というレベルの話ではなく、単に個人的恨みによる一殺人事件であった、ということです。しかも、憲法の政教分離の原則によって禁止されている反社会的カルト宗教教団と、安倍氏が祖父の時代から深く相互依存関係にあったことが改めて世間にさらされたわけですから、民主主義の冒涜どころか、むしろ政治腐敗が起こした自業自得であったとも言えます。その憲法もロクに守れない政党が、今、憲法を都合の良いように変えようとしているのです。私も覚えていますが、30 - 40年前はオウムよりも危険な団体と言われ大問題となった統一教会です。おかげで、この数日、私のツイッターは統一教会一色になってしまい収まる様子がありません。

この元首相の死によって、反社会カルト宗教団体が自民党と深い関係にあったことが再び明るみに出たことは別にして、彼と自民党が引き起こしたの数えきれぬほどの政治腐敗、不祥事と疑惑に関して、政治も司法も行政も悔いて過ちを正す機会を事実上、失ってしまったということは、我々にとって残念なことです。もはやこの人が国会で追求され、司法で裁かれることは永劫になくなってしまいました。たとえ報いを受けるに価する人間であっても、殺されて腐敗と共に封印されて忘れ去られるべきではなく、民主主義のルールの中で、正しく裁かれ、然るべき罰を与えられないと意味がありません。
一方で、自民党は、これ幸いと、死者を祭り上げた上で、公文書改竄、隠蔽から自殺者まで出したモリカケ、サクラをはじめとする数々の現職総理による腐敗汚職事件をこのまま過去のものとして葬りさろうとしています。

そして、その事件から二日後に投開票された参院選、結果はほぼ予想した通り。立民の惨敗。立民の中でも落選すべきでなかった数人の議員が議席を失いました。その統一教会問題を追求してきた有田芳生さんも議席を失い、新潟では森ゆうこ氏も落選。一方で、中身は空っぽの昔の有名人が票を集める自民党。多分、これは経団連企業の組織票なのでしょうけど、国民が自らの意思で進んでこうした人に投票したのであれば、これから起こるであろう地獄はこれは国民が選んだことということになります。

今回の選挙で、多少の明るいニュースは投票率が前回よりも少し上がったこと。それから、れいわが三議席を獲得し(まだまだ絶対数が足りないですが)勢力拡大に成功したこと。れいわの比例で議席を獲得した水道橋博士、彼の演説やコメントにはなかなか感銘を受けました。この短期間に急遽立候補を決めた人とは思えぬほど見識と信念に満ちている様子が窺えます。同じ元タレント議員と言っても自民党の傀儡議員とは雲泥の差がありますね。当選会見の最後のコメントで、水道橋博士は「国会を可視化する。国会の爆弾男と呼ばれたいですね、水道橋に調査権を与えたらとんでもねえな、と言われるまで、晒していきたい」と決意を述べたのが、印象的でした。言うまでもないですが、これは、二十年前に暗殺された民主党の石井紘基議員を念頭に置いた言葉です。国政調査権を駆使して「特別会計」に関わる政府の不正の証拠を掴んだ時、自宅の駐車場で刺殺され、その日に国会に提出される予定であった証拠書類がごっそり現場から消失するという事件がありました。政治とは関係ない金銭的動機だったと主張する右翼団体の犯人の言い分を通して、真相を闇に葬った事件です。思うに、水道橋博士は、この事件と今回の安倍元首相の殺害事件の類似点(大物議員の殺害にもかかわらず、犯人の動機が政治的なものではないとされていること)が頭にあって、石井議員のことを思い出したのではないでしょうか。加えて、水道橋博士は「たとえ命を狙われたとしても、政府の不正、腐敗を暴いていく」という覚悟を示したかったのだろうと想像します。

さて、無風の三年を手に入れた自民党ですが、安倍氏だけが腐敗の本体ではありません。むしろ、安倍氏は腐敗した自民党の象徴的人物であったということであり、自民党の体質は安倍氏亡き後も変わりません。それどこか、今回の死去によって安倍氏の数々の腐敗問題を終わったこととして葬りさることが事実上可能になり、自民党はさらに有利に「カバルのアジェンダ」を遂行できるようになったと思わねばなりません。今後、与党政府は消費税を最大19%まで上げ、同時に改憲に向けて世論操作を本格化するであろうと予測されます。三年後の総選挙までに、日本の「北朝鮮化」に向けて自公政権はその下準備を完了しようとするはずです。そして三年後には、国民が何をやってももう手遅れという状態を実現するために着々と歩を進めることでしょう。事実、すでに選挙直前から「侮辱罪」の厳罰化の施行が始まりました。この法令の主な目的は、SLAPPと同様、言論を萎縮させることです。これは次第にエスカレートして、いずれ日本は、ロシアのように政権を批判しただけで、権力によって拘束されるようなことが普通に起こる国になるでしょう。一方で、生活必需品を含めて19%もの消費税をかけるという世界のどの国もやらない経済も税の基本も無視したキチガイ政策は、未曾有の不況を招くことになります。つまり、自民党政府の目指すところは、北朝鮮のような貧しい独裁軍事国家であって、支配者層が、権力とカネで一般国民を支配して彼らが作り出す富を吸い上げる、経済カースト制の非民主主義の国です。

この選挙において、民主主義国家の国民が自民党を支持したということは、自らの主権を捨てて、支配者層の奴隷となることを国民自らが望んだということです。自民党を支持した国民は、北朝鮮化した日本で、自分たちからまず搾取が始まり、自分たちから最初に戦場に送られて捨て駒にされるのだということを理解しているのでしょうか。それとも自分は支配者側に入るとでも思っているのでしょうか。あるいは、強欲な搾取者に使い捨てられ支配されることに喜びを感じるM体質なのでしょうか。

とにかくも、この参院選が自民の圧勝に終わったということが意味することは、今後、日本の状況はますます悪くなり、経済は低迷し、貧困化は進行し、社会保障はカットされ、学問は衰退し、政府と権力側の権限は大幅に拡大され、国民の義務が増大する一方で権利は制限されていくということです。残念ながら、これは100%そうなります。「みんな大変だから、我慢ましょう。わがまま言うのは非国民、欲しがりません勝つまでは」という精神状態に追い込むようにメディアで誘導します。そして、しばらく経てば、ふと気がついたらじわじわと追い詰められてがんじがらめにされて、生きるだけで精一杯、国民の大部分がそう思う世の中になります。

五年前、日本贔屓の投資家ジム ロジャースは、安倍政権の政策を評して、日本はアジアの成長から取り残されて衰退すると予測し、「日本の若者よ、日本の外に出なさい。中国でも韓国でもいい。そのほうがあなたの人生が豊かになるはずだ。」と週刊誌のインタビューで述べました。日本が変わってくれることを私は望んでいましたが、参院選がこのような結果で終わった以上、今後も日本は5年前のロジャースの言葉通りにますます衰退していくことでしょう。現時点では、豊かな人生を送りたいと思う若者の現実的な選択肢は、日本の外に出ることだ、と私も思います。
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