百醜千拙草

何とかやっています

放射線被曝の安全閾値は無い

2012-05-04 | Weblog

ようやくトランスジェニックマウス用のコンストラクトが完成しました。4ヶ月半、シコシコと、いろいろな障害に阻まれつつやってきたので、感慨深いです。ようやく研究のスタート地点にたどりついた、という感じです。約160 kbのBAC DNAに三度の操作を加えて作りました。数えてみると、この操作を入れるために作ったプラスミドコンストラクトは約50個。最後に組んだプラスミドコンストラクトは、全長16 kbで8つのモデュールを切り貼りしましたが、なかなか大変でした。これでも利用できるリソースは使えるだけ使ったので、もしこれが10年前だったら、ヘタするとこの二倍ぐらいの時間はかかったかも知れません。後は、無事にこのコンストラクトが動いてくれて、意味のあるデータがとれるかどうかですが、それはマウスを作ってみて実験してみるまでわかりません。その実験も簡単なものではないので、これからも苦労は続きそうです。しかし、千里の道も一歩から(その一歩も三歩進んで二歩下がった一歩ですが)ということで、地道にやりたいと思います。 

さて、一月程前、放射性物質で汚染された牛肉を食べる会が催されたという話を聞きました。いくら福島農家支援のためであっても、こういうことはやってはならないことだと私は思ったのですが、つい先日、中部大の武田邦彦さんのウェッブサイトで下の論文を知りました。武田さんのウェッブサイトで解説つきの文を読むのが早いですが、私もアブストラクトだけ意訳してみました。重要な部分を強調しましたが、この疫学調査では、従来の考え方に一致していると思いますが、実際の人の疫学調査から、被曝の安全閾値などというものは無い、と結論しています。放射線被曝はゼロにするべきだということです。また、被爆時の年齢が若いほど、後期にがんを発症するリスクが高まるとあります。かなり劇的に上がるようです。これらのデータからも、放射線被爆、とりわけ子供、青年期の被爆はゼロにする努力が必要であり、政府の無根拠な基準値などを真に受けてはいけないといえるでしょう。

 

原子力爆弾生存者の死亡率についての研究、第14報、1950-2003:がんと微小がん疾患についての概観

Radiation Research 177(3):229 – 243. 2012  Ozasa et al.  広島放射線影響研究所、疫学部  e-mail: ozasa@rerf.or.jp 

この論文は、放射線影響研究所がフォローしている原子力爆弾生存者の生存調査のおける死亡率報告の第14報であり、原子力爆弾由来の放射線が長期的に与える健康への影響を調査したものである。1950 – 2003年の期間中、DS02 量の(放射線を浴びた)86,611人の追跡対象の58%が死亡したと推計される。前回の報告以来、更に6年のフォローアップによって、放射線被曝後、より長期間の、遥かに多くの情報が得られた。(被曝のない群との比較で)被爆者はがんでの死亡率が17%多く、被爆時10歳未満であった者の死亡率は58%高かった。ポワソン回帰分析により、放射線影響の程度、線量-効果関連、被爆時の年齢、性別について解析した。あらゆる死亡原因のリスクは放射線被爆量と正の相関を示した。重要な事は、固形がんに関しては、放射線の追加的影響(即ち、一グレイ、104人年あたりの過剰がんを持つ症例)が、線形の量-効果関連性をもって、生涯を通じて増加したことである。線形モデルによれば、固形がん全体に関して、性別平均化後、30歳で被曝し70歳以上で過剰がんを罹患する相対危険率は、一グレイあたり0.42[95% 信頼区間(CI)0.32, 0.53]であった。このリスクは被爆時年齢が10年高くなるごとに約29%低下した(95%CI:17%, 41%)。全固形がんにおいて、有意なERRをもつ推定最小放射線量は0-0.2グレイであり、正式な線量-閾値解析において、閾値は無い、即ち至適被曝放射線閾値はゼロである、ということが示された。がんによる死亡リスクは、胃、肺、肝臓、大腸、乳腺、胆嚢、食道、膀胱および卵巣を含むほとんどの主要臓器で増加しているが、直腸、すい臓、子宮、前立腺よび腎臓実質においては有意な増加はなかった。循環、呼吸、消化器系でのがん以外の疾患リスクの増加が認められたが、放射能がこれらの疾患の原因かどうかは更なる研究が必要である。感染性疾患または外的な死亡原因に放射線の影響があるという証拠は認められなかった。

 研究所のweb siteは、http://www.rerf.or.jp/index_j.html です。

 

ところで、ついさっき覗いた八木啓代さんのブログ(大暴露:とんでもないものが届きました)で、ロシアのサイトに陸山会事件の捏造調書などがアップされているという情報がありました。私も早速見てみました。本物だろうと思います。田代検事とその上司の木村検事の(自筆であろう)サインがあり、調書にも割印が押されています。多分、裁判中などにコピーされたものがリークしたのでしょう。捏造調書、なまなましいですね。天網恢々、悪事の証拠は一瞬にして世界をかけ巡る時代になりました。

研究不正がバレたら、普通、責任研究者は廃業になったりしますが、検察では、調書捏造が明らかにされて、本人まで認めているのに、「お咎めなし」はおかしいでしょう。そもそも、証拠捏造の村木さん事件も、この調書捏造の陸山会事件も、両方とも民主党政権にダメージを与えるためにセットになった政治案件でした。前者は石井一氏を狙ったものであり、後者はもちろん小沢氏失脚を狙ったものです。結果、石井一氏の几帳面な記録癖で検察ストーリーが崩れ、証拠捏造がバレて、村木さん事件は失敗に終わりました。一方の小沢氏を狙った西松献金事件では、検察証人が検察ストーリーを覆して公判維持できなくなり、今回の陸山会事件では、調書の捏造がバレて無罪判決となりました。そして、今回、スケープゴートを作るのに失敗した東京地検特捜は、多分、解体を余儀なくされるでしょう。特捜は今や、国家権力の腐り始めた右足のようなものです。切断して取り除かないと本丸に影響が及ぶでしょう。もちろん私はそれを願っています。一旦腐りきった権力構造はとことん解体するべきです。腐っているのは右足だけではありません。

 

コメント (1)
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