アメリカのNIHディレクター、フランシスコリンズの講演は、財政難のアメリカ政府の研究資金の今後に心配を寄せる研究関係者が相手です。ヒトゲノムプロジェクトをやっていたころは、クリントンのNIH予算倍増計画中のバブル景気もあって、バラ色の未来を語ることも多かったようですが、その後、急激に財政は悪化し、そして自らは一研究所所長という立場からNIHディレクターというアメリカ研究会にとっては大統領のような立場に置かれて、近年は愉快でないことの方が多くなったのではないかと想像します。明るい未来を無責任に語ることはできず、かといって非情な現実に研究者を突き放すわけにもいかず、といったところなのでしょう、コリンズの最近のお気に入りは、チャーチルの言葉をムンクの「叫び」の絵のバックで紹介することです。
"If you are going through hell,
........ keep going"
NIHディレクターが、政府研究資金の現状を伝える精一杯の婉曲表現がコレですから、研究者にとっては余り面白い冗談ではありません。NIH予算は、大統領の提案をもとに議会で議論して決定されますから、絶対的に不足している資金そのものに関してはコリンズは何の権限もありません。もちろん、メッセンジャーを射ったところで問題は何も解決しないことも、"keep going through hell"以外に研究者ができることは何もないことも皆、わかっています。
日本の社会もこれに近いのではないかと最近思います。瀬戸内寂聴さんも、最近、日本の社会を評して、90年生きてきたが、現在ほど悪い時代はない、と言ったという話も聞きました。日本が地獄の中にあるのなら、いつか地獄が終わることを信じて歩み続けるしかないのでしょう。
収拾がつかない福島原発、現状の隠蔽と棄民政策、汚染がれきの全国拡散、消費税増税、TPP参加、自衛隊の米軍下部組織化とそのための改憲、言論統制法案、治安維持法まがいの法案、数え出したらキリがありませんが、日本国民を地獄に釘付けにするための政策を次々に繰り出すドジョウや自民党が、いったい誰のメッセンジャーなのかを考えておく必要があります。この反国民政策を推進する本体はおそらく粘菌のような集合組織であり、その中枢にあるのは、戦後の体制、即ちアメリカによる日本支配とその支配にぶら下がって一部の国内の人間が利権を得てきたという歪んだ構造を維持したいという意志であり、その根源は変化に対する恐怖と強い自己保存本能であろうと思います。その国民の敵は取りあえずアイク氏にならってカバル(cabal)と呼んでおきましょう。そしてドジョウ民主党の政策は明らかにカバルのアジェンダであり、国民のアジェンダではないということを理解する必要があります。カバルのアジェンダに反対する小沢氏は、敵を「権力」とも呼んでいました。権力とは何か、官僚組織という互助組織が動かす行政や司法であり、それらを動かす資本家であり、宗主国アメリカであり、様々なものの集合的あるいは部分的なパワーだと思います。
法曹界も批判するように、今回の小沢氏の強制起訴の無罪判決に対する指定弁護士による控訴が政治的なものであり、控訴には正当性がないことは明らかです。皆が疑問に思っていることは、この哀れな罪人どもを操っている本当の悪人は誰か、という疑問でしょう。これに関して、私が意外に思ったのは、アメリカの意志だ、と推測している人が結構、多いことでした。私はアメリカが直接関与した可能性は低いと思います。この指定弁護士が己の弁護士としてのintegrityを捨ててでも、政治案件を追求するmotivationはまず一つしかありません。検察などの組織であれば、組織を守り、組織の命令系統を尊重するという組織の掟があるので、組織内の末端の人間を操るのは容易です。しかし、検察役の指定弁護士は立場が違います。この手の人間を動かせるのはカネだけでしょう。そして、そのような「ヒモのついていない」億単位のカネを配れる人間は、与党政権内にしかおらず、そして指定弁護士に危ない橋を渡らせるように説得できるような繋がりを持つ人間は限られている、ということです。下から眺めればこの筋書きしかありません。それでは、この与党の悪人にアメリカから指示がでていたのかどうか、可能性はゼロではありませんが低いでしょう。アメリカがそこまでできるのならば、そもそもなぜドジョウを首相にしたのかという辺が不可解です。ドジョウを捨て石にして、次にポチを出すつもりだったという説もあるかも知れませんが、そんな回りくどいことをするとは思えませんし、そもそもドジョウは捨て石にさえなっていません。
ま、下種の勘ぐりはこれ位にしておきましょう。まもなく、リーク情報の第二弾が出るという噂もありますから、政治謀略を弄する小悪人どもが動けば動くほど、巨悪の証拠が暴露されていくことになります。一方、マスコミは、「この控訴で代表選に出れなくなった」としつこく己の願望を垂れ流していますが、このことこそ、この控訴が「政治的」謀略に他ならないことを示しています。原則論で言えば、現在、小沢氏は法に基づいて無罪であり何の拘束もありませんので、堂々と代表選に出ればよいと思います。それまでには小悪人どもは悪事がバレて動けなくなっているでしょう。