tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

華倭里行燈(かわりあんどん)by カキモト

2011年09月15日 | 奈良にこだわる
株式会社カキモト(生駒郡三郷町立野北2丁目19-8)の「華倭里(かわり)行燈」をご存じだろうか。奈良新聞(9/10付)の「暮らしの中の奈良ブランド」で詳しく紹介されている。筆者はインダストリアルデザイナーの北井勲氏である。タイトルは「伝承の技術を今に融合 暗闇の中の情緒性」だ。
※トップ写真は同社ホームページから拝借

《奈良・春日大社には古くから境内を彩る万燈籠が数多く並んでいる。人々の祈りと、癒しと、和らぎの光を与え続けている。現代社会は日本全国何処へ行っても暗闇が無いほど、過剰に光が満ちあふれる“24時間社会”である》。

《煌々(こうこう)と輝き満ちあふれる光が豊かさの証しみたいに言われるが、真の豊かさはそうでは無いのである。心の豊かさは暗闇を持つ事により、より深みを増して行くものであり、ほの暗い空間の中で、心を落ち着かせるための明かりの存在感は一層増して行く。自身を取り戻すために闇の中の明、闇の中の情緒性が不可欠であり、この華倭里行燈(かわりあんどん)の命とも言える》。

《明治40年から受け継いだモノ作り職人たちの卓越した加工技術力、最新のレーザー加工による細密な表現、次世代のLED光源。国内部材を使用したこだわりと癒しを追求する中で、この灯(あか)りは生まれ現代の空間の豊かな暮らしの演出者となり、更に新たな空間の創造と心を育むものとなる》。

※9/28追記 同社の華倭里行燈のことが、産経新聞(9/27付)に紹介された。


自己紹介タイムに華倭里行燈を手にされる同社の垣本麻希さん(9/10撮影)。このサイズで19,000円~25,000円程度

奈良新聞掲載当日の9/10に開催された「第2回 なら観光ビジネスカレッジ(斑鳩・信貴)」に出席したとき、同社金属工芸部リーダーの垣本麻希さんが参加されていて、自己紹介の時間に「華倭里行燈」を紹介された。細工はとても精密だし、LED光源はろうそくのようにゆらゆらと揺れる。奈良のイメージがうまく表現され、春日万燈籠や大仏殿前の八角燈籠を連想した。

早くに、八木芳昭氏(八木経営システム代表)が、ブログ「小さな会社の明るい経営相談広場」で詳しく紹介されている。記事タイトルは「奈良県・株式会社カキモト…巧みの技とレーザー加工を駆使した金属工芸品…」である。全文を引用する。《09年)11月5日・6日の両日、マイドーム大阪で開催された「第31回事業化交流マッチング総合展2009」に、ジョイント・コーディネーターとして参加していた時、ひときわ注目を浴びているブースがあった。ブースには洒落た風情のある、癒しを感じる行灯やふりこ式の虎などの金属工芸品が並べられており、接客対応している方の様子も陽気で明るく、なんとなく明るく元気な社風を感じた。これらの工芸品は金属加工の熟練職人が高度の技と最新のレーザー加工技術を駆使してつくりあげたものだという》。



《この会社の名は、㈱カキモト。明治40年、農耕器具を製造する鍛冶屋として創業し、平成元年に法人化。主として板金加工、レーザー加工、研磨加工を主業務とし、鉄・ステンレス・アクリル・アルミ等の部材を使用した、産業機械部品、自動車部品、建築金物、製作金物などを製造している元気で頑張っておられる企業である。このような企業であるので、同社のことを更に知りたくて、先日、取材のための訪問をお願いしたところ、快く承諾頂き、訪問させて頂いた。同社は奈良県生駒郡三郷町にある。JRで天王寺駅から王寺駅の一つ手前の駅・三郷町で降り、龍田大社を目指して歩くと大社の境内の直ぐ近くの静かな佇まいの中に同社があった。龍田大社は日本書紀にも記載があり、風の神として古くから信仰を集めている大社だ》。


9/17追加。こちらは正倉院柄(鳳凰)で、格調高い作品に仕上がっている

《社長の垣本昌孝さんと管理部長で息子さんの垣本雅之さんにお話を伺う。同社も多くの中小企業と同様に、経済情勢の変化に伴う幾多の不況期を乗り超えて来たが、一貫してキャッシュフローを重視した経営を続けて来たという。好況時には着実に内部留保を確保し、不況時に備える。そして不況時こそ、何かを仕掛けるチャンスだと思い、幾多の不況を克服して来たという。昨年のリーマンショックに始まる今回の不況においても、兵糧米(内部留保)がある程度あったので、人員削減などを一切せず、皆でこの不況を知恵を出して乗り切ろうと皆の気持ちを一つにすることを心がけたという》。


※同社ホームページより

《今年の始めには、本業の注文が激減。仕事で暇になる状態の中、何か新事業を興そうと思い立ったのが、インテリア金属工芸品である。そして営業、技術を含め、社員全員でアイデアを出し始めたという。因みに社員の内、女性の占める割合は、ほぼ半数だ。女性の感性もこれらの工芸品の出来映えに大きく反映されている様に感じた。そうすると次から次へとアイデアが出始めたという。そして現在製品化されている“ふりとらくん”(ふりこ式の虎)や風情溢れた行灯などの工芸品の製作が始まった。“ふりとらくん”は近くの信貴山に縁のあるもので来年の干支にあたることもあり採用。行灯については、皆の総意で決定し、奈良にある企業としての特徴を出そうということで大和の名所や古社寺などの情景を図柄として採り入れた。アイデアさえ出れば、あとはアイデアを形にする金属加工の技とレーザー加工によるものづくりは同社のお手のものであった》。

《垣本さんは、次の様に言われる。--このように皆でアイデアを出し合って工夫するというようなことは今までなかった。しかも、デザインを専門家に考えてもらうこともなく、自然に皆の潜在能力が発揮されて、自分達だけで立派な作品をできたということの意味は大きい-- 販路の開拓は、信貴山にある旅館に、土産品として、“ふりとらくん”を置かしてもらったことなどで、地元の情報誌「naranto」や「ぱ~ぷる」などの目に触れ、記事として採りあげられたこともあり、同社の工芸品の評判は広がった。近く姫路の山陽百貨店で特別出店の予定もある。最後に、同社の地域社会への係わり合いについて記しておきたい。同社では近隣の龍田大社で催される秋季大祭で使用する山車の台車の製作や修理をおこなったり、地元の小学校からの工場見学受入などを実施し、地域への貢献にも注力している》。

金属工芸部長の垣本雅之さんは、ふりとらブログというオフィシャルブログも作られている。昨年の平城遷都1300年祭「光と灯りのフェア」で行われた「光の作品展」では、オリジナルの華倭里行燈が入賞されたそうだ。同ブログには《自分が生まれ育った奈良、奈良県民だけに濃~い歴史の授業の中で教えてもらったこと、毎日奈良交通でバス通学し大好きだった車窓からの奈良市内の眺めなどなど 奈良で生きてきた、勉強できたありがたさを全身全霊でこの作品にそそぎこむことにしました》と書かれている。

9/10のセミナーの合間のお昼休み時間、斑鳩町観光協会の「法隆寺iセンター」にふらりと立ち寄ったところ、ちゃんと華倭里行燈が2つ、いい感じでウインドーに並んでいた。耐久性のあるシッカリしたものなので、旅館で各部屋の名前を入れて標示にしたり、日本料理店のインテリアにするのも良いだろう。氏名を入れてお寺や神社に奉納する、ということもできる。軒先にずらりと華倭里行燈が並び、祭事のときだけスイッチを入れれば、良い雰囲気が出る。どこかの社寺で、企画されないものだろうか。

八木氏のブログにあったように、「不況時こそ、何かを仕掛けるチャンス」ととらえ、女性の声などを商品開発に活かしたというポジティブ思考がいい。「アイデアさえ出れば、あとはアイデアを形にする金属加工の技とレーザー加工によるものづくりは同社のお手のもの」なのだから。

信貴山麓の金属加工会社から生まれた大和のイメージ製品、大いにPRして全国に羽ばたいていただきたいものだ。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする