tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

まろやか味のうどんが食べたい!(5)東西の味が融合

2014年10月18日 | グルメガイド
久々に「まろやか味のうどんが食べたい!」の(5)を書く。2010年3月の(4)のあと4年も空いたので、ほとんどの方が過去の内容をお忘れだろう。ここで(1)から(4)の要点を整理しておく。

「(1)ツユが辛くなった?」では、大阪と京都で、立て続けにツユが辛い(塩味が濃い)うどんを食べてしまい、ガッカリ。「知らないうちに、関西のうどんはこんなに辛くなっていたのか」と驚愕したことを書いた。

「2)カップ麺・東西比較」では、カップうどんの東西味比べをした。「どん兵衛」と「赤いきつね」は、予想通りの結果(西はまろやか味、東は醤油・塩・甘味が濃い)だったが、東京で販売されていた「ごんぶと きつねうどん生タイプめん」と「どん兵衛 特盛りかき揚げうどん」は、どちらも関西風のまろやか味だった!讃岐うどんブームの余波か、東京でもまろやか味が受け入れられているのだ。

「(3)奈良のうどん事情」では、奈良県下のうどんを食べ歩いた。県内17軒(奈良市が15軒、生駒市と五條市が1軒ずつ)のうどん屋さんの中で、ツユが辛かった(塩味が濃かった)のは奈良市内の1軒だけ。やや辛かった(ただし許容限度内)のが2軒(いずれも奈良市内)で、残り14軒はまろやか味だった(奈良は、まろやか味シェア82%、許容味シェアは94%と高い)。

「(4)東京のツユはまっ黒か」では、東京駅前でランダムに2軒のうどん屋に入ったところ、どちらのツユも薄色の「まろやか味」だったことを書いた。必ずしも「東京のうどんツユは真っ黒」ではない。


小諸そば三越前店

さて今回の(5)では、東京・京都・大阪・奈良・和歌山の5都府県・6軒の最新状況を紹介して、ひとまず締めくくりとしたい。(4)では東京駅前の2軒の店が「まろやか味」だったと書いたが、念のため上京のおり(9/20)、もう1軒訪ねることにした。東京都中央区・千代田区などの都心部で85ヵ店を展開する「小諸そば」(株式会社三ッ和)だ。訪ねたのは三越前店である。


以前の看板には「当店のうどんつゆは、関西風にしております」の文言があった

かつて三越前店の看板には、このように書かれていた。「当店のうどんつゆは、関西風にしております」。しかし最近、この看板は書き替えられたようで、そのような文言はない。関東風に戻したのだろうか。不安になってお店の人に聞いてみると「いえ、今も関西風です」とのことだったので、安心して関西うどんの代表格「きつねうどん」340円を注文してみた。


小諸そばの「かき揚げそば」350円

出てきたのが、トップ写真のうどんだ。見るからに、関西風にあっさりしている。まずツユをひと口。昆布と鰹ダシがよく利き、薄口醤油で仕上げた「まろやか味」のツユだ! これは美味しい。小諸そばは「生麺ゆでたて」がウリのチェーン店で、さすがに麺は「つるつる シコシコ」だ。きつねも関西風にあっさりとした味に仕上がっている。ここでは「かき揚げそば」350円もいただいたことがあり、そばツユもまろやか味だった(ただし濃口醤油使用)。



その帰り、新幹線でJR京都駅に到着し、構内(2階)の「門左衛門 麺.串.」を訪ねた(9/20)。看板には「麺・串・釜炊きおにぎり」とあり、いつもよく流行っている店だ。この日もたくさんの外国人観光客がうどんをすすっていた。運営するのは茨木市(大阪府)に本社のある株式会社神戸ゴマルゴ(505)。ここでも「きつねうどん」350円を注文。出てきたのがこちらで、ツユもきつねも立派な「まろやか味」だった。


門左衛門 麺.串.の「きつねうどん」350円

3軒めは大阪市。「コテコテ大阪難波の立ち食いうどん」の名店、天政を訪ねた。ここは「肉うどん」400円が美味しいと評判の店なので、例外的にこちらを注文(「きつねうどん」は、わずか260円)。うーん、じんわりとうまい大阪のまろやかツユにモチモチうどん、お肉もたっぷり。これはやみつきになりそうだ。


先客2人が並んでいた


牛肉がたっぷり載って400円!

4軒めは奈良市。近鉄新大宮駅前の立ち食い店「しゅう」で、「きつねうどん」400円をいただいた(9/29)。2010年のリサーチでも「まろやか味」だったが、今も味はそのまま。麺(冷凍うどん)はほど良いコシがあって、これは美味しい。


薄味が美味しいしゅうの「きつねうどん」400円

5軒めは奈良県橿原市。イオンモール橿原3階の「そば匠 楽庵」を訪ねた(10/5)。この店を運営するのは、奈良市に本店のある株式会社ハローだ。ここで「きつねうどん」810円を注文。


塩味が濃いめだった楽庵の「きつねうどん」810円

見た目はさほど変わらないが、これら6軒中では、最も塩味が濃かった(ただし許容限度内)。きつねにも、シッカリとお味(醤油・砂糖)がついている。場所柄から、辛口ツユを好みがちな若者やファミリー層の好みに合わせているのだろうか。



6軒めは帰省の折、橋本市高野口町(和歌山県)の老舗「かね良(りょう)」を訪ねた(10/10)。いかにも昭和レトロなお店で、もう100年近く、こここで営業されているそうだ。出前の注文も多い店だ。





地元には「夜(よる)うどん」という言葉がある。織物業が盛んだった高野口町では、夜勤の女工さんたちが夕食にうどんを食べて工場勤務についたそうだ(今は織物工場も減り、その習慣は廃れてしまっているようだ)。ここの「きつねうどん」は350円で、すうどんと50円しか違わない割安価格。出てきたうどんはツユもきつねも、昔懐かしい「まろやか味」だった。


かね良の「きつねうどん」350円

結局、6軒の中で最も「まろやか」だったのが「しゅう」(新大宮)、比較的塩味がシッカリついていたのが「そば匠 楽庵」(イオンモール橿原)という結果だった。

先日、『ちょっとそばでも』(廣済堂出版)著者の坂崎仁紀さんから、こんなメールをいただいた。《ご指摘の通り 関西系のつゆは東京でもひろまっています 立ち食いでいえば、大阪から大分前に来た、都そばというチェーンがありました》《それが大阪誠和食品で、そこが関西のつゆを提供していたりしました。今はもっと多いと思います 有楽町の帝劇ビル地下2階に、都そばがまだあります。関西ふうのつゆを選択できます》。なるほど、やはりうどんには関西風の薄口ツユが合うのだろう。

 ちょっとそばでも 大衆そば・立ち食いそばの系譜
 坂崎仁紀
 廣済堂出版

さてこの辺で、中断を含め5年間にわたる東西うどんのリサーチ結果を、以下にまとめておく。

1.関西のうどん店では、新店、店主が若い店(代替わりを含む)やチェーン店では、塩味が濃いという傾向がある。色は薄いので、これは白醤油や塩を多用しているのだろう。しかし老舗では、伝統のまろやか味が守られている。

2.関東のうどん店では、新店やチェーン店を中心に、まろやか味が増えている。これは全国を席捲した「讃岐うどんブーム」と関係がありそうだ。事実、まろやか味のカップうどんが東京で販売されている。


「岩本町スタンドそば」(秋葉原)のまっ黒ツユ。うどんも同じツユで出てくるが、私は食べる勇気がない

3.「関東のうどんツユは真っ黒」は、老舗の立ち食いそば店など、そばツユとうどんツユを区別しない店特有の事情のようだ。正確に言えば「関東のそばツユは真っ黒。うどんも同じツユを使うので、うどんツユも真っ黒になる」ということで、あまり「うどんツユは真っ黒」を強調するのは、フェアではない。しかも、このような店は減少傾向にある。以前、当ブログに「群馬県の水沢うどんのツユは、真っ黒ではありません」というコメントをいただいたこともあるし、東京の「都そば」では関西風のうどんツユが選べる。

4.上記を総括していえば、関西は新しい店から順にツユが塩辛くなっている。関東は、新しい店から順にツユがまろやかになっている。関西の薄口醤油(または白醤油)、関東の濃口醤油、という違いはあるが、東西のうどんツユの味は、どんどん同じ方向に収斂しつつある。

ということになろうか。それにしても、たったこれだけの調査に5年もかかるとは、食の世界は奥が深い。全国各地の当ブログ読者の皆さん、ご当地のうどん事情も、ぜひお知らせ下さい!
坂崎仁紀さん、貴重な情報、有難うございました!
コメント (4)
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