これはあるシーンを思い出しながらの模倣であり、オマージュ。
記録性に徹することなく芸術性も重視した市川崑監督の東京オリンピック記録映画は、批判を浴びたけれど印象的なシーンが多かった。
陸上競技では80mハードルの依田郁子が注目されていて、その決勝レースでのシーンが忘れられない。
それぞれの選手のスタート位置の後ろにはイスがあるのだが、依田郁子のイスの上には檸檬(レモン)が一個置かれていた。
スタート前のそれぞれのルーティーンが終わり、皆が静止し、号砲が鳴る前の張りつめた一瞬を象徴して鮮やかだった。