携帯電話の番号ポータビリティがスタートした。
このポータビリティというカタカナことば、建築用語としては以前から使われていた。例えば椅子のポータビリティというと、椅子の持ち運び易さという意味だ。それは椅子の大きさ、重量、形状(抱えて運べるような形状になっているかどうか)などによって決まる。椅子をデザインする際にはポータビリティを考慮せよ、というわけだ。
さて、番号ポータビリティだが、数日前ある新聞では「番号持ち運び制」と表現していた。「持ち運び」とは「もの」にあてはまる概念ではないのか、と思うのだがどうだろう・・・。ものではない番号つまり情報に対して「持ち運び」と表現されると、違和感を覚える。購読している新聞は「番号継続制」と表現している。そう、この場合持ち運び制より継続制のほうが相応しいと思う。
そもそも内容を的確に表現することができる「継続制」という日本語があるのに、なぜ「ポータビリティ」などと表現したのだろう。コンセンサス、トレーサビリティ、コンプライアンス等々、一般に馴染のないカタカナことばの使用を控えようという気運が高まったのではなかったか。
『プレイン・イングリッシュのすすめ』ケリー伊藤/講談社現代新書によると、アメリカでは役人や弁護士も、自分達だけしか理解できないような法律言葉や官僚言葉で一般市民を煙に巻くことが許されないという。
(Plain Englishに関する大統領命令/1978年3月23日)
別に番号ポータビリティという表現が一般市民を煙に巻くためのものだとは思わないけれど、なぜこういう表現をしたのかは、知りたいところだ。