透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「山の上ホテル物語」

2007-02-19 | A 読書日記



● 山の上ホテルに関するエッセイ集。白水uブックスを手にする機会はほとんどなかった。なかなか洗練されたいいブックデザイン、田中一光氏によるものと知って頷けた。

本書には何人もの作家が書いたこのホテルの魅力が紹介されている。

三島由紀夫**東京の眞中にかういふ静かな宿があるとは知らなかった。設備も清潔を極め、サービスもまだ少し素人っぽい処が実にいい。(後略)**

石坂洋次郎**山の上ホテルは足場がよく閑静で眺めがよく料理もおいしい。そして清楚な雰囲気がなによりも好ましい。**

山口瞳**私が山の上ホテルに求めるのも、山の上ホテルが私に与えてくれるのも「安心感」である。私は、そもそも町なかの小さなホテルが大好きなのだが、こんな山の上ホテルのようなホテルが現代に残っているのは奇蹟のように思われて仕方がない。(後略)**

井上靖、檀一雄、松本清張、中村眞一郎、吉行淳之介、五味康祐、小林秀雄、池波正太郎、高見順、舟橋聖一、・・・。

なるほど、これらの指摘でこのホテルの魅力や、多くの作家がこのホテルを第二の書斎にした理由もなんとなく分かった。

むかし、このホテルの外観だけは見たような気がするが、中に入ったことはない。やはり実際に体験してこのホテルの魅力をきちんと知りたいものだが、そんな機会があるだろうか・・・。