■ 久しぶりの小説、小川糸の『食堂かたつむり』読了。この小説は柴咲コウの主演で映画化され、来月公開される。
柴咲コウといえば織田裕二と共演した「県庁の星」。この映画で彼女はスーパーマーケットの店員を演じたが、食堂かたつむりのオーナーシェフ、倫子(りんこ、愛称はりんご)はこの店員とイメージ、そう頑張り屋さんのところが重なった。
中学を卒業した日に家を出て、都会で暮らしていた倫子。恋人にふられて声も失って10年ぶりに田舎に帰ってくる。山あいの静かな村で倫子は一日一組だけの食堂かたつむりを始める・・・。
ものがたりはほのぼのとした雰囲気で進んでいくが、母親がやっているスナックで毎年恒例のふぐパーティーを開くあたりから、雰囲気が変わっていく。それまでの小春日和から今にも嵐になりそうな雲行きに・・・。 急にバタバタとものがたりが進みだす。
ラスト、亡くなった母親(おかん)が残した手紙を見つけて読む倫子。この場面、涙があふれるところだろうが、そのようなモードにはならなかった。それは終盤、ものがたりに勢いがありすぎるからではないか、そんな気がした。私の好みからすれば、ものがたりは、小春日和のまま静かに終って欲しかった。
この作家は料理がかなり好きなんだろう。やはり好きなことを書くのがいい。
「料理」といえば藤沢周平の『武士の一分』のラスト、映画ではキムタクが離縁した妻がつくったと気が付くシーンが印象的だった。あの場面では涙があふれた。
映画ではおかんの役は誰がやるんだろう。熊さんは、お妾さんは、梢ちゃんは・・・。エルメスという豚も当然出てくるんだろうな。公開されたら観に行こう。