■ 『見えがくれする都市』 槇文彦他著/SD選書(鹿島出版会)
発行は1980年の6月。初読は同年の12月。この本は都市計画を学ぶ学生たちのバイブルなんだとか。何年ぶりかで読み返した。
見えがくれすることによって生じる「空間の襞」がいく重にも重なり合って演出される空間の「奥性」。奥性という概念によって読み解く日本の都市空間の特徴。確かに広重の「江戸百景」などは奥性の表現がテーマではないかと思われるほどだ。
今回読んで興味深かったのは第Ⅳ章の「まちの表層」だった。
表層は都市の構成単位の内部領域と公共領域(道)との境界だが、その形態に自然観や空間概念が反映しているという指摘。確かにヨーロッパの厚い壁1枚の表層と下の写真ような日本の表層は全く違う。建物の壁だけでなく、塀や、植物など、薄い層を何層も重ねることで表層が構成されている。この「薄い層を何層も重ねる」というところがミソ。竹垣、格子、すだれ、のれん、障子・・・。
このような視点でまち並みを構成する表層を観察してみるのもおもしろいだろう。
民家 昔の記録 佃島 観察日820429