■ 今月3日、元オウム真理教信者菊池直子容疑者が逮捕された。1995年5月の特別手配から17年ぶりだった。翌4日の朝刊一面にこのことが大きく報じられた。
記事には警視庁が今年2月に新たに作成し、公開した似顔絵が載っているが、これが5日付朝刊に載った逮捕直前の菊池容疑者の写真とは全く似ていない。捜査員の一人が「あれではすれ違っても分からない」と思ったと記事にある。先ほど改めて似顔絵と写真とを見比べたが、確かに同一人物だとは到底思えなかった。
以前、20数年ぶりにある人から電話をもらったことがあったが、その時、声が昔と全く変わっていなくて驚いた。顔は変わる。でも声は変わらない。もっとも私は顔も変わっていないと、OB会などで久しぶりに再会する旧友に言われることがあるが。
ところで松本清張に昭和31年発表の「声」という短編がある。新聞社の電話交換手の女性が電話で偶然強盗殺人犯の声を聞いてしまったことが招く悲劇を描いた作品だ。
事件から半年近く経っても犯人の手がかりがなく、捜査本部は解散する。交換手の女性はそれから更に半年後に新聞社を辞め、交際していた男と結婚する。ある日、男の勤め先の同僚の声が電話で聞いた犯人の声と同じことに気がついて・・・。
松本清張が朝日新聞に勤めていたとき、ベテランの電話交換手が非常に大勢の人の声を聞き分けることを知っていて考えた作品だという。
繰り返す、声は変わらない。だから、手配者の写真や似顔絵だけでなく声も公開すべきだと思うが・・・。