透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

葉室麟の「柚子の花咲く」を読む

2013-10-13 | A 読書日記



 『柚子の花咲く』 葉室麟/朝日文庫 を読み始めた。

**女はそう言うと袂から出した結び文をすばやく渡した。恭平は大根を頬張りながら、さりげなく結び文を開いた。そこには、
――明朝、明六ッ、庚申堂にてお待ち申し上げ候
と女文字で書かれていた。
庚申堂とは青面金剛を祀った堂宇である。近隣のひとびとが庚申の夜、一晩中、起きて<庚申待>を行う。庚申の夜に寝ると体内にいる三尸が罪を上帝に告げて命を縮めるという。鮎川宿のはずれにも庚申堂があった。
琴からの呼び出しの手紙だった。
(先生と孫六は同じように呼び出されて斬られた)
と思うと、背中に冷や汗が出て、一気に酔いがさめていった。**(97頁)

なぜか不思議なことに、あることに関心を持つとそれに関することに出合うことが急に多くなるような気がする。まさか小説に庚申待のことが出てくるとは思ってもいなかったので、この箇所を読んだときにはビックリした。庚申待のことが簡潔に説明されている。

**悲恋、斬殺、青春、剣戟、師弟愛、謎解き・・・・・・。贅沢すぎる一級エンタテイメントです!**と帯にある。

この作家の作品に出合うことができて良かった・・・。


 


庚申塔・道祖神

2013-10-13 | B 石神・石仏

 昨日(12日)の午前中、塩尻のえんぱーく(図書館が主機能の複合施設、塩尻市市民交流センター)で庚申塔と道祖神に関する資料を調べて過ごした。

庚申塔 昭和55年の庚申の年に長野県では449基の庚申塔が建てられたという。これは全国で一番多い数だ。次いで新潟県の159基、その次は静岡県だが、数はぐっと減って17基(「日本の石仏」1986年夏による)。長野県がいかに多いかが分かる。 私の住む鄙里にもこの年に祀られた庚申塔が数基ある。なぜ長野県に庚申塔が多いのだろう・・・。きっと理由があるはずだ。また、同誌によると埼玉県内には現存最古、今からおよそ540年前の庚申塔があるとのこと。

道祖神 家内安全、無病息災、子孫繁栄、五穀豊穣などあらゆることを願う神様だが、元々は集落の境に祀って、悪霊の侵入を防ぐことを願う神様(守護神)だと理解している。

韓国にも同様の役目をする守護神があることを知った。集落の入り口をはさんで男女の形をとる人形風の木彫りの像が立っているところがあるそうだ。チャンスン←クリック

また、タイ西南部に住むアカ族の村の入口の道に鳥居状のロコンと呼ばれるものがあって、その前には男女の祖先像が向かいあっているという。

前にアツアツのカップルには悪霊も近づかないと何かで読んだが(道祖神のデザインはこの考え方によるもの)、このような考え方は日本だけでなく、韓国やタイにもあるということだろう。そしてもしかしたら他の国にもあるのかもしれない・・・。

一方、仁王像は怖い顔で立っている。狛犬も同様だ(中にはユーモラスな表情のものもあるようだが)。こちらは悪霊を威嚇することで侵入を防ごうとする発想だろう。ピラミッド(王の墓)を守るスフィンクス然り。

道祖神は悪霊を近づけないということではこれらのものと同じだが、その方法が違う。なんというか、平和的な解決というか・・・。「北風と太陽」のものがたりに通じる。北風のように力ずくで悪霊を押さえこもうという姿勢の仁王像と太陽のような振舞いの道祖神・・・。