■ 『柚子の花咲く』 葉室麟/朝日文庫 を読み始めた。
**女はそう言うと袂から出した結び文をすばやく渡した。恭平は大根を頬張りながら、さりげなく結び文を開いた。そこには、
――明朝、明六ッ、庚申堂にてお待ち申し上げ候
と女文字で書かれていた。
庚申堂とは青面金剛を祀った堂宇である。近隣のひとびとが庚申の夜、一晩中、起きて<庚申待>を行う。庚申の夜に寝ると体内にいる三尸が罪を上帝に告げて命を縮めるという。鮎川宿のはずれにも庚申堂があった。
琴からの呼び出しの手紙だった。
(先生と孫六は同じように呼び出されて斬られた)
と思うと、背中に冷や汗が出て、一気に酔いがさめていった。**(97頁)
なぜか不思議なことに、あることに関心を持つとそれに関することに出合うことが急に多くなるような気がする。まさか小説に庚申待のことが出てくるとは思ってもいなかったので、この箇所を読んだときにはビックリした。庚申待のことが簡潔に説明されている。
**悲恋、斬殺、青春、剣戟、師弟愛、謎解き・・・・・・。贅沢すぎる一級エンタテイメントです!**と帯にある。
この作家の作品に出合うことができて良かった・・・。