透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「花宴」

2022-05-01 | G 源氏物語

 『十人十色  「源氏」はおもしろい』瀬戸内寂聴(小学館1993年)は寂聴さんの対談集。歌人の俵 万智さんとの対談も収録されている。その対談で寂聴さんは六条御息所が好きだと言っている。**物の怪になってしょっちゅう出てくるの。あの人がいなければ、物語がおもしろくないでしょう。** 俵 万智さんは寂聴さんに源氏の中では誰がいちばん好き?と聞かれ、朧月夜の君が好き、と答えている。今年は「源氏物語」の関連本も読みたい。

「花宴 宴の後、朧月夜に誘われて」

南殿の桜の宴が催された。東宮に請われ、申し訳程度に舞った光源氏。すばらしい舞はいつものように賞賛される。夜がすっかり更けて、宴が終わる。月がうつくしい。酔い心地の光君はそのまま帰る気にはなれず、藤壺の御殿のあたりをうかがって歩く。取り次ぎを頼もうにも女房たちの部屋の戸は閉ざされている。弘徽殿の西廂(にしびさし)に立ち寄った。細殿の戸口が開いている!
**こうした不用心から男女の間違いは起こるのだと思いながら、光君はそっと細殿に上がって奥を見る。**(255頁)
「朧月夜に似るものぞなき」と口ずさみながら女が近づいてくる。光君、女の袖をつかんで抱き寄せる。

深き夜のあはれを知るも入る月のおぼろげならぬ契りとぞ思ふ(255頁)

女の名前をしらないまま一夜をともにした光君。

**「どうか名前を教えてください。どうやってお便りすればいいのかわかりませんから。これで終わろうなんて、よもや思っていませんよね」と、光君が言うと、**(256頁)

うき身世にやがて消えなば尋ねても草の原をば問はじとや思ふ(256頁)と返す。これって、悪女のわざじゃなかろうか。

再会できない日が過ぎていく・・・。

ひと月後。右大臣家で行われた弓の試合とその後の藤花の宴。夜が更ける。光君が酔ったふりをして席を立ち、女一の宮と女三の宮がいる神殿に近づく。多くの姫君のなかにときおり深くため息をつく女性がいる。几帳超しに歌を詠む光君。

**「心いるかたならませばゆみはりの月なき空にまよはましやは(深くお思いでしたら、たとえ月が出ていなくても迷ったりなさるでしょうか。月のない暗い夜でもお通いになるはずです)」と言うその声は、紛れもなく、あの夜の人である。光君はじつにうれしいのだけれども・・・・・。**(262頁) 


朧月夜は政敵・右大臣家の六女。

心いるなりませば弓張の月なき空に迷はましやは


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋