透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「花散里」

2022-05-09 | G 源氏物語

「花散里 五月雨の晴れ間に、花散る里を訪ねて」

 この帖は短い。読んでいる角田源氏では、わずか4ページ。 橘の花、郭公(ほととぎす)がキーワード。

右大臣方の世。失意の光君、出家のことも頭をよぎる。五月雨が珍しく晴れた雲の絶え間、今は亡き父・桐壺院の妃のひとりであった麗景殿女御の邸を訪れることにする。麗景殿の女御の妹の三の君(花散里)とはかつて逢う瀬を重ねた仲だった。まず女御と桐壺院の思い出話をする。**桐壺院が親しみやすく心の安らぐ人だと話していたのを思い出すと、昔のことがあれこれと偲ばれて、光君はつい涙をこぼす。**(361頁)

人目なく荒れたる宿は橘の花こそ軒のつまとなりけれ(361頁)**と詠む女御は、やはりほかの女とは異なってすばらしい人だと思わずにはいられない。**(362頁) その後、光君は花散里のいる西側の部屋をさりげなく訪ねる。ふたりはなつかしく語らう。

紫式部は麗景殿女御の邸に向かう途中で立ち寄った中川あたりに邸がある女性(やはりかつて関係のあった恋人・中川の女)を対比的に描き、麗景殿女御と花散里の優しさを際立たせている。

花散里は家庭的な人だと思う。きっとそうだろう。いいなあ、心安らぐ女性って・・・。

これで全54帖の1/5を読んだことになる。読み急ぐことなく読み続けたい、『源氏物語』は「読まずに死ねるか本」だと思っているから。


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋