透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「須磨」

2022-05-12 | G 源氏物語

2024年のNHK大河ドラマは紫 式部が主人公でタイトルは「光る君へ」とのこと。脚本は大石 静さん。紫 式部を吉高由里子さんが演ずるそうだ。今年を『源氏物語』を読む年と決め、4月から読み始めている。まあ、今年中には全54帖を読了できるだろう。気が早いが、今から平安貴族の暮らしが可視化される大河ドラマ「光る君へ」が楽しみ。

「須磨 光君の失墜 須磨への退居」

 朧月夜との密会が明らかになり、処分が避けられない状況となった光君。自ら須磨への退居を決意。関係のあった女性たちに密かに別れを告げ、三月二十日過ぎに七、八人の近しい従者と共に下ることに。

涙河うかぶ水泡(みなわ)も消えぬべし流れてのちの瀬をも待たずて(涙河に浮かぶ水泡のような私は消えてしまいそうです。いつかお帰りになるあなたとの逢瀬も待たずに)(376頁) 朧月夜から届いた歌。

光君、伊勢の斎宮へも使いを差し向ける。伊勢といえば六条御息所。光君、なんとまめなことか。その六条御息所からも手紙が届く。
うきめかる伊勢をの海士(あま)を思ひやれ藻塩垂るてふ須磨の浦にて(つらい日々を送っている伊勢の私を思いやってくださいね、涙を流していらっしゃるという須磨の浦で)(387頁)

ふたりの女性の性格の違いが和歌からも窺える。当然のことながら「源氏物語」の和歌は紫 式部の作。やはりこの平安の才女はすごいと思う。

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光君の須磨下向を知った明石の入道は娘・明石の君に光君との結婚のチャンス到来と張り切る。でも奥さんは懸念を示す。**「まあ、なんてことを。京の人が話しているのを聞きますと、光君さまは尊い身分の奥方さまを大勢お持ちになって、それでも満足せずに、こっそりと帝の御妻(みめ)とまで過ちを犯されたというではありませんか。(後略)」**(399頁)田舎にまでうわさが伝わっているようで・・・。現代小説には、このようなまとめというか解説のような文章を途中で入れることがよくあるけれど、昔も同じだったということかな。

この帖のラストはすごい。三月一日、光君が海辺で心身の穢れを祓う禊ぎを始めると、突然、見たこともないほどの暴風雨に。雷が鳴り響き稲妻が走る。このまま世は滅びてしまうのではないかと人々はうろたえる。明け方になって、光君はぞっとするような夢を見る。このあたりの描写はCGを駆使して派手に描く、今どきの映画のようだ。

紫 式部が優れたストーリーテラーであることが今まで読んできて分かった。まあ、そうでなければ70年にも及ぶ長大な小説を書くことはできないと思うが・・・。


1桐壺 2帚木 3空蝉 4夕顔 5若紫 6末摘花 7紅葉賀 8花宴 9葵 10賢木 
11花散里 12須磨 13明石 14澪標 15蓬生 16関屋 17絵合 18松風 19薄雲 20朝顔
21少女 22玉鬘 23初音 24胡蝶 25蛍 26常夏 27篝火 28野分 29行幸 30藤袴
31真木柱 32梅枝 33藤裏葉 34若菜上 35若菜下 36柏木 37横笛 38鈴虫 39夕霧 40御法
41幻 42匂宮 43紅梅 44竹河 45橋姫 46椎本 47総角 48早蕨 49宿木 50東屋
51浮舟 52蜻蛉 53手習 54夢浮橋