透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ほお葉巻

2011-06-17 | A あれこれ

 

 木曽谷の季節限定郷土食 ほお葉巻    朴(ほお)の葉と花

緑が濃くなるこの季節、木曽地方ではほお葉巻が菓子店や直売所で売られている。

ほお葉巻は米粉をこねた生地の中に餡(あん)をつめ、朴の葉で包んで蒸してつくる田舎スウィーツ。今では一般家庭ではあまりつくられなくなったようだが、かつては月遅れの端午の節句の供え物としてどこの家庭でもつくられていたと聞く。

今日(17日)、Aさんから実家のお母さん手づくりのほお葉巻をいただいた。素朴な味で、とても美味かった。
Aさん、ありがとう。

広げた朴の葉を見ていて、子どもの頃、朴の葉と枝で風車をつくって遊んだことを思い出した・・・。 

 


諏訪の文字書き道祖神

2011-06-16 | B 石神・石仏



 文字書き道祖神 諏訪市中洲  

前稿に載せた火の見櫓の脚元に立つ道祖神。

道祖神というと安曇野の路傍に立つ双体道祖神がよく知られているだろう。道祖神はもともと塞の神。邪悪なものをさえぎるとされ、江戸後期から盛んに立てられるようになった。やがて五穀豊穣、安産などを祈願する神として庶民の生活に浸透していき、それは連綿と今日まで続いている。花が飾られている道祖神や注連縄をかけた道祖神をときどき見かける。

文字書き道祖神の数も多い。総じて文字は豪胆にして達筆だ。


164 諏訪の火の見櫓

2011-06-15 | A 火の見櫓っておもしろい



164



 所用で諏訪へ出かけた。初めてのところではないが、案内図を送ってもらった。案内図には火の見櫓が載っていた。それがこの火の見櫓。辻に立つ火の見櫓の脚元には道祖神があった。

先日載せた火の見櫓のチェックポイント(改訂版)で観察すればいいのだが、それはまたの機会に・・・。


 

 


「建築家なしの建築」

2011-06-13 | A 読書日記

 建築家にしてエッセイストでもあったバーナード・ルドフスキーの『建築家なしの建築』。この本は1984年に鹿島出版会のSD選書として刊行されたものが一般によく知られているが、1975年に「都市住宅」別冊として出版されている(写真)。



■ 今日(13日)、この煙突を松本市内で見ていてふとこの本のことを思い出した。



訳者・渡辺武信氏はあとがきに**本書は世界各地の無名の工匠による風土的な建築をパノラマ的に紹介したもので(後略)**と書いている。そう、日本も含め、世界各地の「風土的、無名の、自然発生的、土着的、田園的」建築を紹介している。

海岸の小石が繰り返し繰り返し波に洗われて次第に形が丸く整っていくように、建築家なしの建築は建築家に替わって風土が、永い時の流れが、建築に合理的な形を与えたと言っていいだろう。茅葺きの民家もその好例のひとつだ。

**風土的な建築は流行の変化に関りがない。それは完全に目的にかなっているのでほとんど不変であり、まったく改善の余地がないのである。(12頁)**とルドフスキーは本書に書いている。

現代建築の大胆な造形を見るにつけ、その依拠するものは一体なんだろう・・・、と思う。


えんぱーく体験

2011-06-12 | A あれこれ

■ 建築デザイン。その主眼は美しい建築空間の創出から、建築空間を成立させるシステムの提案へと移りつつあるようだ。海外の事情には明るくないが、国内では伊東豊雄の「せんだいメディアテーク」がそのはしりだったかもしれない。独創的な空間構成システムをいかに提案するか・・・。「せんだい」では、チューブと呼ばれる籠状に組まれた鋼管トラスとプレートと呼ばれるフラットスラブによる空間の構築システムが提案され、実現している。


森のコート


太陽のコート

■ 塩尻の「えんぱーく」、2006年に行われた設計競技の当選案には「壁柱」と呼ばれる、プレキャストコンクリート(PC)と鋼板の複合版(厚さ約200mm)によって床を支えるというシステムが提案されていた。


約100枚の壁柱が創りだす空間ってどんなものだろう・・・。柱ではなくて壁柱。設計競技の公開審査では壁柱について、図書館というオープンであるべき空間にとってはうっとうしい、できれば無い方がいい存在になるのでは、という指摘もあったように記憶している。

実際に空間体験してみると、壁柱はまったく気にならない。むしろ壁柱がいろんな空間を創りだすのに欠かせない存在になっていることがわかる。来館者はお気に入りの場所を見つけて、そこで読書をしたり、原稿を書いたり、勉強をしたりして過ごしている。


月のコート



今日の午前中、「月のコート」と呼ばれる吹き抜け空間に面する一角で『吾輩は猫である』を読んで過ごした。トップライトから自然光が降り注ぐ明るい空間は細かな活字を追うのによい。数回目のえんぱーく体験。


 


「白鳥の歌なんか聞えない」

2011-06-12 | A 読書日記

 
白:昭和46年2月発行
■ 庄司薫は若い人には馴染みのない作家だと思う。昭和44年(もう随分昔のことだけれど)、『赤頭巾ちゃん気をつけて』で芥川賞を受賞している。作品はその後、薫くん(主人公の名前)シリーズ4部作としてまとまる。

その第3作『白鳥の歌なんか聞えない』はNHKでドラマ化された。このドラマで仁科明子がヒロインの由美(薫くんのガールフレンド)役でデビューしている。このときの経緯を彼女は『いのち煌めいて』小学館に次のように書いている。

**高校三年の夏。この夏、私は、ある雑誌のグラビアに、父といっしょに出た。それが、ちょうど庄司薫さん原作の『白鳥の歌なんか聞えない』をドラマ化しようと、出演者を探していたNHKのプロデューサーの目にとまり、姉のマネージャーに出演を打診してきたのだ。話が決まったのは、もう二学期の終わりころだった。(16頁)**

調べてみるとこのドラマが放送されたのは昭和47(1972)年3月のことだった。ストーリーは忘れたが彼女がすごくかわいかったことだけは今でも覚えている。そう、当時高校生だった彼女はぼくの好みにぴったりだったのだ。

ぼくはドラマ化されたのは『赤頭巾ちゃん気をつけて』だったとずっと思っていて、昨日(11日)カフェ・バロでそのことを話したのだが、違っていた。なぜこの小説のことを話題にしたかは書かないでおく。

**女の子にもマケズ、ゲバルトにもマケズ、男の子いかに生くべきか。さまよえる現代の若者を爽やかに描く新しい文学の登場!**「赤頭巾ちゃん気をつけて」の帯。

**早春の陽ざしに音もなく忍びよる死の影。生命あることの寂しさ空しさを見すえて互いに求めつつさすらう若い魂を、光と影の交錯の中に美しく描く永遠の青春像**「白鳥の歌なんか聞えない」の帯。

ぼくの青春時代とシンクロしている小説で、書棚から取り出してながめているととても懐かしい想いがする。一冊だけ再読するなら、やはり『白鳥の歌なんか聞えない』かな・・・。


  
薫くんシリーズ    
赤:昭和44年8月発行      黒:昭和44年11月発行     青:昭和52年7月発行   


木造ミース

2011-06-11 | A あれこれ





■ 建築家のミース、ミース・ファン・デル・ローエはル・コルビュジエとフランク・ロイド・ライトと共に近代建築の三大巨匠と呼ばれている。ミースは鉄とガラスという近代建築を代表する材料を用いて抽象的な「白」の建築を創りつづけた。代表作としてまず浮かぶのはやはりファンズワース邸だ。

カフェバロの外観の印象について、ミースの建築のようだとKさんだったか、設計者のMさんに対してだったか忘れてしまったが語ったことがある。

既に書いたが、先日塩尻のえんぱーくで藤森照信さんの本を読んでいて「木造ミース」という言葉に出会った。どのような文脈で使われていたのかは、覚えていないが、そのときカフェバロの外観デザインのことを思った。そうか・・・、木造ミース! こんな言葉があの時浮かんでいたらな~、と残念に思った。

どうだろう、この外観。木造ミースという言葉がぴったりのデザインだと思うのだが・・・。

 


元バス停看板

2011-06-10 | A あれこれ





 昨日(9日)、地方紙(信濃毎日新聞)に「朝日村は元気づくり支援金で6事業」という記事が載っていた。小さな記事だったが偶々目にした。

村内産のカラマツを使って小学校の椅子と机をつくる継続事業をはじめ親子で大豆を栽培して味噌をつくる子育て支援事業など、長野県の地域発元気づくり支援金を受けて行われる6事業が紹介されていた。その内のひとつが不要になったバス停表示板を再利用して工房の案内看板をつくる、というもの。

写真① まだ何も手を加えていない、バス停のままの状態。カフェシュトラッセに置かれている。
写真② 錆を落として黒くペイントした元バス停。朝日美術館の玄関に置かれている。
写真 家具工房スタイル・ガレに設置された看板。

元バス停看板が約20の工房に設置される、とのことだ。同じ仕様の看板を設置することで、それぞれの工房の関係、関連性が明確になる。リンケージを示す看板。なかなか面白い試みだ。他の看板もさがしてみたい。

 


162 163 火の見櫓のチェックポイント

2011-06-09 | A 火の見櫓っておもしろい

 
162 東筑摩郡筑北村本城の火の見櫓


163 松本市四賀の火の見櫓

 火の見櫓観察のポイントを整理しておこう(100813の記事の改訂版)。


1 火の見櫓の立地、環境

10 周辺の状況・環境、観察時の季節や天候、時間など 
11 消防団詰所(屯所)、消防倉庫の有無
12 観察者の主観的な印象


2 火の見櫓の全体の様子 

20 形式:1本柱、梯子型(2本柱)、櫓型(3本柱、4本柱 その他の型)
21 櫓の高さ、脚の長さ、脚間長さ
22 プロポーション:上方への絞り方(櫓が描く曲線の様子) 総高/脚間長さ、逓減率
23 屋根と見張り台の形、大きさ及びバランス
24 色 その他


3 火の見櫓を構成する各部の様子

30 屋根の有無 屋根の形(平面形と立体形)と飾り(避雷針及びその飾り、蕨手、その他)
31 半鐘の有無 半鐘の形 半鐘用の小屋根の有無 形
32 見張り台の有無 見張り台の平面形、床の構成、手すりのデザイン
33 櫓の材料(鋼材、木材、石、コンクリート)
34 櫓の平面形と立体形、構成部材の種類と接合方法(鋼材:ボルト、リベット、溶接)、ブレース(筋かい)  
35 梯子の構成部材 手すりの有無など
36 脚部のデザイン 単脚、複合脚(トラスの組み方やアーチの有無 カーブの様子) 
37 基礎:独立基礎、一体型(塊状)基礎
38 消防信号表示板の有無 銘版の有無と記載内容(製造所名、製造年など)
39 スピーカー、サイレン、照明等の有無 経年変化の状況 その他 


4 その他 



これは何だろう・・・

2011-06-08 | A あれこれ



■ 夕方散歩に出かけた。そのとき目にした鉄道標識。これは何だろう・・・。

ウサギのミッフィーの口のような×と互い違いのスキーの板のような、この縦長の標識。赤い縁取りがあってなかなかオシャレなデザインだが、意味が分からない。

何だろう・・・。×は禁止のサインかな。赤いスキー板のようなものは線路かな。

これは運転手に何かをしてはならないと伝える標識かな。一体何を禁止しているのだろう。それとも注意喚起の標識かな。どんなことに注意せよ、なんだろう。

分からない・・・。



「建築とは何か 藤森照信の言葉」

2011-06-07 | A 読書日記


塩尻の「えんぱーく」にて

 藤森さんは建築家を赤派と白派にスパッと分けてみせた。このことについては既に書いたが、再度取り上げておく。藤森さんの定義によれば物の実在性を求めるのが赤派で、コルビュジエを祖とする。抽象性を求めるのが白派でミース・ファン・デル・ローエが祖。

藤森さんの言葉をメモしながらこの本を読んだ。

巴型プラン:そうか、代々木体育館は確かに巴型だ。

木造ミース:カフェバロの外観(テラス側)の印象はまさに木造ミース。上手い表現だ。

ものの正統性の根拠は歴史にしか、時間の流れにしかありません。確かに。内藤廣さんの目指す建築もこの辺を拠り所としているのだろう。

・オペラ座への回帰としての「まつもと市民芸術館」主ホールの空間構成。

・科学・技術という裸体に木と土と石の織物を着せる。科学・技術を自然が包む。藤森自身さんが手掛ける建築を評して。科学・技術を自然が包む、かなるほど!

 


整形外科のピクトサイン

2011-06-06 | A あれこれ


『ユニバーサルデザインとはなにか バリアフリーを越えて』古瀬敏 編著/都市文化社選書(1998年発行)

 今では「ユニバーサルデザイン」はよく知られた、馴染みのあることばになりました。UDなどと表記されることもあります。ユニバーサルデザインという考え方が提唱され始めたころは、何それ? バリアフリーとはどう違うのか、という疑問もあったようです。そのころにはこんな本も出版されました。


「ゆりかもめ」 新橋駅

何年か前、韓国旅行をした際、ソウルの地下鉄では駅をアルファベットと数字の組み合わせで表記していることを知りました。「あ、いいシステムだな」とその時思ったことを覚えています。ハングル文字の読めない人にも分かりやすいですから。そう、これこそユニバーサルデザインなんですね。駅名ではなく、アルファベットと数字を覚えるだけで、乗り降りする駅が分かります。このシステムは東京の地下鉄などにも導入されています(写真)。




さて、本題です。今回取り上げるのはこの標識です。これはなんでしょう・・・。

これは総合病院の整形外科の診察室前の壁などに取り付けられています。ポキっと骨が根もとから折れている様子をデザインしたピクトサインです^^。

大きな総合病院では一体どこに行けばいいのか分かりにくいですね。もっとも最近では、分かりやすい総合案内板がエントランスホールに設置され、各階のEVホールなどにも案内板が設置されるようになって、改善されてきてはいますが。廊下の床面にずっと線を引いてあるところもあります。例えば黄色い線を辿っていくと、自然に目的の場所に到達できるという、いいアイディアです。

でも診察室の入口の表記が「整形外科・診察室」などのような漢字表記では、視力や判断力の衰えた高齢者や小さな子どもには分かりにくいですよね。漢字の読めない外国人にも。そこで、ユニバーサルデザインの考え方に基づいてこのようなサインが提唱され、採用されたというわけなんです。これなら分かりやすいし、覚えやすいですよね。

すべての診療科がこのような分かりやすくて覚えやすいビジュアルサインになれば、いいですね・・・。


161 曲線美

2011-06-05 | A 火の見櫓っておもしろい

 
161 塩尻市大門の火の見櫓

 櫓の絞り込みのフォルム、柱の曲線がなめらかで美しい。 脚間寸法を実測すると約4.5メートル、写真にスケールをあてて総高/脚間寸法を求めると約3.3だった。同様の方法で逓減率を求めてみた。遠近効果を考慮していないが、約33%だった・・・。



見張り台の手すりが丁寧につくられている。不要になった半鐘は櫓の中間部に移され、屋根の下にはサイレンのみ取り付けられている。やはりスピーカーは邪魔、火の見櫓には似合わない・・・。


 


松本市白板の道祖神

2011-06-05 | B 石神・石仏







 松本駅の隣、北松本駅のすぐ近くに祀られている道祖神。 自然石にバランスよく納めている。男神は盃を手に持ち、女神は提子を下げ、反対の手を相手の肩にかけている。平安貴族の衣裳、スレンダーな立ち姿の抱肩祝言像。

江戸時代にはこの地に藤沢周平が描き続けたような市井の人びとの暮らしがあり、折に触れてこの道祖神に手を合わせていたに違いない。