透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

215 辰野町横川の火の見櫓 2

2011-11-13 | A 火の見櫓っておもしろい

 ① 
215

 ②

 ③

 ④

 ⑤
撮影110814

■ 国道153号線から横川川沿いに川島小学校までおよそ3km、山あいの集落に火の見櫓が4基あることを先日知りました。今日(8月14日)の早朝、火の見櫓巡りに出かけてきました。この火の見櫓は消防団の屯所、車庫とともに豊かな緑を背に立っています。

櫓の立ち姿、太すぎず細すぎず、すうっと上方に伸びるようなフォルムが美しいです(①、②)。

屋根と見張り台の大きさのバランスは適度、屋根の勾配も反りも好ましい。屋根材は色からして銅板かもしれません。見張り台の下の部分(④)に構造的にはあまり意味がないと思われる小さなブレースが各面2つずつ入っています。凝った造りですが、もっとすっきりしているのが私の好みです。

脚部。櫓の一般部分のようにブレースが入っています。櫓の内部に梯子を付ける場合は櫓下端(脚部)がブレースでは消防団員が上り下りするのに困りますが、このように踊り場まで櫓の外に梯子が付けられている場合は支障はないです。でもやはりきちんと脚部としてのデザインを施して欲しいところです。

近所の方に今でも半鐘を叩いているとお聞きしました。 拍手! 


 


214 辰野町横川の火の見櫓 1

2011-11-13 | A 火の見櫓っておもしろい

 
214




火の見櫓1   撮影110814

 辰野町。天龍川の支流、横川川(よこかわがわ)沿いに民家が点在し、火の見櫓が何基か立っています。のどかな田舎の風景に火の見櫓がとてもよく似合っています。

見張り台から確認できること、半鐘の音が届くこと。このふたつの条件を共にカバーすることができる範囲が地域防災の単位。この防災単位をリンクさせて防災ネットワークが構築されていたんですね。横川川沿いの集落にはこのことを実証するかのように火の見櫓が立っています。

今回取り上げるのは横川川沿いの1基目の火の見櫓です。例によってまずは櫓の立ち姿。実に美しいカーブで櫓が上方へ絞り込まれています。理想的なフォルム、と評していいでしょう。

次は屋根と見張り台のデザインとバランスです。両者のバランスは決して悪くありませんが、見張り台がゴチャゴチャしているという印象です。四隅の面取りと手すりのデザイン過多が、その原因ではないかと思います。もう少しシンプルなデザインが私の好みです。

次は脚部です。残念なことに脚部としてのデザインが施されていません。櫓の部分と同様にブレースが付けられているのは残念です。

以上のことからこの火の見櫓の評価は次の通りです(上の各写真に対応しています)。

1 櫓のプロポーション ★★★★★
2 屋根・見張り台の美しさ ★★★★
3 脚の美しさ ★★★




櫓に「辰野町 第二分団」と切り文字で表示されていました。


「オーケストラ!」

2011-11-12 | E 週末には映画を観よう


パンフレット(部分)

 塩尻の東座で行われたカフェ・シュトラッセ 10年目の映画祭で「オーケストラ!」を観た。

かつてロシアのボリショイオーケストラで主席指揮者だったアンドレは、今は劇場清掃員。彼は30年前、ユダヤ系演奏家たちの排斥を拒絶して解雇されたのだった。ある日彼が掃除中に偶然目にしたのはパリ・シャトレ座からの出演依頼のファクスだった。彼はかつての仲間を集めて偽のボリショイオーケストラを結成してパリで「なりすまし演奏」をしようと考えた・・・。

この映画はラストまでコメディなのか・・・。そう思いながら観ていたが、それは「心震え、感動のラスト」のためのちょっとオーバーな演出だった。

チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。リハーサルなし、楽器も現地調達。ぶっつけ本番の演奏の始まりはバラバラ。昔の仲間たちはタクシー運転手、ポルノ映画の効果音担当などをしてかろうじて生計をたてているのだからそれは当然。だが彼らは次第に奇跡のハーモニーを奏で出す・・・。ソリストの渾身の演奏が彼らの演奏家魂を甦らせたのだ。

アンドレがソリストに指名した美人バイオリニストはフランスで両親を知らずに育った。何故アンドレは彼女をソリストに指名したのか?演奏中に明らかにされる過去の出来事。見事な演出だ。

素晴らしい演奏、感動のラストに涙、涙だった。

カフェ・シュトラッセのふたりのベストチョイスに拍手、そして感謝。 


 


「個人美術館の愉しみ」を読む

2011-11-10 | A 読書日記



 赤瀬川原平さんは多才な方だ。尾辻克彦という筆名で書いた『父が消えた』という小説で芥川賞を受賞しているし、流行語にもなった『老人力』という本も書いている。前衛芸術家としても有名だし、写真集も出している。

また、路上観察学会会員でもあるし、藤森照信さん率いる縄文建築団の一員として藤森建築の施工にも参加している。赤瀬川さんは藤森さんが設計したニラハウスの住人。

『個人美術館の愉しみ』を買い求めた。北杜夫作品を読み続けているが、ちょっと寄り道をする。

個人美術館について、一人の作家だけの美術館と一人の蒐集家による美術館と、二通りの意味を持つとカバー折り返しに説明がある。本書には赤瀬川さんが選んだ個人美術館46館の、美術館そのものについて、作品についての評論が収録されている。東海道新幹線のグリーン車の座席の背に挟んである「ひととき」という雑誌に連載された「個人美術館ものがたり」をまとめたものだという。

美術作品を取り上げた新書は多いが、本書のように図版がすべてカラーで載っているものは少ないのでは(カラー図版342点!)。展示されている作品だけでなく、美術館の外観、内観の写真が載っているのはうれしい。

さあ、読もう。



北杜夫再読

2011-11-09 | A 読書日記

『黄いろい船』
『どくとるマンボウ青春記』
『どくとるマンボウ途中下車』 
『どくとるマンボウ追想記』
『どくとるマンボウ昆虫記』
以上読了。

今回は「航海記」を外そうと思っていたが、読んでおくことにした。やはり「どくとるマンボウ」シリーズで「航海記」は外せない。

  

 『マンボウ雑学記』 以前この新書を手にしたとき、岩波新書も変ったものだと思った。「はしがき」に北杜夫は次のように書いている。**これは伝統ある「岩波新書」にはふさわしくない本である。むしろ、中学生や高校生むきのエッセイといってよい。**

内容は総じて難しくて対象が中高生かどうか。著者の謙遜もあるだろう。

『どくとるマンボウ昆虫記』は岩波新書、いや中公新書でもよいかもしれない。相当詳しく昆虫のことが書かれている。

**ある年の夏の終り、私は燕岳(つばくろだけ)から大天井へゆく尾根道にねそべっていた。すでに豊かだった夏は移ろうとしていた。斜面に残雪もなく、華やかだった花畠にもかげりが見えていた。それでもハクサンフウロの桃色の花は今を盛りで、その色彩の中から高山の蝶たちがとびたち、また花の間におりていった。** 

自然科学を扱った新書には出てこないような文学的な表現に続き、次のようにチョウの名前がいくつもでてくる。

**地味なジャノメチョウの仲間のベニヒカゲやクモマベニヒカゲが、最後の享楽に酔っていた。(中略) スピード狂のタテハチョウの仲間でも、コヒオドシは特別せっかちだ。彼女は岩の上にとまり、二、三度翅を開閉させると、もう電光形に空をきってどこかへ消えていってしまう。次には同類のクジャクチョウが同じ身ぶりをした。**(157頁)

北杜夫は私のような昆虫の名前を全く知らない者とは違った景色を見ていたんだな、と思う。

「航海記」を読む前に1冊寄り道をしよう。今日、その本を買い求めなくては・・・。


 


213 飯田市八幡町の火の見櫓

2011-11-07 | A 火の見櫓っておもしろい

 
213 

 
写真 ヤグラーTさん提供

 調べてみると、飯田方面にはこのような寸胴型の火の見櫓があるようだ。水平ブレースを入れてあるから、梯子は櫓の外に設置してある。上部は籠?(名称が分からない)がついている。恐怖感を和らげる効果があるだろう。

下の写真を見ると古そうだが、いつ頃建設されたんだろう。飯田方面へ火の見櫓観察に出かけなくては。

明後日(11月9日)は119ということで、秋の全国火災予防運動が始まる。消防団員が半鐘を叩いているところを撮りたいな・・・。


 


小さな秋

2011-11-06 | A あれこれ


秋のフォトアルバム   松本 111106 

「とにかく君は、こんな記憶の断片を気紛れに抱え込んでおくべきじゃないと思う」
「記憶の断片?」
その言葉だけを拾い出し、そのまま繰り返した。

「余白の愛」 小川洋子






池田町正科の石神、石仏

2011-11-06 | B 石神・石仏

  

 安曇野では道祖神に並べて二十三夜塔を祀ってあることが多いです。二十三夜塔は道祖神より大きな石のことが多く、目立ちます。この道祖神と二十三夜塔は池田町正科のユニークな火の見櫓の近くの路傍に祀られています。

十六、十七、十八、・・・二十一、二十二、二十三、二十六などの月齢に応じた月待塔が建てられたということですが、安曇野では二十三夜塔が最も多いとのことです。資料()によると、月は勢至菩薩の化身と信じられていたそうで、二十三夜塔は勢至菩薩を本尊として祀られたことから最も広まったのだそうです。

昭和の初期までは二十三夜講がそれぞれの地区で行われていたそうですが、今は行われていないので、二十三夜塔って何?ということになるんですね。私も資料(*)を読むまではよく知りませんでした。

道祖神のことだけでなく、月を愛で、月を祈りの対象にしてきた昔の人たちが残した二十三夜塔などの文化財のことも載せたいと思います。


『安曇野 道祖の神と石神様たち』西川久寿男/穂高神社 

**菩薩とは菩提薩埵(ぼだいさつた)の略。菩提は悟り、薩埵は衆生(この世のすべての生き物)を示し、菩薩は悟りを求めて修行している仏のことをいう。自ら修行しつつ、人びとを救済する役割を果たす。**と雑誌「一個人 №109」の仏像特集記事に出ています。


212 安曇野市穂高の火の見櫓

2011-11-06 | A 火の見櫓っておもしろい


 
212  旧穂高町耳塚の火の見櫓 道路沿いに消防団詰所と仲良く並んで立っている。



見張り台の半鐘は取り外され、替わりにスピーカーが取り付けてある。屋根の上の矢羽根はどこへ向けてあるのだろう・・・。





道路にはみ出さないように円形の踊り場を一部カットしている。これは珍しい。



背の高い火の見櫓だが、脚部が心もとない。



210 北安曇郡池田町の火の見櫓

2011-11-05 | A 火の見櫓っておもしろい

 
210





池田町池田の火の見櫓 寸評

3角櫓に6角屋根・見張り台、普通のかたち。
避雷針に2段の巻きひげ、おもしろい。
見張り台の手すりのシンプルデザイン、好ましい。
ホースを引きあげる滑車、ポエティック。
リング式ターンバックル、櫓にふさわしい。
櫓すっきり、脚部すっきり。



北杜夫再読

2011-11-04 | A 読書日記

『黄いろい船』
『どくとるマンボウ青春記』
『どくとるマンボウ途中下車』 
『どくとるマンボウ追想記』

以上読了。
次は
『どくとるマンボウ昆虫記』角川文庫


奥野健男氏はどくとるマンボウもので「追想記」と「昆虫記」、それから「航海記」をいかにも北杜夫らしい作品として愛好すると書いている。今回は「航海記」は外した。外した理由は特にない。




 


209 池田町正科の火の見櫓

2011-11-03 | A 火の見櫓っておもしろい


209







オーソドックスなタイプで形やプロポーションが洗練されていて美しい火の見櫓と、類例を見たことのない珍しい形の火の見櫓。見て感動する火の見櫓はこのふたつに大別できます。今回紹介する火の見櫓は後者、今まで見たことのない形の火の見櫓です。

カフェ バロのミニミニ講座「火の見櫓っておもしろい」に参加していただいた安曇野市のヤグラー・のぶさんのブログ(←クリック)でこの火の見櫓を知りました。所在地は大町市に境を接する池田町の正科地区。近くに国宝の仁科神明宮があります。

2階建の消防団詰所をまたぐ鉄骨の櫓に3角櫓に6角屋根・見張り台の火の見櫓をちょこんと載せています。実に思い切った構成です。火の見櫓をなぜステージの端に寄せたのか、その理由は分かりませんが、中央にあるよりこの位置の方が美しいでしょう。

近所の方から、20年くらい前にはじめからこの形で建設されたとお聞きしました。なぜなのかよくわかりません。隣はゲートボール場で、火の見櫓を建てるスペースくらいありそうですから・・・。最近塗装をしたそうです。これが錆びた火の見櫓だったら、美しくもなく、がっかりしたと思います。

後方の高い山々が冠雪したらまた出かけたいと思います。

いや~、火の見櫓って本当におもしろいです。


追記140427 撤去されるかもしれない。
追記160606 既に撤去されている。


『「いき」の構造』岩波文庫

2011-11-03 | A 読書日記




 九鬼周造の『「いき」の構造』をしばらく前に講談社学術文庫で読んだが岩波文庫も買い求めた。岩波文庫には「風流に関する一考察」と「情緒の系図」が併収されている。「風流」とか「情緒」といった、「いき」と同様に曖昧な概念についてどのように論じているのか興味がある。ここしばらくは北杜夫の作品を続けて読むことにしているが、その後読んでみたい。

ところで、岩波文庫の解説を多田道太郎氏が書いているが、そのなかに**『「いき」の構造』は一人の女性を論じたものではもちろんない。しかし私は、著者が心の傷の向こうに、描かれていた女性の姿のあったことを、疑うことはできない。**とある。(225頁) 

この部分をよんで私は「やはりそうか」と思った。私もそのように感じて、恋愛論として読むこともできるだろう、と書いたのだった。(過去ログ) 多田氏は九鬼周造が道ならぬ恋に傷ついた母親を見ていること、九鬼自身も友人の妹との恋に傷ついていることを指摘したうえで先のように書いている。 経験を俗な恋愛論ではなく、それをベースに哲学したところが九鬼周造という人の凄いところか・・・。