線描2022.10.19 着色10.20
■ 中遠景だけの風景って描きにくいです(個人の感想です)。風景の構造に奥行きがなくて、辰野町横川のスケッチのような構成の魅力に頼ることができないので。
『会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション』三木那由他(光文社新書2022年)
■ 会話についての論考、会話論。
第1章には次のような見出しの節がある。「約束事の形成としてのコミュニケーション」「心理や行動の操作としてのマニピュレーション」 著者が挙げる会話のキーワードはこのコミュニケーションとマニピュレーション。
日常、何気なくしている会話とはいったい何なのか。本書で著者は人気漫画や小説で交わされる会話を取り上げて、それが実は複雑で奥深い営みであることを説いている。
インスタグラムを始めたら、文章を書くことがだんだん億劫になってきてしまった。こうしてブログからインスタに移っていく人が少なくないのではないか。これはまずい・・・。
■ 辰野町へ「火の見櫓のある風景」のスケッチに出かけた。少し早めの食事をするために大きな茅葺の民家、「かやぶきの館」へ。
屋根の棟、千木が奇数の35個。久しぶりの繰り返しの美学。
薬膳カレー(税込み 800円)
辰野町横川にて 202.10.19
■ 久しぶりの「火の見櫓のある風景」スケッチ。横川川の左岸側は河岸段丘になっていて、高低差のある集落が形成され、魅力的な景観になっている。
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■ 大学の研究室の3年ぶりのリアルOB会に参加するため16日に東京へ(2020年2月以来)。塩尻駅7時18分発のあずさ8号で東京へ向かう。
10時1分、定刻通り東京駅に到着。駅舎(写真左)のドーマーの壁は天然スレート(粘板岩か)うろこ張り。いや、四角形のスレート板の下側を隅切りしているだけなので単なる一文字張りとすべきだろう。右は宮城県の女川の民家の外壁(1979年3月撮影)。片側を半円形に加工した天然スレート板を張っているので魚のうろこのように見える。正真正銘のうろこ張り(分類上は一文字張りに含まれる張り方)。
東京駅に着いて向かった先は丸の内オアゾの丸善。読みたい本を3冊買い求めて、オアゾ4階のカフェ、M&C Caféでコーヒーを飲みながら拾い読み。
12時近くになって、山手線で東京駅から目黒駅へ。東急目黒線に乗り換えて、奥沢駅で下車。駅近くのOB会の会場へ向かう。コロナ禍のため大学の同窓会館の使用許可がまだ下りないとのことで、今回は某レストランが会場。1時から3時まできっちり2時間のOB会。
司会者から挨拶を求められたので、近況報告として日経新聞の文化面に私の記事が掲載されたこと、長年の願いであった『源氏物語(現代語訳)』を読了できたことを話した。
久しぶりに会う学友たち。みんな元気そうで何より。 Mさんに名刺を渡す(183枚目)。
OB会がお開きになり再び目黒駅へ。待ち合わせした友人と東京都庭園美術館(過去ログ)へ。
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1933年竣工の朝香宮邸は1983年から美術館として一般公開されている。美術館そのものが鑑賞対象で、部屋ごとに異なるデザインの照明器具をみるだけでも楽しい。
ラジエター・カバーも芸術品。カバー両側の蕨手のような模様は何をモチーフにしているのだろう・・・。
撮影OKの展示作品。
新館の天井 ボールト形のPC版によるリズミカルな構成。ルイス・カーンのキンベル美術館を想起させる。スチールの梁と柱、これで構造的に成立するということは直感的には分からない。きっちり構造解析して得られたデザインなのだろう。
新館のカフェ、Café TEIENのテラス席で語らう。閉館時間6時前、すっかり暗くなった街、歩いて目黒駅近くのレストランへ移動、「共感会話」しながらゆっくり食事。楽しい時間が過ぎるのは早い。友人と8時半ころ別れて新宿駅へ。最終のあずさ55号は定刻9時発車。日付が変わるころ帰宅。
楽しく有意義な秋の一日であった。
■ 『一首のものがたり 短歌(うた)が生まれるとき』加古陽治(東京新聞2016年)を読んだ。著者の加古陽治さん(東京新聞編集委員)が講演「文芸取材の新流儀」(*1)で紹介された本。
背景を知ることで歌の理解が深まる、という講演での加古さんのことば通り、本に掲載されている短歌27首の全てに作者の生きざま、人生そのものが反映されている。加古さんは丹念に取材して歌の背後のものがたりを明らかにしている。
講演でも取り上げられた恋の歌。 あの夏の数かぎりなきそしてまたたつた一つの表情をせよ 小野茂樹『羊雲離散』
この歌の作者、小野茂樹さんは中学一年生の時に雅子さんと出会う。同級生の二人は同じ高校に進み、ともに校友会誌の編集委員になる。お互いに惹かれてつき合うようになったが、雅子さんは就職した会社の男性から求婚されて結婚してしまう。小野さんの淡い恋は終わってしまった・・・。
それから8年後、小野さんは自分の結婚を報告するために雅子さんの家を訪ねる。その後二人は喫茶店などでひそかに会い続ける。そして、結婚しようと、小野さんは雅子さんに迫る。雅子さんは二児を残して家を出る。二人はそれぞれの伴侶と離婚して、結婚する。
人生の大きな軌道修正だ。人生は一度きり・・・。
二人は娘を授かり穏やかで幸せな日々が続く。だが4年後、小野さんは交通事故で亡くなってしまう・・・。上掲歌はふたりが再び会いはじめたころにできたとのこと。高校生の頃にぼくだけに見せた表情をも一度して欲しい、と詠った歌。
この本には俵 万智さんの「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 も取り上げられていて、この歌にまつわるものがたりもが収録されている。
本の帯に**著者が掘り起こした物語に何度も胸が熱くなりました。**という俵 万智さんのことばが載っているけれど、僕も朝カフェで読んでいて、何回もウルっと来た。
ちなみにベストセラー『サラダ記念日』を世に出した長田洋一さん(当時河出書房新社『文藝』の編集長)が本の寺子屋(*2)のナビゲーター。
*1 塩尻のえんぱーくで9月18日に行われた「本の寺子屋」の講演会
*2 次回10月23日の本の寺子屋は校條 剛さん(評伝作家・「小説新潮」元編集長)の講演会 演題は「作家という生き方―佐木隆三、津本 陽、藤田宣永ら」
■ 今日10月14日は鉄道の日。明治5年(1872年)の10月14日、日本で初めての鉄道が新橋―横浜間で運行を始めたことに因んで。また、今年は松本の郊外を走る上高地線(松本―新島々)が全線開通してからちょうど100年という節目の年。「上高地線100年」を記念する企画展が松本市文書館で開催されていることを知り、出かけて見てきた(会期は10月16日まで)。
△松本市文書館外観
△会場には戦前の貴重な資料も展示されていてた。
動く鉄にも興味があるけれど、より興味があるのは動かない鉄だ。鉄分摂取の効率は私の場合、動かない鉄の方が高い。展示されていた1枚の資料、「松本市勢」に火の見櫓が写っていることに気が付いた。やぐらセンサーは高感度を維持し続けている。
△松本商工会議所が昭和5年(1930年)に発行した松本市勢(下のモノクロの資料)掲載されている写真に火の見櫓が写っている。
△上掲した松本市勢発行年の1930年(昭和5年)に撮影されたであろう繩手通りの写真に火の見櫓が写っている。これは貴重な写真だ。屋根がきちんと写っていないが、おそらく6角形であろう。3柱66型で脚は補強のアーチ部材が中留めされたショートアーチ(SA)だと写真から判断できる。見張り台の透け感が無いのはなぜ? 小さな小屋があるのかもしれない。
△信濃毎日新聞の18年4月28日付朝刊に掲載された大正時代の縄手通りを撮影した写真(松本市博物館所蔵か)。
木造と思われる火の見櫓が写っている。撮影者は火の見櫓にそれ程注目していなかったのかどうか、てっぺんまできちんと写していない。火の見櫓の位置は現在の交番のあたりか?
『時計遺伝子 からだの中の「時間」の正体』岡村 均(講談社ブルーバックス2022年)
■ 24時間の生体リズムはどこでどのように起き、どのようにからだの全ての細胞に伝わるのか・・・。実に精緻なシステムがからだの中に構築されていることを本書で知った。
本書の章立ては次の通り。章題から本書の内容の見当がつくと思う。
第1章 からだのリズムを作る時計遺伝子
第2章 生体リズムはどこで作られるのか?
第3章 時間情報の送信ルートを特定せよ
第4章 時計遺伝子は細胞分裂の時間も決める
第5章 光と時計遺伝子の深い関係
第6章 生活習慣病と時計遺伝子
第7章 時差ぼけはなぜ起こるのか?
第8章 視交叉上核の謎を解く
第9章 睡眠と時計遺伝子
第10章 なぜ生物は体内時計を持つようになったのか
全身の生体リズムを決める時計中枢が脳内の視交叉上核であること、からだの情報インフラである自律神経系によって「視交叉上核」の時間情報がさまざまな臓器に伝えられる。臓器の一つ、副腎が時計情報を受けて糖質コルチコイドというホルモンを分泌、血流によってからだの隅々の細胞まで時計情報が伝えられる。ざっくりと時間情報の伝達フローを書くとこのようになるが、時間情報伝達は実に複雑。そのシステムが精緻に構成されている。本書でこのような「なるほど!」を知ることができただけでも良かったと思う。
視交叉上核は両眼の網膜から出ている視神経が左右交叉する視交叉の直上にあって、眼から脳内に入ってきた光の情報が真っ先に伝わる場所。視交叉上核は強い自律性を持っているが、朝の自然光が眼に入ると、視神経で信号化された情報が視交叉上核に送られて、時計情報が補正され、からだの隅々の細胞まで伝わり、朝が始まるということだ。
そもそもなぜ生物は体内時計を持つようになったのか・・・。
生体の日周リズムは地球の自転による昼と夜の繰り返し、24時間のサイクルに同調してできたのだろうと、直感的には理解している。でもそれはなぜか、なんのために・・・。本書で、著者の仮説が説明されている。
太陽光の紫外線は細胞分裂に影響を及ぼす。オゾン層が形成される前、生命体は紫外線を避けて深海に潜って細胞分裂をしていた。この繰り返しの過程で体内時計の仕組みを得ることにいなったのではないか。そのことで光が届かない夜がいつ来るか予測できるようになり、細胞分裂を夜することで、多くの栄養が得られる浅い海で継続的に活動することができるようになった。なるほど!説得力のある仮設だ。
もちろん現在も身体と体内時計と細胞分裂はリンクしている。規則正しい生活はからだのリズムを整え、健康に良い効果をもたらす。現代は真夜中にコンビニで買い物をしたり、夜遅くまでスマホやパソコン、テレビを見る生活が一般化しているが、これが生体のリズムの外乱となる。生体リズムの乱れが様々な病気を引き起こす。このことが実証的に示されている。毎日規則正しい生活をするように心がけなくては、って今回はずいぶん真面目な締め。
(再)諏訪郡富士見町富士見 4柱44型トラス脚 撮影日2022.10.10
屋根の形が整っていて実に美しい。
上の写真では分かりにくいが、床の開口上部に手すりを設置して落下防止策を講じている。
櫓の中間にある踊り場にも半鐘を設置してある。水平構面の4隅に火打ちを設置して構面内変形を防いでいる。
トラス脚 これが本来のトラス構造。
昭和29年4月1日竣工(設置されている銘板による)
(再) 諏訪郡富士見町落合 3柱〇3型ブレース囲い(BC)脚 撮影日2022.10.10
■ 国道20号添いに立っているからここを通る度に目にする。既に観察しているが昨日再び観察した。
隅切りをした3角形の見張り台。梯子の開口部のところだけ半円状に広げている。すのこ状の床の構成の仕方に注目。陣笠のような小さい屋根がちょこんと載っている。
脚部 櫓の一般部分と同じ構成で脚無し。ブレース囲いと名付けている。
(再)火の見櫓のある風景 諏訪郡富士見町落合 4柱6〇型T脚 撮影日2022.10.10
切妻屋根がリズミカルに並び、その奥にすくっと火の見櫓が立っている。右側手前に屋外消火栓、色を添える秋の花。カーブしながら奥に伸びる生活道路。好きな風景。
1395 諏訪郡富士見町境 火の見梯子控え柱付き 撮影日2022.10.10
■ 梯子残が鋼管だから昇り降りするとき手で掴みやすい。山形鋼より好ましい。