永江朗著「不良のための読書術」(ちくま文庫)を、古本で買ったので、パラパラとめくっておりました。スラスラと読める分かりやすさがありまして、ちょっと気にしないとサラサラと読む先から忘れていってしまいそうな、おかしな感じを抱きます。とりあえず、お気に入りの箇所がありましたのでご紹介。
「それでもやっぱり朝日新聞」(p60~62)という文。ちょうど2ページほどの文なのですが、「ぼくは朝日新聞の大ファンである。」とはじまります。その滑り出しは引用しておきましょう。
「ぼくは朝日新聞の大ファンである。朝日新聞ほど出版広告が充実した新聞はほかにないからである。出版広告といしいひさいちの漫画だけが朝日新聞のとりえだ。いちど他の新聞に変えたことがあったけれども、出版広告が少なくて困った。」
ちなみに、単行本は1997年に発売とありますから、ちょうど10年前に書かれた文なのでした。いまも永江さん朝日新聞を購読してるのかなあ。
というのも、最後の言葉が気になるからでした。
「そんなこんなで、朝日新聞のファンは多い。どうせなら政治や経済の記事は毎日新聞や日経新聞にまかせて、朝日新聞は出版広告だけを載せるようにしてくれると、ぼくにはたいへんありがたいのだけれども。」
出版広告の朝日新聞という視点。
そういえば、永江さんは編集者からフリーライターへと移られたかたでした。
そこに「正しい朝日新聞の読み方」も書かれております。
「新聞における出版広告の王道は三八というものである『さんやつ』と読む。第一面の下の部分だ。」「まずこの三八の書籍・雑誌の広告を読む。そして二面、三面へとページを繰りながら、主に新聞の下半分を見る。二面以降には全五、半五の大型広告がつまっているからだ。三八には硬くて少部数の本や専門的な雑誌の広告が多く、全五、半五の広告は週刊誌や月刊誌、大手出版社の新刊やベストセラーの広告が載る傾向がある。」
ここで、思い浮かぶのは石原千秋著「大学生の論文執筆法」(ちくま新書)でした。
「文科系の研究者の世界では、『鉄のトライアングル』があるようだ。『東大、朝日新聞、岩波書店』である。これらを結びつけているのは共産党、あるいは少し古い左翼思想である。たとえば、『朝日新聞』に登場するのは圧倒的に東大教授と東大出身者が多い。この『鉄のトライアングル』が日本の『言論界』では『権威』となっている。それに寄りかかり、信奉するのが『権威主義』である。谷沢永一という国文学者は、『朝日新聞』のステイタスを決めているのは記事ではなく、朝刊の第一面の下に掲載されている本の『三八広告』だ、という面白いことを言っている。『三八広告」という呼び方は、活字三段分のスペースを八つに区切ったところから来ている。そこに、文科系の専門的な書籍の広告が載るのは『朝日新聞』しかない。・・・『朝日新聞』をやたらと批判する保守系の出版社の編集者でさえ、『「朝日新聞」に広告を出したときが一番本が売れる』と言うのだから、出版文化における『朝日新聞』の力は絶大である。そして岩波書店は、その『朝日新聞』の『三八広告』欄では、必ず一番右端の特等席を占めるのである。『鉄のトライアングル』たるゆえんだ。もちろん、東大教授にとって岩波書店は特別な出版社だ。ほかの出版社の編集者が東大教授に執筆の依頼に行くと、『私は岩波書店からしか、本は出しません』と言われたというような話は、ごろごろ転がっている。・・・」(p125~127)
内容は別で最初の言葉、永井朗の「ぼくは朝日新聞の大ファンである」。
石原千秋の指摘、東大・朝日新聞・岩波書店と3つの「鉄のトライアングル」。
これをどうクリアする?
「それでもやっぱり朝日新聞」(p60~62)という文。ちょうど2ページほどの文なのですが、「ぼくは朝日新聞の大ファンである。」とはじまります。その滑り出しは引用しておきましょう。
「ぼくは朝日新聞の大ファンである。朝日新聞ほど出版広告が充実した新聞はほかにないからである。出版広告といしいひさいちの漫画だけが朝日新聞のとりえだ。いちど他の新聞に変えたことがあったけれども、出版広告が少なくて困った。」
ちなみに、単行本は1997年に発売とありますから、ちょうど10年前に書かれた文なのでした。いまも永江さん朝日新聞を購読してるのかなあ。
というのも、最後の言葉が気になるからでした。
「そんなこんなで、朝日新聞のファンは多い。どうせなら政治や経済の記事は毎日新聞や日経新聞にまかせて、朝日新聞は出版広告だけを載せるようにしてくれると、ぼくにはたいへんありがたいのだけれども。」
出版広告の朝日新聞という視点。
そういえば、永江さんは編集者からフリーライターへと移られたかたでした。
そこに「正しい朝日新聞の読み方」も書かれております。
「新聞における出版広告の王道は三八というものである『さんやつ』と読む。第一面の下の部分だ。」「まずこの三八の書籍・雑誌の広告を読む。そして二面、三面へとページを繰りながら、主に新聞の下半分を見る。二面以降には全五、半五の大型広告がつまっているからだ。三八には硬くて少部数の本や専門的な雑誌の広告が多く、全五、半五の広告は週刊誌や月刊誌、大手出版社の新刊やベストセラーの広告が載る傾向がある。」
ここで、思い浮かぶのは石原千秋著「大学生の論文執筆法」(ちくま新書)でした。
「文科系の研究者の世界では、『鉄のトライアングル』があるようだ。『東大、朝日新聞、岩波書店』である。これらを結びつけているのは共産党、あるいは少し古い左翼思想である。たとえば、『朝日新聞』に登場するのは圧倒的に東大教授と東大出身者が多い。この『鉄のトライアングル』が日本の『言論界』では『権威』となっている。それに寄りかかり、信奉するのが『権威主義』である。谷沢永一という国文学者は、『朝日新聞』のステイタスを決めているのは記事ではなく、朝刊の第一面の下に掲載されている本の『三八広告』だ、という面白いことを言っている。『三八広告」という呼び方は、活字三段分のスペースを八つに区切ったところから来ている。そこに、文科系の専門的な書籍の広告が載るのは『朝日新聞』しかない。・・・『朝日新聞』をやたらと批判する保守系の出版社の編集者でさえ、『「朝日新聞」に広告を出したときが一番本が売れる』と言うのだから、出版文化における『朝日新聞』の力は絶大である。そして岩波書店は、その『朝日新聞』の『三八広告』欄では、必ず一番右端の特等席を占めるのである。『鉄のトライアングル』たるゆえんだ。もちろん、東大教授にとって岩波書店は特別な出版社だ。ほかの出版社の編集者が東大教授に執筆の依頼に行くと、『私は岩波書店からしか、本は出しません』と言われたというような話は、ごろごろ転がっている。・・・」(p125~127)
内容は別で最初の言葉、永井朗の「ぼくは朝日新聞の大ファンである」。
石原千秋の指摘、東大・朝日新聞・岩波書店と3つの「鉄のトライアングル」。
これをどうクリアする?