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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ソウルガールズ」

2014-07-27 22:26:49 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「ソウルガールズ」は2012年のオーストラリア映画である。
ジャケットは女性黒人ソウルグループのイメージでオーストラリア映画とは意外である。
1960年代後半の時代背景で、オーストラリアの先住民族アボリジニ初の女性ボーカルグループがソウル・ミュージックを歌いながら、ベトナム戦争の戦地を慰問する。

いかにもB級映画らしい展開で、いきなりCCRの音楽で始まる裏で流れる音楽が抜群にごきげんだ。

1968年、オーストラリア。ゲイル(デボラ・メイルマン)、シンシア(ミランダ・タプセル)、ジュリー(ジェシカ・マーボイ)の三姉妹は、幼い頃からアボリジニの居留地でカントリー・ミュージックを歌ってきた。スター歌手になることを夢見ていた彼女たちは、町のタレント・コンテストに出場が決定。コンテストに臨むが、観客は白人ばかりで、居留地から来た三姉妹に勝ち目はない。素晴らしく歌っても、悪意に満ちたコメントで迎えられた上、賞金は下手くそな参加者に与えられた。
ショーの司会者デイヴ(クリス・オダウド)だけが彼女たちの才能を評価するが、観客の冷遇を非難したため、デイヴは仕事をクビになってしまう。職を失ったデイヴは、新聞の切抜きを振り回しているジュリーに引き止められる。ベトナムにいるアメリカ軍のために慰問にいく歌手のオーディションにどうしても参加したいというのだ。

嫌々ながらもデイヴは三姉妹の音楽ディレクター兼マネージャーを引き受けるが、その条件はカントリーをやめてソウル・ミュージックの歌い方を学ぶことだった。その方がアメリカ軍兵士に受ける。そんな中、アボリジニとしての立場を放棄し、オーストラリア社会で白人として生きている従姉妹のケイ(シャリ・セベンズ)も加わり、4人は“サファイアズ”を結成。ソウル狂いのデイヴの熱い指導のもと、“サファイアズ”はベトナムへと向かうが。。。

まずはアボリジニに対する差別ぶりを歌のコンテストで観客に示す。こんなことあったのかと思わせたあとに、1人協力者を映画の中に投入する。不良アイルランド人のデイヴだ。デイヴはソウルを歌わせたら、きっと映えると見抜く。あとはおきまりの成長物語で、ソウルフルな楽しい歌がずっと聴けるのでいい感じだ。

1.アボリジニ
オセアニアの原住民を映画で見るのはアカデミー賞を受賞した「ピアノレッスン」以来だ。あの映画では英国からニュージーランドへ移住する主人公が、現地で不倫する相手がマオリ族である。似たようなものだ。オーストラリアがアボリジニというわけだ。少年のころに、オーストラリアも南アフリカに負けないほどの人種差別の国で「白豪主義」というのは社会の時間に学んだ。1960年代まで続いているということは、すさまじい差別だったのだろう。


2.悲しいうわさ I Heard It Through The Grapevine
デイヴに仕込まれるソウル曲の1つがマーヴィン・ゲイの全米ヒット№1曲「悲しいうわさ I Heard It Through The Grapevine」だ。



69年1月の№1ヒットと記憶していたので、途中でキング牧師 が死去する場面が出た時には、時代設定1年間違っているんじゃないかと思って調べたら、「I Heard It Through The Grapevine」は67年にグラディスナイト&ピップスもシングルを出していたのだ。そうなのか、納得です。
でもこのアレンジなかなかいい。マーヴィンゲイのタッチを泥臭くアレンジしたのがCCRがアルバム「コスモズファクトリー」の中でやっていて、それが一番いいと思っていたが、映画の中で歌われる曲もいい。




3.グループ内の葛藤
従妹のケイは小さいときに、肌が白いということで、アボリジニのからピックアップされ白人に同化する生活をしてきた。本当は一緒にやるつもりはなかったが、ジュリーがベトナムへ行くことを両親が猛烈に反対したので、やむなくケイを誘いに行く。でもこの話ってすごいなあ。アメリカではこんな話あまり聞かない気がするので、1つ利口になった。
でもそのケイと長女との関係がよくない。いったん白人に同化したケイの言うことが気に入らないのでケンカになる。しかも、長女のヴォーカルよりもジュリーのヴォーカルの方がソウルフルでパンチがあるので、長女がリードから外される。そういったグループ内の葛藤がたくさん語られながらストーリーが進む。

グループ内の葛藤を描くのは、ビヨンセ主演「ドリームガールズ」と同じだが、親族なだけに敵対視しない。
流れるムードは全般的にやさしい。


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映画「ダイアナ」 ナオミワッツ

2014-07-16 16:52:27 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「ダイアナ」はナオミワッツ主演で英国皇太子妃ダイアナを演じる作品だ。
ダイアナ妃が亡くなった時は全世界が驚いた。

さすがの英国皇室も、一度は離れたダイアナ妃を葬儀で見送った。2人の息子たちがいじらしかった。
ハロッズの跡取り息子との恋が囁かれていた。2人の関係を追うパパラッチをまこうとしようとして、道路端に追突したという事実は騒がれていたが、パキスタン人の医師との恋は全然知らなかった。映画が始まってから、ずっと2人の恋が語られるので、いつドディが出てくるのかと思っていたが、結局は「当てつけの恋」ということがここでは言いたかったようだ。

フィクションの話と思うが、基調は史実に基づくノンフィクションだと考えた方がいいかもしれない。
そうすると見やすい。

1995年、英国皇太子妃ダイアナ(ナオミ・ワッツ)は夫と別居して3年、2人の王子とも離れ、寂しい暮らしを送っていた。そんなある日、心臓外科医のハスナット・カーン(ナヴィーン・アンドリュース)と出会う。心から尊敬できる男性にやっと巡り逢えたと確信するダイアナ。

BBCのインタビュー番組に出演し、別居の真相を告白、“人々の心の王妃”になりたいと語って身内から非難されるが、ハスナットは彼女を励ましてくれた。1年後、離婚したダイアナは、地雷廃絶運動などの人道支援活動で世界中を飛び回る。自分の弱さを知るからこそ、弱者の心を理解する彼女は、人々を癒し、政治を動かす力も持ち始めていた。一方、ハスナットはゴシップ紙に書きたてられ、彼の一族からも反対される。
ダイアナは、ドディ・アルファイド(キャス・アンヴァー)との新しい関係に踏み出すが……。(作品情報より)

ダイアナ妃は長身である。
彼女が着たドレスと同じデザインの服装で、華奢なナオミワッツは着飾っていた。
それはそれで悪くはない。本物はもっと感情の起伏が激しかった感じがする。

ダイアナ死亡のあとは世界中のパパラッチがものすごい攻撃を受けた。
でもあえてダイアナがあるカメラマンに近づいて、バカンスで遊ぶ自分の姿をうつさせているという話だ。
何じゃいな!といった感じだ。

ナオミワッツファンの自分からすると、本物よりもナオミの方がずっといい。
映画は普通だけど
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映画「オンリー・ラバーズ・レフト・アライヴ」 ティルダ・スウィントン

2014-06-15 09:32:35 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「オンリー・ラバーズ・レフト・アライヴ」は2013年公開のバンパイア映画だ。
バンパイア映画と言いながらも監督はジム・ジャームッシュである。「ストレンジャー・ザン・パラダイス」「ブロークン・フラワーズのような「とぼけた映画」をつくっている彼がメガホンをとるので、なんか違う展開じゃなかろうかと推測する。

実際この映画は普通のバンパイア映画とは違う。極めてスタイリッシュな映像だ。
現代の寂れたデトロイトを舞台にする。夜のムードではあるが恐怖に満ちあふれたスリラーとは言えない。モロッコの猥雑さや荒廃したデトロイトの町の映像がバックに加わり不思議なムードを持つ。

ティルダ・スウィントンジム・ジャームッシュ映画の常連になりつつある。最近では「グランドブタペストホテル」にも主演しているティルダが太古の昔から生き延びるバンパイアを個性的に演じる。ティルダはむしろ40歳後半をすぎて出番が増えている。しかも、ここでは年齢を感じさせないヌードも披露する。これはすごいことだ。最後にこそ狂気の顔を見せるが、それ以外はけだるいムードの演技でジム・ジャームッシュ映画らしいムードを引きだす。

吸血鬼のアダム(トム・ヒドルストン)はギターをはじめ弦楽器なら何でも自在に弾きこなすミュージシャンとしてアンダーグラウンド・ミュージック・シーンで活躍している。

しかしここ近年の自己破滅的な人間たちの振る舞いにアダムは抑鬱を抱えていた。そんなとき恋人イヴ(ティルダ・スウィントン)がデトロイトに住む彼の元を訪れる。
もちろん、彼女も吸血鬼で2人は何世紀も愛し合い、生き続けてきた。久々の再会もつかの間、イヴの破天荒な妹エヴァ(ミア・ワシコウスカ)が突然2人に会いにやってきて3人の運命は、ゆっくりと変わり始める・・・。(作品情報より)

1.永遠の命と血液の乾杯
トム・ヒドルストン扮するバンパイアのアダムはジミーペイジの風貌を思わせる孤高のロック・ミュージシャンだ。頻繁にロックのリズムが流れる。加えてロック好きならアレと思うギターに対するうんちくを語る。何世紀も生き続けている彼は、誰かを襲って血を手に入れるのでなく、病院の医師とつるみ良質な血液を買っている現代のバンパイアだ。
その恋人がイヴだ。何世紀も恋人として愛しあっている。2人はグラスに血を注ぎまったりと飲み続ける。不思議なムードだ。


2.ミア・ワシコウスカ
あのかわいいミアちゃんがここではバンパイアだ。ロック仲間であるイアンがアダムの家に出入りしているので仲良くするが、ミアはうっかりイアンの血を吸ってしまうのだ。血が歯の牙をむき出しにするシーンは今までのミアちゃんとはイメージが違う。てっきりイヴの娘役だと思っていたけど、妹役なのね。


3.デトロイト
デトロイトと言えば自動車不況。でもスリラーには関係ない世界
久々に会った2人がドライブして工場跡の廃墟や劇場の跡地を走り回る。高い犯罪率に自動車不況による工場撤退で、人口は180万人から70万人台まで落ちている。日本と異なりまだ人口が増えているエリアが多いアメリカでは信じられないことだ。何か警鐘じみたものを感じるけど、ドラキュラ映画らしくないところがいかにもジム・ジャームッシュ

ともかく最後のショットで見せるティルダ・スウィントンの表情が一番印象的
これは怖い!
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映画「父の秘密」 テッサ・イア

2014-05-23 22:28:10 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「父の秘密」はメキシコ映画
カンヌ映画祭のある視点部門でグランプリを受賞している。


どぎつい映画である。途中何度も目を伏せた。
DVDなのでストップすることができたが映画館だったらどうだっだのであろう。
気分を悪くして途中退席をする人もいたのではないだろうか?
そのくらいイジメの場面の描写はきつい。

ごく普通の父娘-ロベルト(ヘルナン・メンドーサ)とアレハンドラ(テッサ・イア)は、最愛の妻・ルシアを自動車事故で失い、深い悲しみに打ちひしがれていた。2人は新しい土地でやり直そうと、高級住宅街のプエルト・ヴァラルタを引き払い、メキシコシティへと引っ越してくる。
アレハンドラは新しい学校で受けた尿検査で陽性反応が出てしまい、マリファナを吸っていたことをロベルトに知られてしまう。彼は娘を心配するが「もう吸わない」と約束するアレハンドラに、それ以上の言葉をかけることができない。 「父子関係は順調ですか?」「仲がいいよ」

一方、ロベルトは保険会社で妻の事故について調査を受けるが、事故の日の詳細を尋ねられて、動揺してしまう。 「娘さんが運転を?」「娘は乗っていなかった」

アレハンドラは悲しみから立ち直れない父親を気に掛け、必死に亡き母の代わりを務めようとする。妻の服を着て、大人びた振る舞いをする娘に戸惑うロベルト。 「ママの服を?」「着替える?」

次第に新しい学校生活に馴染み始めるアレハンドラ。ある週末、仲良くなった同級生たちと遊びに出掛け、クラスの人気者であるホセと一夜限りの関係を持ってしまう。行為の一部始終を録画するホセ。
翌日、学校中にその動画が配信されるやいなや、彼らの態度は一変する。ホセに好意を抱いていたカミーラはアレハンドラを激しく罵り、仲間たちと彼女をいじめ始める。 「このアバズレ!」

日々エスカレートしていくいじめ。カミーラたちに髪の毛を切られてしまったアレハンドラは耐えきれなくなり、すべてを捨てて逃げ出そうとする。しかし、いまだ悲しみで心を閉ざし、自身のレストラン経営もうまくいかない父親に余計な心配は掛けられないと思い直した彼女は、いじめられていることを相談もできず、自分一人で耐えることを選ぶのだったが。。。。 (作品情報より)

最初は問題が何もなく映画が流れる。
だるい流れが続く。友人もでき、一緒に開放感あふれる学校生活になれたと思った矢先だった。
気の合った男とやってしまったところを動画にとられて配信されてしまうのだ。

1.動画
韓国映画「母なる復讐」に類似したところがある。
そこではレイプにあった女の子が動画をとられていて、配信するぞと脅されていいようにレイプ犯にもて遊ばれる。

ここでは予告もなく動画を配信されてしまっている。
みんなから白い目で見られて、いじめもうけるし、尻軽女と見られてしまう。
以前だったら8mmカメラをこっそり誰かが映してということだったが
ここでは男がやっている横においてそのまま撮影する。

こんな話は日本でもあるだろう。

2.過酷なイジメ
ここで繰り広げられるイジメはむごい。
まずは尻軽女と見られてから、男仲間が執拗にからかう。嫌なやつらだ。
その後で、自分の彼氏を寝取られたと感じた女の子たちが彼女の髪を大胆に切る。
でも何か強い反発をするわけではない。
誕生日パーティと称して、ケーキを無理やり食べさせる。ケーキを顔に塗りつくす。ひでえ!!!!
史上最高のイジメだ。


でもこれだけでは終わらない。
あまりのむごさに目をそむける。

3.復讐
ネタばれだけど、彼女自らイジメの復讐をしない。親にも言わない。
でも最終発覚する。
そこで出てくるのは父親だ。この気持ちよくわかる。
余計な説明もせずにその復讐劇を映す。無情の響きを感じる。

マイケルフランコ監督インタビューより引用
「学校の世界を映し出すには俗悪と言われようと、徹底したいやらしさが必要でした」
彼女のクラスメートたちは、アレハンドラがいじめに耐え、さらにはそのことを誰にも言わないことを確信していました。彼らは彼女の事情も、その境遇さえも知っていますが、同情する代わりに弱みにつけ込み、いじめはどんどんエスカレートしていくのです。こうしたいじめは、普通のどこにでもある教室で起こっています。メキシコだけではなく、世界のどの国にもいじめのない学校なんてありません。

このいやらしさ尋常ではない。
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映画「ブルージャスミン」 ウディアレン

2014-05-15 05:14:34 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
ウディアレン監督の新作映画「ブルージャスミン」を映画館でみた。
ウディアレンの新作は必ず映画館に向かう。今回はケイトブランシェットのアカデミー主演女優賞受賞でハクがついた。
前作「ローマでアモーレ」、前々作「ミッドナイトインパリ」ほど面白い映画ではない。ケイトの「いやな女ぶり」を楽しむという感じかな?

欧州に行くことが多かったウディがアメリカにリターン、しかもサンフランシスコで撮影する。ヒッチコックの「めまい」など坂道の多いサンフランシスコは映画と相性がいい。

ジャスミン(ケイト・ブランシェット)がニューヨークからサンフランシスコに向う飛行機内の映像からスタートする。
金融系の実業家ハル(アレック・ボールドウィン)が詐欺罪でつかまり、セレブな生活を送っていたジャスミンは財産没収される。結局サンフランシスコにいる血の繋がっていない妹ジンジャー(サリー・ホーキンス)を頼っていくところだ。ジンジャーも夫と別れ2人の子供と暮らしている。働いたことのないジャスミンはインテリアデザイナーを目指しパソコン教室に通いながら歯科医の受付のバイトをしていた。
しかし、セレブ生活が抜けきれない。精神安定剤とウォッカを手放せないジャスミンは情緒不安定だった。そんなある時、パソコン教室の仲間からパーティにこないかと誘われる。ジャスミンはパーティで国務省に勤めるドワイト(ピーター・サースガード)と親しくなる。妻と死別したドワイトに惹かれたジャスミンは子供はいないとかいくつかのウソをついてしまう。求婚されつき合いは進展するのであるが。。。

ざっとストーリーを追うとこんなところだが、セレブ時代の回想場面を自然な流れで挿入する。ニューヨーク時代とサンフランシスコの話が交差するそのリズムがいい感じだ。映画が始まってしばらくして「欲望という名の電車」のオマージュだな?ということに気づく。実にいやな女だ。

そもそも予想外の収入があったジンジャー夫妻に投資を勧めたのはジャスミン夫妻である。投資の失敗がもとでジンジャー夫妻は離婚してジンジャーはサンフランシスコで息子2人と暮らしているという構図だ。迷惑をかけた妹のところへ転がり込むという姉もずうずうしいを通り越している。しかも、自分の過去の栄光を引きづって妄想にふけっている。「サンセット大通り」のグロリア・スワンソンのようにも見える。ましてや国務省のエリートに出会ってもウソつき放題だ。でもこんな人って日本人にもいるかもしれない。

1.サンフランシスコ
ロスアンジェルスと比較すると、映画の舞台になるケースは少ない。しかし、この街の地形は映画との相性がいい。ヒッチコック「めまい」も「鳥」の舞台もサンフランシスコだ。クリントイーストウッドの「ダーティハリー」のキャラハン刑事はサンフランシスコ警察である。スティーブ・マックイーンが全速力でサンフランシスコの坂道を運転する「ブリット」も地形の特性をうまく生かした映像だ。
自分は1回サンフランシスコに行ったことがあるが、何度も行ったような錯覚を受けることがある。今あげた4つの作品を見れば、古い映画だけどこの町のことがよくわかる。あとはオーソンウェルズの「上海から来た女」チャイナタウンに逃げ込むシーンが出てくる「ブルージャスミン」でも一部チャイナタウンが映されるが、ここまでおさえてショーンペンの「ミルク」を見れば完ぺきだろう。

2.サリーホーキンス(ここからネタばれあり)
社会の底辺というわけではないが、一般的アメリカの労働者階級の女性を演じる。アカデミー賞の助演女優賞の候補になったのがうなづける巧さを発揮している。
セレブのジャスミンはイヤな女だが、サリー演じるジンジャーは男に頼って生きているよくいるずるい女だ。離婚した夫に金のことで愛想を尽かしたと思ったら、すぐさまシスコで修理工と仲良くなる。でもパーティでサウンドクリエーターと知り合ったら、すぐパカパカやりまくる。その男が所帯持ちだとわかると、一旦は捨てた修理工に逆戻りだ。こういう女は多いよね。ウディはジャスミンだけでなく一般階級のジンジャーのずるさも見逃していない。

3.ケイトブランシェット
シャネルの服がよく似合う。イヤな女を演じているけど、容姿だけをみているとこの映画のケイトはきれいだ。彼女の映画の感想はかなりアップしてきたが、演技としては「ハンナ」「あるスキャンダルの覚書」がいい感じだと自分は思う。「ハンナ」の悪役ぶりを見て、こういう路線に進むのかと思ったらイヤな女を演じてしまった。どれもこれもうまいけどね。

4.内田樹「映画の構造分析」
この映画をみて、内田樹の本を真っ先に連想した。彼はこう書く「ハリウッド映画がその全史を通じて強烈な女性嫌悪にドライブされているということについては深い確信を有している。これほど激しく女性を嫌い、呪い、その排除と死を願っている性文化を私は他に知らない。」なるほど
ここでジャスミンとジンジャーの2人を使って、イヤな女というのをウディは描いている。2人の女に愛想を尽かしたウディの苦笑いが見えるようだ。

最後のオチには笑えた。すべての転落の始まりは自分がまねいていたのだ。
こういう女っているよね。
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映画「セイフ・ヘイヴン」 ジュリアン・ハフ

2014-05-14 13:39:41 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「セイフ・ヘイヴン」は2013年日本公開のアメリカ映画だ。
予告編を何度か見た。素敵な2人の恋愛物語なのに、彼女が殺人鬼だとわかって男が仰天するという映像になっている。面白そうじゃない?と思っていたが、映画館はいかなかった。dvd化されてすぐ見た。

ここでの見モノはサスペンスタッチのストーリー展開だけど、それがすべてではない。映画のバックに映るサウスポートの町が美しいので驚く。「カイロタイム」の時も感じたが、観光案内的な要素を持つ映画は見ていて楽しい。一生行くこともないような美しい場所での人々の息づかいを感じるのも映画の醍醐味であると自分は思う。

どしゃ降りの雨の夜、彼女(ジュリアン・ハフ)はボストンからアトランタ行きの長距離バスに乗り込んだ。髪を切り、ブロンドに染め、妊婦に見えるように変装して。しかし、休憩で立ち寄った港町の素朴な風景に心惹かれた彼女は、その場所にとどまる。町の名は、サウスポート。彼女はケイティと名乗り、海辺のレストランでウェイトレスの仕事をする。さらに、森の中にひっそりと建つキャビンを借り、新しい生活をスタートさせた。

忌まわしい過去から逃れるためにサウスポートへやって来たケイティは、他人に対してつねに警戒心を働かせ、誰かと必要以上に親しくなることを避けていた。まもなくケイティには2人の友人ができる。ひとりは、雑貨店を営むアレックス(ジョシュ・デュアメル)。愛妻をガンで亡くしたあと、2人の幼い子供を男手ひとつで育てている彼は、車のないケイティが買い物に不自由しているのを見かねて古い自転車をプレゼントしてくれるような、親切で思いやりのある人物だった。

もうひとりのジョー(コビー・スマルダーズ)は、キャビンの近くに住む女性。彼女は、ケイティがアレックスの親切を拒んで自転車を返しに行った話を聞くと、「南部では要らない物でももらうのが礼儀」と言ってケイティを諭す。 そのアドバイスを受け入れたケイティはアレックスに謝罪し、自転車を受け取る。

この出来事をきっかけに、急速に縮まるケイティとアレックスの距離。子供たちを交えてビーチに出かけたり、2人でカヌーに乗ったりとデートを重ねるなかで、妻を亡くした悲しみに占められていたアレックスの胸の中にはケイティの居場所が作られていく。「君と一緒にいて前を向きたくなった」と、素直な気持ちを打ち明けるアレックス。その思いは、過去との決別を願うケイティも同じだった。2人は、子供たちの母を慕う気持ちに気遣いながらも、お互いに愛し合う関係になる。

 そんなある日、友人を訪ねて警察署へ出かけたアレックスは、思いがけないものを目にする。それは、ケイティの写真の上に「エリン」の名前と「第一級殺人」の文字を印刷した指名手配書だった。めまいがするほどの衝撃を受けるアレックス。。。
(作品情報より引用)

1.ラッセ・ハルストレム
アカデミー賞の監督賞こそ取ってはいないが彼の履歴はすごい。個人的には孤児院の話の「サイダーハウス・ルール」が好きだが、最近の「砂漠でサーモンフィッシング」も悪くない。まさにハリウッドという映画ではなく、やさしい雰囲気で映画を盛り上げる。ここでも流れるムードは変わらない。

2.サウスポート
ノースカロライナ州 に位置する初めて知る地名である。それにしても美しいところだ。おしゃれな港、公園もあるオークの並木道もすばらしいし、カヌーを2人が楽しむ森の中を流れる川も趣きがある。

サウスポートの美しい景観が映画で演じる人々にうまく溶け込んでいる。 こんなに美しい町だけど、観光産業もあまり手をつけていないようだ。独立記念日のパレードが、映画のクライマックスの舞台として取り入れられる。 夜打ち上がる花火が美しい。


3.ミステリーの要素
予告編では2人の恋愛が続いた後で、突如殺人が発覚という流れをとる。そういう流れかと思ったら、主人公が長距離バスに乗って懸命に逃げている姿が最初に映し出される。そして彼女を追う警察の刑事が映る。まさに殺人者を警察が追跡するという展開だ。追う刑事が彼女の行く先を調べていくが、簡単にはわからない。そうするうちに主人公の指名手配の張り紙が張られる。いったい何をしたんだろう?という疑問を持ちながら、映像を追うとついに現地で恋人になった男性がお尋ねの張り紙を見つけるのだ。「ドッキリ!」する場面だ。このあとどんな展開なんだろう??
気がつくと全然予想とちがう展開だった。これには騙された。
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映画「カイロタイム  異邦人」 パトリシア・クラークソン

2014-05-08 06:07:05 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「カイロタイム 異邦人」はエジプトの首都カイロを舞台にしたやわらかい恋愛映画だ。

アメリカ映画の名脇役として貴重な存在のパトリシア・クラークソンが主演
エジプトを舞台にした映画は珍しい。以前より危険度が増しているという噂を聞いているが、ジャケットをみるとエジプトらしい雰囲気のいい風景がバックだ。ストーリーは大きな起伏もなく、観光案内を見ているような感覚で映画を見た。

女性誌の編集者ジュリエット(パトリシア・クラークソン)は初めてカイロを訪れた。彼女はそこで、パレスチナのガザ地区で働いている国連職員の夫マークと待ち合わせ、休暇を一緒に過ごす予定だった。しかし、空港で彼女を待っていたのは、夫ではなく国連で夫の元警備担当をしていたエジプト人のタレク(アレクサンダー・シディグ)だった。マークはガザ地区でのトラブルで到着が遅れるため、信頼できるタレクに妻の出迎えを依頼したのだった。

ジュリエットは見知らぬ異国の街で、いつ来るかわからない夫を待ちながら心細い思いをしていた。そんな彼女の姿を見て、タレクは街を案内して回る。歴史ある街並みや建造物の数々、エキゾチックな異文化の匂い…、はじめは不安でいっぱいだったジュリエットだが、タレクの紳士的なエスコートでしだいにカイロの街や人々の魅力を知るようになる。

仕事と子育てで忙しかった彼女にとって、これほどのんびりと時間を過ごしたことも、妻でも母でもなく、一人の女性として扱われることも久しくなかったことだった。やがて、ジュリエットとタレクは、お互いが好感を持っているだけでなく、しだいに強く惹かれ合っていくのを感じていた…。(作品情報より引用)

1.カイロの街
イスタンブールに比較すると、映画に取り上げられることが少ない。主人公が宿泊するホテルの階下にナイル川が流れる。古代文明から世界史を見つめてきた川だ。川を隔てた先には高層ビルだけでなく、イスラム寺院が立ち並ぶ。近代化されたカイロの風景だが、いったん主人公が街中に出ると、不気味な男たちから声を次から次へとかけられる。女性一人で行くには物騒な印象を受ける。

2.パトリシア・クラークソン
名前を知らなくても、彼女の顔を見たら「あの人ね」と感じる人は多いだろう。自分がブログにアップした彼女の出演作を数えてみたら10近くあった。「エデンより彼方へ」「エレジー」あたりの活躍が印象深い。教養のありそうな中年女性の役に指名がかかることが多い。そこでは女性上司役や老年齢の紳士の恋相手など脇役が多いが存在感がある。現在54歳なのでまだまだ出るだろう。ここで彼女を恋をする女にしたのは、50代過ぎて恋と縁がきれそうな年頃の女性から支持を受けたい意向があったのかもしれない。欧米でカイロに遊びに行くのはこのくらいの年齢でないとむしろ行く余裕がない。自分とは同世代だけにいつも気になる存在だ。

3.映画「旅情」とダブるところ
デイヴィッドリーン監督キャサリーンヘップバーン主演の「旅情」は、ベニスに旅するアメリカのキャリアウーマンの旅行先での恋物語である。現地のイタリア人と恋仲になる。そういった意味では共通しているが、キャサリンと違い所帯持ちの設定である。パトリシアは不倫までは至らない優しい恋だ。ともに観光案内的なムードで美しいバックを楽しむ感覚で映画を見れてしまう所が共通点だろうか?そういう映画があっても悪くないと自分は思う。


4.ピラミッド
結局2回ピラミッドに行く。いろんな観光案内を見ると、ピラミッドのまわりには大勢の観光客いるがここではそれをシャットアウトしたかのような映像だ。なかなかムードがある。

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映画「ヒステリア」 マギーギレンホール

2014-04-29 18:07:32 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「ヒステリア」は2011年の英国映画だ。

バイブレーターの映画というと、引いてしまう感じもする。いやらしさは極めて少ない。その昔、女性のヒステリーを治すために発明されたのがバイブレーターというわけだ。今ではエロショップにしかないのかと思っていたバイブ誕生の意外な一面をみせてくれる。マギーギレンホールが帝国主義時代の英国の女性闘士を演じている。滑稽な映画であり、流れるムードはやさしい。

1890年英国のヴィクトリア王朝は帝国主義最盛期を迎えていた。その頃女性たちに、すぐに泣く、異常な性欲、不感症、うつ病など様々な症状を引き起こすヒステリーが広まっていた。婦人科医の権威であるダリンプル医師(ジョナサン・プライスは、女性特有のヒステリーに対して「マッサージ療法」でそのうっ憤を静めていた。ダリンプルの診療所に欲求不満のご婦人が大勢詰めかけている。ダリンプル医師には女性に選挙権をと強く訴える女性闘士シャーロット(マギーギレンホールと骨の形で人間の性格を見る学問をしている美しいエミリー(フェリシティ・ジョーンズの2人の娘がいた。


一方グランビル医師(ヒュー・ダンシーは医師としての正義を重んじるがあまり、勤務先の病院でいつも上司とけんか別れをしてしまう。そのグランビルがダリンブル医師の診療所に入ってきた。ダリンブル医師の技をまねて治療にあたる。

ダリンプル医師の娘シャーロットはその治療法に対して嫌悪感を抱いていた。ところが「マッサージ療法」をしすぎて腱鞘炎になったためにグランヴィルの利き手が動かなくなり、彼は診療所を解雇されてしまうのだ。その後長年の友人である発明家のエドモンド(ルパート・エヴェレットの元へ相談に行く。エドモンドが試作中の「電動ホコリ払い機」にグランビルが手を触れていると気持ちがいいことに気づく。それをもとに治療用マッサージ器ををつくり、再度ダリンブル医師の元へ行く。治療を始めるとうまくいき、口コミで診療所は大盛況となる。

やがてグランビルはエミリーと婚約することになり、その婚約パーティに姉のシャーロットが出席する。女性地位向上に執念を燃やすシャーロットは会場で口論になり警察に連行されることになるが。。。

コメデイと考えてもいいだろう。おばあさんやおデブちゃんなど診察を受ける脇役のおばさんたちがうまく演じる。脇役がいいと主たる配役も引きづられる。この映画は演技で見せてくれる。

1.マギーギレンホール
傑作「ダークナイト」ではヒロインとなる。でもそれ以上にいい演技を見せるのはクレイジーハートである。念願のアカデミー賞主演男優賞をジェフブリッジスが受賞した作品だ。彼が演じる飲んだくれミュージシャンが親しくなる子連れ記者の役を演じる。この映画のマギーギレンホールが優しいムードを醸し出していて素敵だった。ここでは一転女性闘士になる。女っぽい妹と正反対なキャラクターで、警官にも立ち向かう。これはこれで悪くない。弟ジェイクも有名俳優だ。

2.ルパート・エヴェレット
クレジットで彼の名前を見て、久々だなあといった印象だ。「恋するシェイクスピア」「ベストフレンズウェディング」での演技が印象的である。特に「ベストフレンズウェディング」では若いキャメロン・ディアスと女を競い合うジュリア・ロバーツの親友役を演じる。

この映画でいちばん素敵なのはレストランでエヴェレットとみんながバートバカラックの「小さな願い」を歌うシーン。あの盛りあがりはいつ見ても背筋がぞくっとする。ゲイと言われる彼の卓越した演技はここでも活かされると言っていい。

3.英国の女性参政権19世紀末はインド支配を完成させインド帝国も成立させた。グレートブリテンが帝国主義を完成させる時期だった。産業資本家、労働者と選挙権を徐々に開放していったにもかかわらず女性は後回しになる。マギー演じるシャーロットのような女性も多くいたのであろう。裁判でのグランビルの証言がこの映画のヤマになっている。女性地位向上をふだんから唱えている人から見ると痛快な場面であろう。英国女性が男女平等の参政権を得るのは何と1928年だ。

4.何で姉にのりかえるの?
これだけはよくわからない。主役だから?
妹エミリーと婚約までしているのに姉に主旨替えする必要性がつかめない。ちょっと引っかかるなあ。


5.バイブレーターの歴史
エンディングロールでそれぞれの時代にどういうバイブが使われたか映像が出る。1980年代になって急にきわどい映像になったのが笑えた。これは日本製じゃないかなあ?AVじゃよく見るしろものだ。気持ちいいのかどうか男性の自分には皆目見当がつかない。ヒステリー治療はやっぱり下半身なのであろうか?

ダークナイト
マギーギレンホールがヒロイン


クレイジー・ハート
ジェフブリッジスと恋仲になるマギーギレンホールが素敵だ


ヒステリア
バイブレーターの歴史を再検証
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映画「31年目の夫婦げんか」 メリル・ストリープ&トミーリージョーンズ

2014-04-10 05:00:53 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「31年目の夫婦げんか」は2013年のオスカー俳優2人によるドラマ

事前に内容はあまり知らず、ただメリル・ストリープとトミーリージョーンズの共演ということだけで見た。結婚31年目とすると本来は50代後半という年齢だが、彼らはいずれも60代。むしろ41年目と言ってもいいかもしれない。
内容は最近はやりの老人向け映画に近い。夜の生活しばらくご無沙汰の結婚生活31年目に入った2人が主人公で、もう一度夫婦生活を復活させるためにカウンセリングに通うという内容だ。セットその他にそんなにコストがかかっているとは思えない映像で、主演2人とスティーヴ・カレルのギャラだけにお金がかかっているのではないかな?参考になることもないわけではないが、普通


深呼吸をして、夫のアーノルド(トミー・リー・ジョーンズ)の寝室を“訪ねる”ケイ(メリル・ストリープ)。覚悟を決めて今夜は一緒に寝たいと伝えるが、「今日は気分が悪い」と拒絶されてしまう。

結婚31年目、毎日同じ朝食を食べ、同じ時間に帰宅し、同じ会話を交わし、同じゴルフ番組を見るアーノルド。子供たちは独立し、2人にはもはやけんかの種さえ見つからない。

夫婦の関係を見直したい、そう思い立ったケイは結婚生活のカウンセリング本を購入。夢中で読み終えると、著者のバーナード・フェルド医師(スティーヴ・カレル)のホームページにアクセスする。朝食の席でアーノルドに“カップル集中カウンセリング”を受けたいと告げるケイ。1週間4000ドルという料金に目をむいたアーノルドがもっと驚いたのは、定期預金を解約して既に申し込んだというケイの意外な行動だった。

「俺は行かない」と突っぱねたアーノルドだが、結局は渋々飛行機に乗る。行く先は、メーン州のグレート・ホープ・スプリングス。海辺の小さな町だ。いよいよ、カウンセリング初日。「お会いできて――」と切り出すフェルド医師に、「俺はうれしくない」と返すアーノルド。フェルドはケイにここに来た理由を尋ねる。「結婚したいんです。もう一度」。ただ同じ家に住んでいるだけで、触れ合いも絆もないと訴えるケイに、「まず長年の夫婦生活でできた傷痕を取り除くところから始めましょう」と勿体ぶった口調で語るフェルド。終了後、アーノルドは「ペテン師!ちゃんとあの野郎の経歴は調べたのか?」と不平不満をまくしたてる

次の日。出逢い、プロポーズ、いつから寝室を別にしたか──聞かれるままに夫婦の歴史を語る2人。だが、「最後のセックスは?」の質問に口を閉ざすアーノルド。そんな2人に“最初の課題”が与えられる。「今晩しばらく抱き合ってください」。。。
(作品情報より引用)

諸外国よりも日本の夫婦の方が夫婦生活が減退すると聞く。最初はあんなにしたのに、今は。。。なんていうのはよくある話だ。アメリカではそうもいかないのかと思っていたら、こういうテーマが映画化されるということは日本と似た状況があるのかもしれない。妻の方がやけに熱心だ。日本の奥方もそんな気を奥底に秘めているのであろうか


今回はカウンセラーに「しばらく抱き合ってください」と言われる。そういう場面がしばらくないと、なかなか気恥ずかしいのでできない。でもこれって一番アプローチしやすいのかもしれない。むしろキスする方が難しかったりして。。。スティーヴ・カレルはアメリカ映画を代表するコメディアンだが、真顔で2人を指導する。この感じは悪くない。
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映画「ハンナ・アーレント」

2014-01-18 05:42:38 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「ハンナ・アーレント」を劇場で見た。
ナチス残党をイスラエルが裁くという歴史上重要な裁判場面を挿入した優れたノンフィクション系ドラマである。

ハンナ・アーレントの映画評を新聞で見たときには、あまり行く気にはならなかった。知性の殿堂「岩波ホール」をインテリ中高年が満員にしたなんて情報もあったので、「左翼ババア」好きの映画だと思っていた。でもキネマ旬報3位となれば、それなりの映画だろうと劇場に向かった。これは行ってよかった。でもこの映画の内容を正確に理解しようと思ったら、セリフの一つ一つを全部吟味しなければならないし、2度以上見ないとだめだろう。
映画に裁判のドキュメンタリー映像が挿入されるところがすごい。白黒映像のリアル感にはふるえる。

1960年、数多くのユダヤ人を収容所へ移送したナチスの幹部アドルフ・アイヒマンが、逃亡先で逮捕されイスラエルに護送された。主人公ハンナ・アーレント(バルバラ・スコヴァ)はドイツ系ユダヤ人の大学教授で専攻は哲学だ。彼女はナチスが政権をとった1933年にドイツを脱出している。その後フランスを経由してアメリカで生活している。
彼女はナチスの元幹部であるアイヒマンがイスラエルで裁かれると聞き、裁判の傍聴を希望し受け入れられた。

ハンナは聖地エルサレムの裁判所で歴史的裁判を傍聴した。そこでのアイヒマンは「あくまで上の命令で移送をしただけ」と主張する。ユダヤ人の虐殺に加わったわけではないと自身を弁護した。
ハンナはアイヒマンのイメージが予想していた像と違って極悪非道な人物ではなく、凡庸な人間ではないかと考えるようになる。イスラエルにいる友人たちにもアイヒマンをかばっているとも取れる発言をし始めた。しかし、彼女の真意はアイヒマンの「悪の凡庸さ」を主張するということなのである。ザ・ニューヨーカー誌にレポートを発表、その衝撃的な内容に世論は大騒ぎになり、ユダヤ人たちからの強い非難を浴びた。敬愛される哲学者から一転、世界中から激しいバッシングを浴びるようになったのだ。「考えることで、人間は強くなる」という信念のもと、思い悩みながら彼女はどうしたのか。。。

(アイヒマンの裁判と東京裁判)
戦争裁判は法典に基づいてされるわけではない。第二次世界大戦が終了し、ドイツではニュルンベルク裁判、東京では東京極東軍事裁判がおこなわれた。戦勝者が負けた国の幹部を裁くのである。アイヒマンの裁判もそれに通じる。そもそもイスラエルという国が大戦前に存在したわけではない。その国の司法当局になぜ裁かれねばならないのか?という大きな問題がある。しかし、冷戦の時代であっても、東西両陣営の幹部にはユダヤ人が多い。当然黙認してしまうのであろう。
そこでアイヒマンは無罪を主張する。あくまで上の命令であって自分の意思でしたことではないというのだ。

ここが東京裁判との大きな違いである。東京裁判では東條英機をはじめとしたA級戦犯たちが懸命に天皇をかばう。同時にマッカーサー天皇をそのまま生かしたほうが占領下日本の秩序が保てると理解し、すべてA級戦犯たちの責任にして天皇を無罪にしようとした。
東條は戦勝者に裁かれることは否定しても、天皇に責任があるとは言わないのだ。天皇は神だと洗脳されていたということもあるが、元々極刑になる運命と自分で認識していたからであろう。戦争中盤から後期にかけてには憲兵をひきいての暴走もあったが、ここでの東條英機の潔さは賞賛されるべきだと思う。

アイヒマンがどれほどまでの幹部だったか自分は理解していない。責任を取らされる。絞首刑だ。
一方日本では昭和23年12月23日東條英機元首相をはじめとしたA級戦犯の死刑執行があった後、その他の拘置されていた戦犯たちは釈放された。その中には岸信介首相もいる。しかも、10年という短い期間に総理にまで押しあがった。日本でも残虐行為を働いた人物で、一部戦後まもなくの軍事裁判で死刑になった人はいたが、他は拘置後釈放された。しかも、アイヒマンが逮捕された60年になったころ諸外国で日本人を裁こうとした外国人はいなかった。日本の軍部では辻政信のような奴がいて、占領下で姿をくらましているが処刑はされていない。

(ナチス処刑の責任の分散)
アイヒマンが主張したのは、自身の虐殺関与の否定である。これ自体はまさにその通りであろう。
経営学の本で、ナチスによるユダヤ人虐殺は「責任の分散」が最もうまくいった例として取り上げられているのを読んだ。何百万人というユダヤ人を殺したあの仕組みは、誰かが責任者だったというわけでなく「名簿をつくるだけ」「部屋に連れて行っただけ」「ボタンを押しただけ」のように担当を分散し、誰もが「自分の責任じゃない」状態をつくりだしたから、あれほどの大虐殺ができたと言われている。人類史上ここまで凄い役割分担はないかもしれない。関わった人物たちは最終的にユダヤ人がどうなるのか?知らなかった人が多いといわれる。薄々わかっていたとしても、究極的には理解していない可能性がある。

(悪の凡庸さ)
アーレントがアイヒマン裁判のレポートで導入した概念。上からの命令に忠実に従うアイヒマンのような小役人が、思考を放棄し、官僚組織の歯車になってしまうことで、ホロコーストのような巨悪に加担してしまうということ。悪は狂信者や変質者によって生まれるものではなく、ごく普通に生きていると思い込んでいる凡庸な一般人によって引き起こされてしまう事態を指している。(作品情報より)

恐ろしい話である。ハンナ・アーレントの言っていることは、自分が言及したことと同値である。虐殺の完ぺきなシステムを作るには、普通の一般人に究極の目的を教えることなく責任分散された任務を果たすようにすればいいことなのだ。

この映画感じることは他にもたくさんある。
ハンナ・アーレントも変わった人だ。この映画でも出てくるが、その昔哲学者のハイデッガーと不倫をしていた経験がある。今の亭主は他の女と浮気をしている。どうもそれはハンナも黙認しているようだ。普通常識を超越している世界に生きている。レポートをニューヨーカー誌に掲載してクレームがジャンジャンかかってきても、面倒なことは秘書に任せて別荘に逃げてしまう。無責任で秘書がかわいそう。傲慢でいやな女だ。


でもこの女の人が気になる。元々左翼女と思っていたら、どうやら主張を見ると反対のようだ。
同じドイツ系ユダヤ人に経営学者ピータードラッカーがいる。彼は初期の著書「経済人の終わり」で全体主義および共産主義を強く批判をした。同書より引用する。
「共産主義とファシズムが本質的に同じというわけではない。ファシズムは共産主義が幻想だと明らかになった後にやってくる段階なのだ。そしてヒトラー直前のドイツでと同様に、スターリン下のソ連において、それは幻想だと明らかになった。」
ドラッカーと同じ主旨を20世紀を代表するリバタリアニズム思想家であり、ノーベル経済学賞受賞のフリードリッヒ・ハイエクが「隷従への道」で取り上げ、共産主義を全体主義と同値にとらえて強く批判している。
「ファシズムと共産主義を研究してきた人々が。。。この両体制の下における諸条件は。。。驚くほど似ている事実を発見して衝撃を受けている」(「隷従への道」より引用)
ハイエクもドラッカーと同じくウィーン出身だ。華やかな当時のウィーンでは、ブルジョア階級でユダヤ人は75%を占めていたという。彼女も同じようなテイストの人らしい。俗に言う左翼ババアと正反対のようだ。不思議だよね?真逆なのに何で人気なのか?自分は気が合いそうなのでちょっと彼女を追いかけてみたい。
全体主義を論じた彼女自身の本も読みたいし、映画も何度も見てみたい。

エルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告【新版
ハンナアーレントの示す悪の凡庸さ
みすず書房


ハンナ・アーレント
映像で観るハンナ・アーレント
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映画「ゼロ・グラビティ」 サンドラブロック

2014-01-08 17:10:48 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「ゼロ・グラビティ」ようやく劇場で見に行ってきました。

昨年度№1の呼び声高く、評論家筋の評判もいい。早めに行こうと思っていたが、ホームグラウンドの劇場が吹替しかやっていない。普段ジョージクルーニーとサンドラブロックの声を知り尽くしている自分からすれば、映像美を見るためだけに吹替版は行く気になれなかった。肉声が聞ける3Dの劇場で見た。大正解!
美しい地球から600km離れた場所で、アクシデントに巻き込まれた2人を映す。無重力状態で演じるサンドラブロックには敢闘賞をあげたい。

地球から600kmの上空の宇宙船で2人が作業をしている。メディカル・エンジニアのライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)とベテラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)だ。
そこにヒューストンから連絡が入る。ロシアの宇宙船が爆破したらしい。その破片がものすごいスピードで飛んできているとのことだ。最初は影響ないと聞いたが、二次災害で破片の飛ぶ方向が変わったらしい。

連絡が来るやいなや、まさに破片が飛んでくる。
そしてスペースシャトルが大破する。船外でミッション遂行中の2人は宇宙の無重力空間に放り出されてしまう。仲間の乗組員は全員死んだようだ。宇宙で2人を繋ぐのはたった1本のロープのみ。酸素はわずかしか残っていない。あと10%の分量だ。しかも、ヒューストンとの通信手段も断たれてしまうが。。。

映像は美しい。
「2001年宇宙の旅」から時間がずいぶんたち、映像の技術は格段に進んだ。宇宙船のメカニックな部分や宇宙を映す映像も極めて緻密である。プロ集団による設計がなされていることがよくわかる。3Dも効果的に映し出され、無重力の中で物体が目の前に飛んでくるような感覚がいい。ここまで宇宙遊泳を美しく映した映像は初めてではないだろうか?


ここで踏ん張るのはサンドラブロックである。どのように撮影したのかわからないが、無重力空間の中で身体がくるくる回転する。頭がまわって仕方ないと思う。宇宙服もきている。すごい重装備で普通であればそんなに身軽には動けないだろう。
その後宇宙船の中で宇宙服を脱いでランニングとショートパンツの身軽な格好になる。無重力空間を潜水で泳ぐがごとく船内を動き回る。50歳にあともう一歩というサンドラが極めて身のこなしの良い動きをする。


そうして次から次へと困難が彼女の元を押し寄せる。火事が起きた時はドキドキした。
障害物をかわしていくサンドラを見るのは楽しい。

(無音状態)
見どころはたくさんある。
自分なりに一番ハッとしたシーンは、サンドラがロシアの宇宙船ソユーズに向かい、それを操縦しようとする場面である。いつ死んでもおかしくないような状態から懸命に地球に向けて脱出しようとして宇宙船ソユーズの中に入る。別の国の宇宙船だから、操縦方法はわからない。コントロールピットの操縦ボタンをいくつか押してトライしたが、うまくいかない。

その時、窓外に宇宙飛行士がいるではないか!!!しかも、その宇宙飛行士が船内に入ってくる。
そのあと無音状態がくる。ここがよかった。その瞬間劇場内も完全に無音の沈黙状態になった。
サウンド設計は音楽がガンガン鳴り響くのだけがいいわけではない。
編集の巧みさを示す部分でもある。

宇宙飛行のことはよくわからないが、他の国の宇宙船にこんなに簡単に乗り移れるのであろうか?
などなど、本当にそうなるかなあ?という場面がいくつかあった。フィクションなのにそんなこと気にする必要もないけれど、若干大げさかな?と思わせる部分があったのが気になる。
編集技術も絶妙で、映画技術の究極に挑戦したよくできた映画とは思うが、映画としての感動はピカイチではなかった。
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映画「インポッシブル」 ナオミ・ワッツ

2013-11-24 06:58:07 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「インポッシブル」は今年2013年公開のナオミワッツ主演のパニック映画だ。


2004年スマトラ沖で年末起きた地震は記憶に新しい。テレビで津波で被害を受ける光景が映し出され、その迫力に圧倒されたものであった。この映画は実際に被害に遭ったスペイン人の実話をもとにつくられた映画である。特に津波に流されてしまうナオミワッツを追いかける。大規模なセットがつくられたようで、津波の映像には迫力がある。

2004年年末、日本滞在中のマリア(ナオミ・ワッツ)とヘンリー(ユアン・マクレガー)夫妻と3人の息子はタイのリゾート地でクリスマス休暇を楽しんでいた。

しかしクリスマスの次の日、スマトラ沖でマグニチュード9.1の地震が発生。これにより発生した巨大津波は彼らの滞在するタイのプーケット海岸にまで押し寄せ、飲みこまれてしまうのだが。。。

予告もなく突然津波が押し寄せる。
津波警報という概念はないのであろうか?スマトラ沖であるから、タイのプーケットからは若干離れているはずだ。
驚異的な発展を遂げているタイだけど、この警報が出せないとなるとまだまだ後進国の域を脱せないのかもしれない。

警報がないから、普通に家族は海辺のリゾートホテルのプールで遊んでいる。
まずはナオミワッツと長男が流されるシーンが映し出される。これがすごい。

流れの強い川のような津波に2人が流される。木やいろんな障害物にぶつかっていく。普通だったら助からないだろうなあなんて思いながら、映像を追う。そして波が徐々に弱まり、助けを求めて2人が歩いていく。

他の家族3人は見つからない。

結局は助かるんだろうなあ。そう思って映画を見るわけであるから、最終オチは見える。
この映画はストーリーを楽しむというわけでないだろう。離れ離れになった被災者が自分の家族を懸命に探す中で繰り広げられる人間ドラマがポイントとなる。それにしても流されるシーンはどうやって作ったんだろうと思ってしまう。どうやらすごいセットがつくられたらしい。当然CGも使われているだろうけど、ナオミワッツは汚れ役を見事にこなしたなあという感じだ。大女優の道を着々と歩んでいる。
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映画「ジェーンエア」 ミア・ワシコウスカ

2013-08-07 17:51:12 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「ジェーンエア」は日本では2012年公開の文芸作品の映画化

両親を亡くしたジェーン・エアは、伯父に引き取られる。彼女を引き取った伯父も亡くなり、その妻と息子たちと暮らすようになった。ところが、気の強いジェーンは家族と気が合わない。その結果、寄宿学校に行くことになる。そこでも教師たちから虐げられる。親友の女の子は結核で死んでしまう。孤独で不遇な幼少時代を経て、家庭教師として大きな館に住みつくことになった。

ジェーン(ミア・ワシコウスカ)はソーンフィールド家の家庭教師となる。フランス語のみを話す少女を教えていた。屋敷には女中頭(ジョディ・デンチ)はじめ召使たちが数人雇われていた。屋敷の主の姿を見ぬまま3カ月が経ったある日、郵便を出しに行こうと外出したときに、見知らぬ男の馬を驚かせて落馬させてしまう。その男こそ、屋敷の主ロチェスター(マイケル・ファスベンダー)だった。気難しげなロチェスターはジェーンに横柄な質問を投げかけるが、ジェーンはありのままに素直に答える。ロチェスターには結婚するであろうと周囲も思っていた女性がいた。彼女は屋敷にも何度となく訪れていた。しかし、ジェーンを深く知りあううちに、ロチェスターはジェーンに求婚する。

彼女もそれに応える。女中たちからも祝福を受け、2人が教会に向ったとき突如この結婚は無効だと言い張る人間が出てきた。そして、ジェーンはロチェスターには屋敷に幽閉された妻がいることを知るのだ。。。。

ミアがかわいい。ミアが一番よかったのはショートヘアの「永遠の僕たち」だ。そこでは余命わずかな少女を演じた。実にキュートだった。今回の役柄は本来は芯が強いイメージだ。でも彼女が持つやさしさで映画がやわらかくなる。
昔は住み込みの家庭教師がついていた。住み込みの使用人に手を出すのは、男の性。映画「ハウスメイド」と基本構図は同じだが、主人が独身で普通の結婚が出来るはずだった。ご主人様に彼女はいるが、奥さんはいないと思っていたが。。。
文芸作品は苦手。かわいい彼女を見ているだけでいい感じになれる映画


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映画「ヘルプ 心がつなぐストーリー」

2013-07-20 05:35:25 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「ヘルプ 心がつなぐストーリー」は2011年のアメリカのドラマ

緑あふれる美しいミシシッピ州の街を舞台とした黒人差別の話だ。
「ローマの休日」のグレゴリーペックが初めてオスカー男優賞を受賞した「アラバマ物語」は1962年の作品だ。差別社会の中で一人の黒人が不利に裁かれる映画だ。グレゴリーペックの正義感あふれる弁護士姿は今もってアメリカに支持者が多い。この映画はちょうど同じころの舞台設定だ。映画「リンカーン」で黒人差別に懸命に闘う主人公の姿を見たが、その後100年間も状況は好転していなかった。南部の田舎街に至ってはほとんど変わっていなかったといっていい。それがこの映画でよくわかる。

1960年代前半の南部ミシシッピ州ジャクソンが舞台だ。
この街では、若い主婦は黒人のメイド(HELPといわれている)を雇って、子守や家事一般を任せていた。
ミシシッピ大学を卒業したスキーター(エマ・ストーン)はライターを志している勝気な独身女性だ。著名なライターに雇ってもらおうとしたが、修行が足りないのでどこかで勉強しろと言われ就職先を探していた。結局地元新聞社に採用された。そこでは、家事に関するコラムを担当することになる。読者からの家事に関する質問に答えるコラムだ。

未婚の彼女は家事の知恵を得るために、友人エリザベスのメイドであるエイビリーン(ヴィオラ・デイヴィス)から相談しようとしていた。昔からの友人は早くに結婚して、主婦になっていたが、いずれも黒人メイドに家事を任せて遊び呆けていた。自分たちも育ててもらったにもかかわらず、黒人を差別する雰囲気があった。スキーターも小さい頃から1人のHELPに育てられてきた。しかし、戻ってみると彼女はいなかった。その雰囲気がいやだった。

その時スキーターは黒人メイドの実態をインタビューすることを思いつき、ニューヨークのライターに相談した。そのアイディアはいいと受け入れられた。エイビリーンはしっぺ返しが怖くて、最初は取材を嫌がった。彼女は事件で息子を亡くしていた。しかし、少しづつ話しはじめる。同様にエイビリーンの仲良しのミリー(オクタヴィア・スペンサー)も同じように取材に答えるようになるが。。。。

まあ白人たちの憎たらしいこと。
意識して演じていると思うが、憎たらしい。わざとムカつかせる。保守層の白人がみると、逆の意味でムカつくであろう。
テレビ「細うで繁盛記」の富士真奈美はトコトンいやな女で主人公新珠美千代をイジメ抜いた。もともとは美人の富士真奈美があえてどのきついメガネをして意地悪な女を演じた。ここでの白人仲間のリーダーを演じるのはロンハワード監督の娘ブライス・ダラス・ハワードである。彼女は美しい。同時に映し出される友人たちも同じように美しい。でもいやな女だ。

いかにも50年代から60年代にかけての平和な時代のアメリカを象徴する女性たちである。ヘアースプレイたっぷりの髪型で、彼女たちが着るワンピースの柄はいかにもアメリカらしく素敵だ。まさにゴールデンエイジで住む家も外観から内装インテリアに至るまで完ぺきと思わせる素晴らしい家だ。
黒人メイドたちの受けるひどい仕打ちもテーマだが、この映画ではゴールデンエイジに暮らした人たちの素晴らしい生活が映し出される。正直南部のこの田舎町で何でこんなに豪華に住めるだけの財産を築き上げたのであろうか?この映画では地味な存在である男たちがどうやって生計を成り立たせているのかが気になった。謎である。

主人公であるヴィオラ・デイヴィスの安定した演技には当然感心したが、何よりもその友人ミリーを演じたオクタヴィア・スペンサーが素晴らしい。少しデブな体型で、顔の輪郭と目は相撲の「小錦」にそっくりだ。ぎょろりとした目に愛僑がある。
州で一番の料理自慢と言われるその腕をしぼって、元の雇い主の家においしいパイを持参する。お詫びのつもりが復讐だ。このシーンが最高に笑える。
この彼女が結局仕える奥様を演じるのが「ゼロダークサーティ」のジェシカ・チャステインだ。目が慣れないうちは同一人物には見えない。ちょっとおバカで、料理も家事もダメな女を演じる。彼女は白人若奥様のコミュニティに入りたいのだけど、無視されている。何か可哀そう。女のえげつなさを露骨に見せるシーンだけど、女のそういう醜さは万国共通のようだ。
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映画「イノセントガーデン」ミア・ワシコウスカ&ニコールキッドマン

2013-06-01 21:48:48 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「イノセントガーデン」を公開早々劇場で見た。

予告編から妙に不穏な雰囲気を出していた。しかもミア・ワシコウスカちゃんが主人公を演じるという。これは見に行くしかない。サイコホラーというべきであろうか?父親が死んだあと、存在すら知らなかった叔父が同居し、その彼に疑惑の念を抱く。開始早々からドキドキさせる展開が続く。


インディア・ストーカー(ミア・ワシコウスカ)の18歳の誕生日。毎年どこかにプレゼントの「靴」が隠されているのだが、樹の上で見つけた今年の箱には、謎めいた鍵だけが入っていた。そして突然、贈り主のはずの父リチャード(ダーモット・マローニー)が、不審な死を遂げる

不審に思われる父の死について噂でもちきりだ。それが鮮明に聞こえるインディア。繊細で五感が鋭すぎる彼女は、家でも学校でも孤立していた。母のエヴィ(ニコール・キッドマン)とも心は通わず、ただ一人の理解者だった父を失ってしまったのだ。


葬儀の日、長年行方不明だった叔父のチャーリー(マシュー・グード)が現れ、インディアと参列者を驚かせる。そのまま彼は、しばらくストーカー家に泊まることになる。夫との仲が冷えていたエヴィは、悲しみにくれることもなく、チャーリーと楽しげに買い物へ出かける。その間にインディアがチャーリーのバッグを探ると、なぜかプレゼントと同じ箱が入っていた。

ある日、遠方から訪ねてきた大叔母のジン(ジャッキー・ウィーヴァー)が、チャーリーを見て動揺する。エヴィに何かを話そうとするが相手にされず、ホテルへ向かった後に姿を消す。
インディアは彼の過去に疑問も抱き始めるが。。。

「叔父さんを疑う姪」という設定で、ヒッチコックの不朽の名作「疑惑の影」を連想する。

憧れのオジサンというのが、あの映画の設定であり、それが徐々に疑いの目を向けるようになっていく展開だ。ジワリジワリと真相に迫るのが実にスリリングだ。不安な雰囲気を醸し出すカメラワークがヒッチコック作品の中でも際立つ。階段での2人のやり取りはこの映画でも影響受けている。同じような怖さを感じさせる。気になって調べてみたら、ジョセフコットン演じる叔父さんの名前はなんと「チャーリー」なのだ。いかにも「疑惑の影」を意識しているのは明らかだ。
でもリメイクではない。ストーリー展開もちがう。

この映画では、姪どころか母親も義弟であるチャーリーの存在をもともと知らない。インディアに彼への憧れはない。非常に感受性の強いインディアは最初からチャーリーに疑いを持つ。一緒に住むようになった後、学校に迎えにチャーリーが来てもまったく相手にしない。無視する。逆に自分の母親エヴィはチャーリーに強い関心を持つ。徐々に色仕掛けで迫るようになる。(こういう役をやらせると、ニコールキッドマンは天下一品である。)

そして一気にストーリーが急展開する。この映画の英題は「ストーカー」である。主人公の名字がストーカーということもあるが、普通でいうストーカーの意味も含む。途中からサイコスリラー独特の雰囲気が強くなってくるのだ。もともと無視していた関係だったのに、疑惑が強まった後に叔父への意識が変わってくる。そして自らも大胆になっていくのだ。叔父さんも見ようによっては魅力的な悪党に見える。2人のピアノの連弾場面は官能的に映す。旋律も素敵なタッチで印象に残る巧みな映像だ。


ミア・ワシコウスカは以前見せたショートヘアの方がずっと似合うし、ものすごく可愛い。この作品では
学校の中でも孤立した変わり者と周りに邪気にされる生徒だ。あえてドンくさくする。いつもサドルシューズを履く。これは父親からプレゼントされた設定だろう。それがチャーリーからプレゼントされた高いヒールのシューズに履きかえる。少女が変貌していく姿が実は一番の見せ場なのだ。
ここでは言えないが彼女は大胆な演技にも挑戦する。

ニコールキッドマンがきれいに見えた。色仕掛けで義弟と仲良くなる設定だが、ここで醸し出す性的匂いは非常に強い。マシュー・グードとのキスシーンを楽しんでいるようだ。日本でいうと「杉本彩」みたいな役をやらせると抜群にうまい。ここ数年はこのパターンで食べていけるだろう。

ときどき見せるえげつなさが韓国人監督らしいテイストだ。
概ね満足だけど、これも最後に向けての展開がものたりないなあ。
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