映画「奪命金」楽しみにしていた作品早速劇場で見てきました。
ジョニー・トー(杜 峰)監督の映画は大好きだ。前作「冷たい雨に撃て約束の銃弾を」も「スリ」も「エグザイル(絆)」もよかった。この映画若干テイストが違うけど、リアル感に魅せられる。中国暴動にビビって香港行っていないけど、また行きたくなる。
金融株式に関わる映画って今まで「ウォール街」などずいぶんあった。
でもここまで一般顧客、金融機関との関係をリアルに描いた映画ってなかったんじゃなかろうか?
完全に日本の金融機関の顧客勧誘の実情とダブる。
金融関係者、特にカウンターで投資信託を売っているBKレディには必見だろう。
もの凄く面白かった。
香港九龍が舞台だ。3つの話が同時並行でスタートする。話をABCとしよう。
A:アパートで殺人事件がおき呼び出される香港警察のチョン警部補(リッチー・レン)が映し出される。彼は妻から新しいマンションの購入しようとしつこくいわれている。仕事を口実に話をそらしていた。
B:銀行の投資信託の販売担当のテレサ(デニス・ホー)は、チーム内で手数料収入が伸びない。成績下位で顧客に電話打ちをするもうまくいかない。ノルマ達成のために、銀行に来た中年女性のチェン(ソン・ハンシェン)が預金で100万HK$持っているのを見てリスクの高いBRICS対象の投資信託商品を売り込む。そしてテレサの元へは客の高利貸しのチャンも来ている。財産を相当持っているが手数料も高いので投資信託は買ってくれない。警官チョンの奥さんもお金を借りにやってくる。
C:気がいいヤクザのパンサー(ラウ・チンワン)は黒社会のまとめ役だ。組長のパーティー中に兄貴分が逮捕される。そのため保釈金を作ろうと、知っている先にたかりに行き金を集め保釈になる。ところが、別のエリアの警察が別の容疑で兄貴をつかまえる。パンサーは同郷の投資会社の社長ドラゴンに相談する。羽振りのいい社長は警察に電話してすぐに兄貴は保釈となる。
そんな中、世界はギリシャ債務危機で相場は大混乱、香港の株式指数であるハンセン指数も大幅下落となり投資家たちは大騒ぎとなった。
B2:投資信託販売のテレサの元にはクレームが殺到、そんな彼女に高利貸しのチャンが1000万HK$を下ろしにくる。チャンは貸主と電話で何度もやり取りをしていた。相手の不動産担保が足りないために半分の500万HK$は置いておいて後でとりに来ると言い帰ってしまう。彼女はデスクに残された500万HK$をとっさにキャビネットに隠してしまう。携帯を忘れたチャンを追っかけたテレサは、駐車場の車の中で血まみれになっているチャンの姿を発見する。残りの500万HK$が自分の手元にあることは誰も知らない。思わずドッキリするテレサだ。。。
C2:パンサーは同郷の社長からお前も投資を勉強しろと言われる。上昇下落の順番の流れはバカラ賭博の出目表に似ているなあと思いながら勉強していたところ、社長が飛び込んでくる。ギリシャ危機で相場急落となりヤバイというのだ。ハンセン指数は10%にのぼる急落だ。焦る社長は高利貸しのチャンに追い証のための融資を申し込む。(金利30%だ)しかし不動産担保が足りない。このままだとまずいとパンサーに高利貸しを襲うように指示するが。。。。
A2:チョン警部補には異母妹がいた。父親は危篤だ。大陸の母親の元へ返そうとする夫を見て、いくらなんでもそれはかわいそうだと義妹と同居すると妻がいいだす。そして夫に内緒でマンションの仮契約をしてしまう。そのための融資(金利7%)をテレサに申し込んでいたが、株式担保のため相場下落で思うような金が借りられない。そんな時テレビニュースでチョン警部補がエレベーターに犯人と閉じ込められていることを知る。
この後も第3の展開が続く。そして大きく分けて3つの話が急接近する。
ぞくぞくしてくる。
このあたりは実にうまいと思う。
一番リアルなのはテレサが投資信託をすすめるあたりである。
表面だけの話でなく、購入者の反論をどう商談でさばいていくのかを丹念に描いていく。ドキュメンタリーみたいだ。ここまでの話はめずらしい。見ていて日本の若い銀行員や証券レディは苦笑いするのではないだろうか。
テレサは高利貸しに投資信託を勧める。投資信託は加入時に2%手数料をとられる。これは日本も同じだ。高利貸しはこんなに手数料を取られたら、ネット証券での自己売買と比較して大損だという。もっともだ。さすがのテレサもそれ以上は言わない。おそらくは日本で投資信託をやっているようなおばさんたちはこの映画見ないだろうから気がつかないであろう。いかに手数料で銀行を儲けさせているかを。。。
最近は銀行の部長と話しても、同一支店にいる期間が短いので短期勝負の投信手数料にかけているのがよくわかる。今は相場がいいからいいけれど、購入したおばさんたちはたぶん売り時に失敗するだろうからまあ銀行だけが儲けで終了の可能性は高い。
香港の街中が出てくるのは映画「スリ」と同じだ。でもあの映画ほどスタイリッシュではない。わりと泥臭い。そこがいい。ヤクザがみかじめ料をとりに行く場面、相場をカジノと同じように出目で勝負するヤクザ、投信営業の厳しさなど万国共通の話題が盛りだくさんだ。殺し合いばかりになりすぎる香港マフィア映画のような残酷さもない。実態がよくわかるだけに非常に好感が持てる。
いずれにせよ重層構造を一つにまとめ上げるという脚本のうまさに脱帽だ!
実によくできている。あと日本の金利の安さを実感するであろう。
ジョニー・トー(杜 峰)監督の映画は大好きだ。前作「冷たい雨に撃て約束の銃弾を」も「スリ」も「エグザイル(絆)」もよかった。この映画若干テイストが違うけど、リアル感に魅せられる。中国暴動にビビって香港行っていないけど、また行きたくなる。
金融株式に関わる映画って今まで「ウォール街」などずいぶんあった。
でもここまで一般顧客、金融機関との関係をリアルに描いた映画ってなかったんじゃなかろうか?
完全に日本の金融機関の顧客勧誘の実情とダブる。
金融関係者、特にカウンターで投資信託を売っているBKレディには必見だろう。
もの凄く面白かった。
香港九龍が舞台だ。3つの話が同時並行でスタートする。話をABCとしよう。
A:アパートで殺人事件がおき呼び出される香港警察のチョン警部補(リッチー・レン)が映し出される。彼は妻から新しいマンションの購入しようとしつこくいわれている。仕事を口実に話をそらしていた。
B:銀行の投資信託の販売担当のテレサ(デニス・ホー)は、チーム内で手数料収入が伸びない。成績下位で顧客に電話打ちをするもうまくいかない。ノルマ達成のために、銀行に来た中年女性のチェン(ソン・ハンシェン)が預金で100万HK$持っているのを見てリスクの高いBRICS対象の投資信託商品を売り込む。そしてテレサの元へは客の高利貸しのチャンも来ている。財産を相当持っているが手数料も高いので投資信託は買ってくれない。警官チョンの奥さんもお金を借りにやってくる。
C:気がいいヤクザのパンサー(ラウ・チンワン)は黒社会のまとめ役だ。組長のパーティー中に兄貴分が逮捕される。そのため保釈金を作ろうと、知っている先にたかりに行き金を集め保釈になる。ところが、別のエリアの警察が別の容疑で兄貴をつかまえる。パンサーは同郷の投資会社の社長ドラゴンに相談する。羽振りのいい社長は警察に電話してすぐに兄貴は保釈となる。
そんな中、世界はギリシャ債務危機で相場は大混乱、香港の株式指数であるハンセン指数も大幅下落となり投資家たちは大騒ぎとなった。
B2:投資信託販売のテレサの元にはクレームが殺到、そんな彼女に高利貸しのチャンが1000万HK$を下ろしにくる。チャンは貸主と電話で何度もやり取りをしていた。相手の不動産担保が足りないために半分の500万HK$は置いておいて後でとりに来ると言い帰ってしまう。彼女はデスクに残された500万HK$をとっさにキャビネットに隠してしまう。携帯を忘れたチャンを追っかけたテレサは、駐車場の車の中で血まみれになっているチャンの姿を発見する。残りの500万HK$が自分の手元にあることは誰も知らない。思わずドッキリするテレサだ。。。
C2:パンサーは同郷の社長からお前も投資を勉強しろと言われる。上昇下落の順番の流れはバカラ賭博の出目表に似ているなあと思いながら勉強していたところ、社長が飛び込んでくる。ギリシャ危機で相場急落となりヤバイというのだ。ハンセン指数は10%にのぼる急落だ。焦る社長は高利貸しのチャンに追い証のための融資を申し込む。(金利30%だ)しかし不動産担保が足りない。このままだとまずいとパンサーに高利貸しを襲うように指示するが。。。。
A2:チョン警部補には異母妹がいた。父親は危篤だ。大陸の母親の元へ返そうとする夫を見て、いくらなんでもそれはかわいそうだと義妹と同居すると妻がいいだす。そして夫に内緒でマンションの仮契約をしてしまう。そのための融資(金利7%)をテレサに申し込んでいたが、株式担保のため相場下落で思うような金が借りられない。そんな時テレビニュースでチョン警部補がエレベーターに犯人と閉じ込められていることを知る。
この後も第3の展開が続く。そして大きく分けて3つの話が急接近する。
ぞくぞくしてくる。
このあたりは実にうまいと思う。
一番リアルなのはテレサが投資信託をすすめるあたりである。
表面だけの話でなく、購入者の反論をどう商談でさばいていくのかを丹念に描いていく。ドキュメンタリーみたいだ。ここまでの話はめずらしい。見ていて日本の若い銀行員や証券レディは苦笑いするのではないだろうか。
テレサは高利貸しに投資信託を勧める。投資信託は加入時に2%手数料をとられる。これは日本も同じだ。高利貸しはこんなに手数料を取られたら、ネット証券での自己売買と比較して大損だという。もっともだ。さすがのテレサもそれ以上は言わない。おそらくは日本で投資信託をやっているようなおばさんたちはこの映画見ないだろうから気がつかないであろう。いかに手数料で銀行を儲けさせているかを。。。
最近は銀行の部長と話しても、同一支店にいる期間が短いので短期勝負の投信手数料にかけているのがよくわかる。今は相場がいいからいいけれど、購入したおばさんたちはたぶん売り時に失敗するだろうからまあ銀行だけが儲けで終了の可能性は高い。
香港の街中が出てくるのは映画「スリ」と同じだ。でもあの映画ほどスタイリッシュではない。わりと泥臭い。そこがいい。ヤクザがみかじめ料をとりに行く場面、相場をカジノと同じように出目で勝負するヤクザ、投信営業の厳しさなど万国共通の話題が盛りだくさんだ。殺し合いばかりになりすぎる香港マフィア映画のような残酷さもない。実態がよくわかるだけに非常に好感が持てる。
いずれにせよ重層構造を一つにまとめ上げるという脚本のうまさに脱帽だ!
実によくできている。あと日本の金利の安さを実感するであろう。
日本も金融危機を経験した同じアジアなので、他人事ではないですよね。
面白うてやがて哀しき…というか、さすがジョニー・トー、うまいなぁと思いました。
この映画好きなので、コメントいただいてうれしかったです。プロフィールにも書いてある通り、香港が大好きなんです。本当はもっと行きたいのですが、なかなかいけなくて最近の事情がわかる映画を見るとうれしくなってしまう次第です。
この映画で、ジョニー・トーは何人かの香港人に焦点を当てていますね。妻にマンション購入を迫られている警察官、成績の上がらない証券レディと顧客、高利貸しの男、投資に目覚めるヤクザと香港にリアルにいそうな連中を複雑にからめていて実に楽しい映画ですね。
ラストのもっていき方もいかにも香港らしいし、やっぱり好きです。またよろしくお願いします。
ジョニー・トー作品との最初の出会いが「ザ・ミッション 非情の掟」だったので、特にジョニー・トー作品には思い入れがあります~。
ありがとうございました。
気がついてみると「ザ・ミッション 非情の掟」はここにアップしていませんでした。これもすごい作品ですよね。
ジョニートーが5人の男たちをスクリーンの中に放つ。まさに香港黒社会に通じる男たちである。香港人はもともとおしゃべりだし、広東語はうるさい。彼は5人の男たちを黙って「ミッション」につかせる。そこがスタイリッシュと言える由縁でしょう。
うーん、新作早く劇場で見なくては!
またよろしく願いします。