映画とライフデザイン

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映画「テトロ」 フランシスコッポラ

2012-07-02 18:58:36 | 映画(洋画 2006年以降主演男性)
映画「テトロ」はブエノスアイレスを舞台に、「ゴッドファーザー」の巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督が年の離れた兄弟の葛藤を描いた物語だ。

モノクロの画面を生かした映像作りは緻密ですばらしい。さすがコッポラというべき映像コンテが最後まで続く。アルゼンチン風の音楽もすばらしく。最後はブラームスの交響曲で締めくくる。
ブラームスの交響曲第1番を最後のヤマで効果的に使用。荘厳で不安を掻き立てられるような旋律が映像にマッチする。

それだけ言うと完璧な映画に聞こえそうだが、ストーリーがいまひとつ面白くない。
次にどうなる?という楽しみで映画に集中するという展開ではない。
ただ娯楽として楽しめなかったが、完璧な構図の映画だった。

アルゼンチンで暮らす兄テトロ(ヴィンセント・ギャロ)に会うため、異母弟のベニー(オールデン・エーレンライク)がブエノスアイレスに降り立つ。テトロは妻ミランダ(マリベル・ベルドゥ)と住んでいた。しかし、名前を「テトロ」と変えた兄はそっけない態度をとるだけだった。高名な指揮者(クラウス・マリア・ブランダウアー)を父に持つ兄弟だが、兄はある衝撃的な事件から生まれ育ったニューヨークの家を飛び出した。本来の名前を捨て「テトロ」と名乗った。そんな兄とは別に義姉は優しくしてくれた。

ある日、ベニーは兄が密かに執筆していた自伝を盗み見てしまい、それをきっかけに兄弟の仲は決裂。さらにベニー自身の出生にかかわる家族の秘密が明らかになっていくが。。。。

現在がモノクロ、過去の回想がカラーというように分ける。チャンイーモア監督「初恋のきた街」を思い起こさせる。パートカラーで演じられる過去回想の画面構成がすごい。
先日見た「愛の残像」でもモノクロ画面の利点が浮き彫りになったすごい映像だったが、さすがにコッポラのこの映画のほうがすごい。
不安定な心理を強調する音楽に合わせて、暴力描写などが強烈なシーンが作られる。

ひときわすごいと思うシーンが3つあった。
1つ目はテトロと妻とのベッドシーンだ。このシーンでのモノクロの光と影のコントラストでうまく表現した2人のシルエットは美しかった。別に美男美女というわけではない。その二人が光と影の中で、静かに戯れる。しなやかだ。露骨に性行為を示すわけでない。「男と女」を連想した。こんな美しいベッドシーンは歴史的?ともいえる気がする。


2つ目は飼い犬の子犬を弟が追いかけて行くシーンだ。子犬が車道に出てしまい、危ないと思った弟がそのまま車道に入り込む。車がそこを避けるが、別の車が逆方向から来て弟が交通事故にあってしまうシーンだ。これにはドキッとした。CGは使っていないと思う。このシーンをまともに撮れるの?危ないなあ。あまりにリアルなので配役さん大丈夫なのかと心配してしまう。
3つ目はテトロが弟の友人たちとドライブに出るシーンだ。そこで写す南米の景色の映像コンテがすばらしい。雪山に向かいながら、その山をモノクロカラーで美しく映し出す。ぞくっとする。モノクロの極地だと思う。そのあとで弟が女性2人と戯れるシーンも悪くない。



あとは脇役としてテトロの妻と同じアパートに住むホセという男の存在がアルゼンチンの匂いを強く出す。
ともに個性あふれる面々で、特にホセの夫婦喧嘩のシーンは笑える。

完璧に盛り付けされた味もいい料理なのに、何か楽しめないという気持ちなのかな。。。

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