映画とライフデザイン

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映画「THE MOLE ザ・モール」

2021-10-16 17:41:56 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )


ノンフィクションドキュメンタリー映画「ザ・モール」を映画館で観てきました。


これって本当にノンフィクションなの?と思わせる凄いドキュメンタリー映画である。国連制裁で貿易ルートを閉ざされている北朝鮮が自国で生産された武器を表立たないで諸外国で売ろうとする取引の一部始終をカメラで捉えるというわけだ。

北朝鮮に関心を持ちデンマークの北朝鮮友好協会に入会した元料理人のデンマーク人が、北朝鮮親善協会のボスとされるうさんくさいスペイン人に近づき信頼される。平壌郊外の汚い建物の中で北朝鮮の武器取引の幹部と密会し、ウガンダの離島で武器工場をつくる計画に関わったり、ヨルダンの密輸商と取引の話をしてシリアへの輸出の依頼をされたりする。

出来すぎたフィクションにも見える映像だ。BBCが関わっているので、信憑性は高い。10年にもわたる数多くの映像をまとめる構成力に優れる映画である。デンマークのマッツ・ブリュガー監督の力量を感じる。とはいえ、二度三度見ないと内容の真意は捉えられないかもしれない。

詳細を語るのも一度見たきりでは難しいので作品情報を引用する。

すべての始まりは、ブリュガー監督のもとに届いた一通のメールだった。その送り主であるコペンハーゲン郊外在住の元料理人ウルリク・ラーセンは、謎に満ちた独裁国家、北朝鮮の真実を暴くためのドキュメンタリーを作ってほしいという。ブリュガーは返答を濁したが、自らの意思でコペンハーゲンの北朝鮮友好協会に潜入したウルリクはたちまち信頼を得て、協会内でスピード出世を果たしていった。そして北朝鮮のピョンヤンでKFA(朝鮮親善協会)会長のアレハンドロという怪しげなスペイン人と出会い、違法の投資ビジネスに深く関わっていくことに。


ウルリクから報告を受けたブリュガーは、元フランス軍外人部隊の“ジム”という男に偽の石油王ミスター・ジェームズを演じさせ、陰ながらウルリクの潜入調査を指揮していく。やがて世界各国でアレハンドロ、北朝鮮の要人や武器商人らとの商談を重ねたウルリクとジェームズは、その巨大な闇取引の全貌を隠しカメラに収めていくのだった……。

⒈正規ルートの貿易から阻害された北朝鮮
何気なくTVを見ていたら、北朝鮮軍部が独裁者金正恩の前で武器のデモンストレーションをしている映像が出た。日本を脅威に陥れるミサイルを作っているだけでなく、工場でシコシコ兵器をつくっている。イスラム国にも渡ったこともあるようだ。麻薬だったり、武器だったり裏社会が取り扱う取引品目が多い。それが数少ない外貨獲得の手段だ。


気候の異変に弱く、国内は飢餓状態のエリアも多いと言われる。コロナで東京オリンピック出場辞退したけど、本当は貧困がひどくて来日できないのかもしれない。外国から来た人は平壌から外へは出ない。隠されたベールに包まれる世界だ。そんな郊外のスラム街の地下で取引をする。成立すると、可憐で美しい北朝鮮の女の子から歌や踊りで接待を受ける。「喜び組」的エロい微妙な世界もあるのであろうか?

この映画では、ウガンダの映像も映し出される。離島の子どもたちが大歓迎で迎えるが、最終的には住民は立ち退かされる。離島をレジャー施設の名目で開発して武器工場を隠密に作る計画だ。誰でも作れるというわけでなく武器工場づくりもノウハウがあり、専門の設計士が設計する。

北朝鮮のスウェーデン大使館員から取引の重要書類を受領する映像も映る。国家をあげての違法取引だ。国連制裁があるので、取引も石油などの別の物品を媒介して迂回するルートになるようだ。

でも、ビジネスのスケール感もそれなりにあるので、こんなこと偽のビジネスマンが長期間バレずにできるのかな?北朝鮮の当局は信頼できる取引者として綿密に調査していなかったのかな?という疑問も残ってしまう。

⒉佐藤優の本での北朝鮮の話
最近出版された佐藤優「危ない読書」という本は、内容がマンネリ化している佐藤優の本の中では、飛び切り面白かった。北朝鮮をうまく取り込めば、日本経済にとって利点が多いという話である。投資家ジムロジャースも北朝鮮の将来について希望的観測を語っているが、佐藤優の著述は妙に説得力がある。


日本の民間企業からすると日朝国交正常化は魅力的である。圧倒的に低コストのアウトソース先となり得るからだ。生きることに必死な北朝鮮の人たちにすれば日本語を学ぶことなどたわいもない話であるし,プログラマーやシステムエンジニアもおり,洋服工場などもある。時差もないので例えば日本の出版社がDTP作業を北朝鮮に発注するようなことも可能だろう。労働者一人当たり日給は200円位か。健康保険年金労災なしで31日労働も可能だ。高官の取り分として月4000円位プラスと想定すれば一人当たり月10,000円で労働力を確保できる。p63
片や韓国は世論の反日感情が強い故に,下手をすれば日本よりも最低賃金が高いためにアウトソース先には不適切だ。もし北朝鮮と韓国が統一されたらその道はなくなる。今後,日本と韓国の関係がさらに冷え込むと,逆に日本と北朝鮮の関係が近づく可能性は十分ある。p63





拉致問題で日朝両国は接点が見出せない。両国で意固地になっている人が多すぎる。ちょっとした発言でも議員の首が飛ぶ。ただ、北朝鮮と国交がある国は英仏をはじめ世界を見回すと少なくない。いったん味方にすれば日本にとってはとてつもないメリットがあるという論点を朝鮮人嫌いの日本人はなかなか気づかないけど重要だ。インチキ経済を抜け出せるかどうかは隣国日本にかかっている。




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