映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ルビースパークス」 ポール・ダノ&ゾーイ・カザン

2012-12-26 21:48:32 | 映画(洋画 2010年以降主演男性)
映画「ルビースパークス」を劇場で見た。
実におもしろかった!脚本、美術、音楽そして出演者すべていい。
好きなタイプの映画だ!

「リトル・ミス・サンシャイン」のジョナサン・デイトン&バレリー・ファリスが同作以来6年ぶりに手がけた監督作ということに目をひかれた。この映画大好きだ。スランプ中の若手作家と現実世界に出現した小説のヒロインが繰り広げる恋を描いたラブストーリーという触れ込みに関心をもった。最近DVDは外れっぱなし、正直あまり見に行きたい映画がない中、ミニシアターでファンタジー的青春映画の楽しさに引き込まれた。


主人公カルヴィン(ポール・ダノ)は作家である。高校中退で書いた作品は人気を集め、天才作家と言われた。まずはその彼が愛犬とともに一人暮らしをしている姿を映す。マスコミの取材を今でも受けることはあれど、タイプ打ちは進まない。新作が書けない。相談している心療内科科医に自分の好きな女性をイメージをして小説を書いてみろと言われる。夢に一人のかわいい女の子が現れる。


ルビー(ゾーイ・カザン)という。小説には関心がない。アートが好きだという。ハッと気が付くと目が覚める。やはり夢だったのだ。その子のことをタイプに打ち始めた。何度か彼女の夢を見た後、ある時兄(クリス・メッシーナ)夫婦が主人公の家に遊びに来た。義姉が引き出しをあけると、女性のブラジャーがある。何これと問い詰められた主人公は犬が隣から持ってきたんだろうという。でもそれにしても至る所に女性用小物がある。おかしいなあ?と思っていたら、家の中で女性の声がする。部屋の中に夢に出てくる女の子がいるではないか?「うそだろ!」と机の下に隠れながら電話しまくる。主人公が外に出ようとすると、夢だと思っていた彼女が一緒に遊びに行こうと誘われる。


2人で一緒に外に出た後、主人公は街のカフェでこっそり昔の同級の女の子と会う。同級生はしつこく主人公に迫っていた。そんな時夢の中にいるはずの彼女が脇から話しかけてきた。昔の同級生に向かって、「カルヴィンの恋人です。」と話しかける。それを見て主人公は驚く。同級生に聞く。「彼女見えるの?」当然とばかりに憤慨して帰っていく。ルビーは嫉妬する。その場を去ろうとするが、カルヴィンが追いかけ2人は抱擁する。


驚く主人公。兄が訪ねてくる。弟の話はどうせの夢の話だろという兄は実在する彼女に驚く。料理を作り始めたら、フランス語を話しはじめた。主人公は小説の中で「SHE SPEAKS FRENCH」と書いたからだ。彼女は主人公が書いた通りのプロフィルになって行くのだったが。。。

エンディングロールになって脚本がkazanという名を見た。覚えておこうと思ったら、俳優のところで2番目に出てくる。「え!」「男女どっち?」なんて思って、解説を読んだらなんとエリアカザンの孫だという。しかもあのかわいい女の子!?これは驚いた。おじいさんはジェームスディーンの「エデンの東」であまりにも有名だし、マーロンブランドの「波止場」など50年代から60年代にかけて大活躍していた監督だ。

最近遺伝の本を読んで、人の能力はかなりの比率で遺伝によることを知った。この間有馬記念で優勝した馬のことを「血統が抜群」と新聞で評していたが、馬にあって人間にないことはない。世襲を否定する人は、遺伝の否定にもつながる。これ自体は潜在能力の否定だ。人間は誰もが比較優位の才能をもっているはずで、カザン家にとっての比較優位である映画の才能を生かした彼女は凄い。



そのキュートなカザンのお相手のポール・ダノが抜群にいい。インテリ風に見えるけど、ちょっとナイーブな男の子。セルロイドのメガネをかけて演じる姿はその昔のジョンレノンの匂いもある。その彼から発せられるオーラが自分の感覚に合う。どうも実生活でも付き合っているらしい。2人の呼吸は確かにあっている。あえてポールと対照的に兄役でマッチョ系のクリス・メッシーナ、母親の恋人役でラテン系濃い目のアントニオ・バンテラスをもってくる所が憎い。配役のうまさだ。

この後主人公の母親が恋人と住む住まいに2人で遊びにいくシーンもある。母親はアネットベニング、自分の好きな女優だ。その恋人がアントニオ・バンテラスというメンバーだが、この家のインテリアがトロピカルテイストでいい。住まい自体にプールがあってリゾート感覚抜群、まわりのグリーンがうまくマッチしている。主人公の自宅は空間が広く使われている現代モダン建築のテイストで別荘とは対照的だがプールがある。ずいぶんといい家だ。衣装もそうだが、小物のセンスもいい。この映画裏方の実力がずば抜けている。それを包む音楽もいい。


いいことばかり言ったが、途中緩慢になりそうな部分もいくつかある。でもすぐに素早くいい方向に向かう。自分が書いた小説通りの彼女が出現するという設定が新鮮だし、笑える場面をいくつか作る。手塚治虫の漫画「火の鳥」に持ち主が自由に性格も設定できるロボットがいたが、それよりも凄い「発明」である。書いたらすぐその通りになる。突然フランス語を流暢に女の子が話しだすシーンは笑えるし、つれないのでもっとくっついてと言ったらべったりする。この脚本1年近く練られたというが、じっくりアイディアが積み重ねられた痕跡がある。それだけによくできていると言える。


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