映画とライフデザイン

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映画「新宿泥棒日記」 大島渚&横尾忠則&横山リエ

2015-08-03 05:40:19 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「新宿泥棒日記」は昭和44年(1969年)公開の大島渚監督作品である。


ずっと気になっていながらなかなか見れなかった作品である。国立近代美術館シネマの特集でようやく見ることができた。

東大入試が中止になる前年の昭和43年といえば、歴史的に新宿は学園紛争で荒れ放題だった印象をもつ。その夏に紀伊国屋書店で万引きをした若者(横尾忠則)をとっ捕まえて社長の元につきだす若い女性書店員(横山リエ)と万引き犯との妙な関係に、紀伊国屋書店社長田辺茂一氏を実名で登場させからませるのが基本ストーリー。そこに当時花園神社境内で赤テントを張っていた唐十郎劇団のメンバーを混在させ、現実か虚実か何が何だかよくわからない世界をつくりあげている。


想像よりも唐十郎の「状況劇場」の存在が大きい。何が何だかわかりづらい前衛劇と映画の根幹となる2人の物語をからませる。
息子の大森南朋たち2人が現代映画界を引っ張る麿赤兒と途中から出てくる李礼仙の存在感が凄い。
また、実写と思われる学生運動をひきいる暴徒たちによる新宿東口交番への乱入を映しだす。

1.横尾忠則
もうこのころにはイラストレーターとして、一定の地位を築きあげているころである。寺山修二や三島由紀夫とも一緒に仕事をしていた時代の寵児だった。ここでは劇中役に岡の上鳥男なんて妙な名前をつけている。田辺氏の出身校にあわせて慶應義塾の勝利の歌「丘の上」をひっかけたようだ。
俳優ではないので棒読みである。でも妙に味があり、状況劇場の赤テントの中で由比小雪役で活躍する。最後にむけての横山リエとのネチッコイからみは横尾ファンにとっては貴重な映像だろう。

2.横山リエ
当時まだ20歳である。それにしても美しいし、大人の女の雰囲気を醸し出す。そして脱ぎっぷりが潔い。そののち高橋洋子主演「旅の重さ」や「遠雷」あたりでも主演級の活躍をする。この映画の出演者は当時の彼女よりもみんな格上なのに、そう感じさせない貫禄をもつ。今でも飲み屋を営んで元気だ。


3.田辺茂一
その昔は遊び人の社長ということでテレビによく出ていたなあ。特に深夜。今回映像で見て妙に懐かしくなった。ただ、セリフの棒読みは横尾忠則と同じようなものだ。この映画はかなりの低予算と想像されるが、紀伊國屋がスポンサーになったのであろう。書店内でかなりの部分撮影されているし、ちょっとだけ出るのではなく田辺社長の出演場面が多い。いかにも大島が敬意を表している印象をもつ。


4.唐十郎&李礼仙
いきなり新宿東口広場で、裸でパフォーマンスをする唐十郎を映しだす。入れ墨をしたふんどし姿だ。なんかよくわかんねえなあ。と思っているうちに映像が変わる。そののちも何度か出てくるがよくわからない存在だ。

しかし、途中から赤テント内の光景を映しだすようになってから、少し様相が変わってくる。特に、李礼仙のエキゾティックな表情にインパクトの強さを感じる。実際に唐十郎の状況劇場はそのころ新宿花園神社でテント劇をやっていたようだ。隣のゴールデン街からもたくさん観客が流れていたんだろう。もしかして大島渚は当時アングラで人気の唐十郎を撮るためにこの映画をつくったのかなという気がしてくる。

昭和30年代に松竹でとった大島渚作品と比較すると、ちょっと肌合いが違う。先ず何より金がなくてつくったという匂いがプンプンする。

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