縄文土器がまだなかった昔は当然土鍋もありません。食料を煮ることが出来ませんから焚火で獣肉や魚を焼いて食べていたのでしょう。生でも食べたのでしょう。
獲物を切る石器しか無いのですから随分と不便な生活だったに違いありません。
それでも日本には4万年くらい前から人が住んでいたのです。見事な石器が各地から多数発見されています。そんな時代に興味が湧き、以下のような記事を掲載してきました。
私の郷土史(2)旧石器時代から江戸時代までの小平市鈴木町の変遷
所沢市砂川遺跡と岩宿遺跡から出た旧石器時代の石器の写真と日本の旧石器時代
相模川中流は考古学的史跡の宝庫・・・3層、4層と住居跡や古墳が集中
日本に人間が住み始めたのは何故4万年前からと言うのでしょうか?・・・旧石器捏造事件の起きた原因
以上の記事を書きながら何時も疑問に思っている事があります。それは石器や住居跡の年代決定の誤差や間違いの有無です。
発掘された地層が整然と層状になっていれば年代がわかると言います。その上、放射性炭素の原子量14の含有量を測定すれば明確に分かると言います。
特に1970年代に出来たAMS法ではサンプル量も1mgと少なくて良い上に測定時間も1時間程度で良いので従来のベータ線測定法より各段に精度が上がりました。
そしてASM放射線炭素測定法の年代と、年輪法から推定した年代や、他の放射線種の半減期から推定した年代と比較し、正しい年代が決定できるようになったのです。その誤差は10万年以内ならプラス・マイナス50年程度と言われています。
しかし実際の旧石器の製作された年代がそれほど正確に決定出来ないという疑問が起きます。
そこで相模原市の田名向原遺跡展示場へもう一度行ってみました。
下に示した地層断面から発見した住戸跡の年代は21000年よりは新しく、18000年前の火山灰で出来たL1Hローム層よりは古いという結論がでます。
ですから発見された住居跡は19500年プラス・マイナス1500年と推定されます。
ところが展示物ではすべて2000年前という表記になっています。その根拠が下の図面です。
縦軸が住居跡の炉から採取した炭からAMS法で測定した年代で、17000年前と出ました。図面の右下がりの線を用いてこの17000年前を正しい年代に補正すると丁度20000年になります。その誤差は図のプロットの丸の直径が約500年ほどに相当しているのでプラス・マイナス500年と読み取れます。
それはそれで良いのですがこの展示方法には私は以下の理由で大きな不満を持っています。
(1)上の地層の断面図でいろいろな地層の年代が書いてありますが、その推定方法の説明が皆無なのです。
(2)田名向原遺跡の住居跡の年代を決める時、相模川の富士泥流層を鍵層にしているようですが、その泥流層を21000年前に出来たと明記しています。しかしその推定方法の説明が一切ありません。
(3)地層の古さは多分、その層に埋まってあった炭のASM放射線炭素測定法で出た年代を較正して真の年代を求めた筈です。
ところがそれぞれの地層に何個の炭が埋まっていて、誰がASM放射線炭素測定法で推定したのか展示がないのです。藪から棒に突然年代の数字が出てくるのです。
(4)年代を推定した方法と推定した科学者の名前が明記してありません。つまり責任者が不明なのです。
大変不満に思っていましたので今日は国分寺発掘物展示館に行ってきました。若い学芸員にこの質問をしました。彼は私の質問の意味をすぐに理解して「図書コーナー」へ連れて行きました。そして下のような本を教えてくれました。自分で少し読んで見ました。専門家の書いた学術書でした。私の疑問は素人過ぎて噛み合いません。
若い学芸員は年代決定は地層が乱れていると大変困難で、炭のサンプルを採取するのも余程のベテランでないと難しいと独り言のように言っていました。
そんな訳で上の疑問はそのままです。どなたか、お教え下さいませんでしょうか?
この誤差の問題は根気よくべ勉強しながら続編を書くつもりです。(続く)
====参考資料=============
古富士泥流
http://jiten.biglobe.ne.jp/j/eb/a1/2a/62eba0faacbc8829c3fea6483a5da917.htm
古富士泥流(こふじでいりゅう)とは、今から約10万年前の富士山の古富士期と呼ばれる火山活動のうち、特に2~3万年前の噴出物が堆積した地層の一種。
古富士泥流層は、この古富士の火山活動の末期の泥流を含んだ火砕流の流出によって形成された。火口から噴出した火山灰、火山砂が大量の水蒸気とともに噴き出し滝に勢いよく流れ斜面を下り、川筋に入り込み谷を埋めるように流れていき、堆積することで地層を形成した。
泥流は四方に流下し、西麓、富士宮市から富士市にかけて天子ヶ岳、大石寺の北側田貫湖周辺からその南の広範囲に、北東では山梨県の都留市から大月を経てさらには富士山から約40km先の猿橋まで、東麓では御殿場から小山町までのJR御殿場線の両側、須走登山道と御殿場登山道に囲まれた馬返しより下部に古富士泥流層の存在が確認されている。
放射性炭素年代測定
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E5%B0%84%E6%80%A7%E7%82%AD%E7%B4%A0%E5%B9%B4%E4%BB%A3%E6%B8%AC%E5%AE%9A
炭素14(14C)は、約5730年の半減期で減じていく性質をもっているため、これを利用して試料中の炭素同位体12/14比から年代を推定することができる。測定限界が元の約1/1000である場合、約6万年前が炭素14法の理論的限界になる(実際の測定では、β線測定法では3~4万年程度、AMS法では4~5万年程度が測定限界)。放射性炭素年代は、BP (Before Present もしくはBefore Physics) で表記されるが、これは大気圏内核実験による放射線の影響をあまり受けていない1950年を起点として、何年前と実年代が表記される。
ベータ線計測法
最初に開発された測定法は、ベータ線計測法といい、炭素14が電子と反電子ニュートリノを放出して窒素14(14N 普安定同位体の窒素)に壊変するときに放射されるベータ線を検知して数える。現代の炭素1gでも4~5秒に1個しか壊れないので、計測には時間がかかり、試料もグラム単位で必要とされる。
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AMS 法
1970年代末に、加速器で炭素14を直接数えるAMS(Accelerator Mass Spectrometry = 加速器質量分析計)法が提案され、必要な試料量(1mg程度)、測定時間(30分~1時間程度)共に大幅に改善され、高精度化・高効率化になってきた。また約6万年前まで測定可能となった。装置の小型化に伴い多くの施設で入手可能なレベルになってきた。
年代較正
大気中の炭素14量は、宇宙線の変動や、海洋に蓄積された炭素放出事件を反映して変動してきた。そのため、計測結果に誤差が生じている。現在では年輪年代測定との照合により、およそ1万年を少し遡る時点まで放射性炭素年代値 (BP) と実際の年代の対応表が作られている。年輪年代の及ばない古い年代は、およそ24,000年前までは、サンゴのU/Th(ウラン / トリウム)年代と照合されている。
較正曲線を用いて較正された年代値、つまり、炭素14年代を実際の年代に較正(基準に照らして正す)したという意味であり、西暦1950年を起点とした年数には calibrated(較正済み)を意味する「cal」をつけて「calBP」で表される。あるいは西暦紀元を基準とする場合は「calBC」ないし「calAD」と表す。較正年代は、暦年代 (Calendar year) とも呼ばれ、「実際の年代」という意味である。ちなみに、炭素14年代は「14C BP」となる。
この泥流が2~3万年前に頻繁に火山噴出物として流出した要因として、この時期が最後の氷河期と重なることがあげられる。山頂に積もる氷河は噴火の熱によって溶けて水蒸気となり、それが火山砂や火山灰と混ざることで泥流となったのだろうと考えられている。古富士の火山活動は富士山の歴史上最も巨大であり、摂氏500度以上の溶岩が火口から流れ出た。泥流を作りだした水蒸気は上空で大きな積乱雲となってあらわれ、泥流の速さは実に時速70キロ以上だったという。
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