日本人が忘れたい満州国のことを今更持ち出して恐縮しています。
しかし安倍総理が村山謝罪文を変えようとし、アメリカの反対を押し切って靖国参拝をしました。そして安倍総理は東京裁判を否定しています。
これらの行動は日本の中国侵攻と満州建国の正当性を主張しているように判断され、アメリカ政府は本気で怒り出したのです。これを敷衍すれば真珠湾攻撃も正しかったと主張しているようなものです。
終戦後、このような思想の持ち主が総理大臣になったのは初めてのことです。
それは日本の歴史の一齣として静かに眺めるほかありません。
しかし欧米諸国は日本の行った中国占領と満州建国を客観的に見ているのです。そうして中国へ同情しています。それが人間の心情というものではないでしょうか。
1910年に朝鮮を併合したときは、事前にイギリス、アメリカ、ソ連の合意を得ていたのです。しかし満州j建国の場合には事前合意無しに関東軍が勝手にしてしまったのです。
当然、アメリカ、イギリス、ソ連が怒り出し、中国が国際連盟に提訴し、1932年に国際連盟からリットン調査団が派遣されたのです。
リットン卿の報告書は2つの結論を示しています。
張作霖を爆殺し、柳条湖事件を起し、満州事変を行っている日本軍の行動は自衛の戦争とは認められないと総括しています。
その上で満州地方における日本のいろいろな既特権は尊重されなければいけないと明らかに書いてあります。
この報告書を受けて、後に国際連盟は満州国を国際管理する決議をし、日本はそれを不服として国際連盟を脱会するのです。これが真珠湾攻撃とその後の太平洋戦争への一番大きな原因になったのです。
三国同盟のドイツ、イタリアなど枢軸国側の国々は満州国を承認しました。
しかしそれ以外のイギリス、アメリカ、ソ連、フランスなどなどは日本が中国を侵略し、勝手に満州を建国したと非難したのです。
その満州建国を指導して、続いて太平洋戦争をした東條首相らの当時の指導者を東京裁判で死刑にしたのです。この裁判の正当性を日本はサンフランシスコ講和会議で認めているのです。それから日本の戦後体制が出来上がってきたのです。
安倍総理は正式発表ではありませんが東京裁判は間違っていると言っています。その東京裁判に基いて出来上がった戦後体制(戦後レジーム)はご破算にして本当に独立した日本を取り戻すべきだというのが安倍総理の主張なのです。
安倍総理はその主張を軽々しくは言いません。慎重です。しかしアメリカ政府は1年位前から安倍総理の真意を見抜きはじめ本気で怒りだしたのです。
例えば親日派で有名なアーミテージ氏すら安倍総理の靖国参拝を厳しく非難しているのです。
以前に能天気な鳩山総理が米軍基地は沖縄から撤廃すると言ってアメリカ政府の失笑を買いましたが、今回のアメリカ政府の怒りは非常に根深いものなのです。
あなたは「アメリカ政府が怒りたければ勝手に怒れば良い」と簡単に言いきれますか?
非常に複雑で厄介な歴史的な展開になって来たものです。
それも時代の変化なのでしょうか。それも日本という国の運命なのでしょうか。
===参考資料:リットン調査団と報告書の骨子==========
1931年(昭和6年)、南満州鉄道が爆破される柳条湖事件が発生した。翌年、関東軍は清最後の皇帝溥儀を執政として満州国を建国した。同年3月、中華民国の提訴と日本の提案により連盟からリットン卿を団長とする調査団が派遣され、3カ月にわたり満州を調査、9月に報告書(リットン報告書)を提出した。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%B3%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E5%9B%A3
調査団はまっすぐ満洲入りするのではなく、日本、中華民国(上海、南京、北京)の視察も行っている。日本では荒木陸相、中華民国では蒋介石、汪兆銘、張学良、満洲国では当時「執政」の座にあった溥儀と会談している。さらに満洲で抗日活動を続ける馬占山将軍との会見も試みたが、日本側の反対に会い実現できなかった。調査団の視察は1932年6月に完了。8月より北京で調査報告書の作成を開始し、10月2日、報告書を公表した。
報告書では、もと不毛の荒野であった満州の住人の大半がいまや支那人でありこれは日本の地域経営の成果である、この地域の主要勢力であった張作霖はこの地域の独立を志向していたのではなくあくまで支那の政権であると自認していた、支那中央政府の権力が極めて微弱であり日本人が保護されていない、といった中華民国と満洲国の実情を述べた後、下記のように論じている。
(1)柳条湖事件及びその後の日本軍の活動は、自衛的行為とは言い難い。
(2)満洲国は、地元住民の自発的な意志による独立とは言い難く、その存在自体が日本軍に支えられている。
と、中華民国側の主張を支持しながらも、
(3)満洲に日本が持つ条約上の権益、居住権、商権は尊重されるべきである。国際社会や日本は支那政府の近代化に貢献できるのであり、居留民の安全を目的とした治外法権はその成果により見直せばよい。一方が武力を、他方が「不買運動」という経済的武力や挑発(irritation)を行使している限り、平和は訪れない。
などの日本側への配慮も見られる。
上の写真は靖国神社に参拝したリットン卿(杖を持っている人)とその一行。 http://www.asahi.com/international/history/chapter05/01.html
上の写真では杖を手にした人物がリットン卿です。 http://ktymtskz.my.coocan.jp/agia/mantetu3.htm
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りしてまいります。後藤和弘(藤山杜人)