毎日、いろいろなことが起きるものですね。今朝の新聞を見たら原節子さんが亡くなっていました。戦後たくさんの映画を見て憧れていた女優です。引退後は完全に姿を消すという毅然とした大女優でした。女優の矜持を守った生き方にも感心していました。淋しくなります。・・・・原節子さんのあの世での幸せをお祈りいたします。・・・・
さて混迷の続く中東に目を向けるとトルコがロシアの攻撃機を撃墜しました。領空を侵され、シリア内のトルコ系のトルクメイン反体制軍をロシア機が爆撃していたからです。その上トルクメイン反体制軍はパラシュートで降りて来るロシア兵を銃撃して殺してしまったのです。救助に向かったロシア軍のヘリコプターも攻撃されました。
この予想もされていなかった事件で、アメリカとフランスが頭を抱えています。シリア情勢はますます混迷を深くしているのです。
この中東の混戦状態を見ると、アメリカ人、ロシア人も含めてヨーロッパ人は残忍で戦争が好きな人々のように見えます。
その文化には暗い闇がひそんでいるようです。
しかしその一方、ヨーロッパ文化には素晴らしい側面もあるのです。それは人類の歴史に燦然と輝く文化なのです。音楽・絵画・建築・文学などなど、人類の叡知と優れた感性を示しました。
その素晴らしさを全て理解することは非才な私には出来ません。
しかし25年続けたヨットの趣味を通じてその素晴らしさの一部を体験的に理解出来たのです。今日はそのことを書いてみたいと思います。
本で読んだり、想像したりして「理解したつもり」のヨーロッ文化ではないのです。机上の空論ではなく体験的に理解出来たことです。
25年間、独りで、ヨットという西洋の小型帆舟を走らせて骨身に沁みたことを書きます。それは「帆船はヨーロッパ文化の神髄」という私の体験的理解なのです。
一般に日本人はヨットに関心がありません。
まず2008年に撮った帆走中の4隻のヨットの写真を示します。場所は霞ヶ浦の土浦の沖です。
上の写真はディンギーと呼ばれる小型のヨットです。
この小さな帆舟には三角形の2枚の帆がついていて写真の右の方向に走っています。それも帆の開き方から風上に向って走っているのが分かります。
風に向って走れる帆舟を改良に改良を重ね、完璧な構造を作ったのがヨーロッパ人なのです。
中国の船も日本の船も風上にはほとんど登れないのです。
上の写真は西洋の帆舟をもう少し大きく写した写真です。
真ん中に胴体の中に、「船室」のあるヨットが2隻写っています。右側にカバーのかかった大きなモーターボートも写っています。
高いマストが一本立っています。マストの前後に大きな帆を2枚てっぺんまで上げられるような構造になっています。ちなみに黄色の線の描いてある帆舟は私が2011年まで、昔13年間乗っていた舟です。
こんな高いマストに帆を上げて、横風を受ければ簡単に横転しそうです。
私自身もそれが心配でした。強風で横転しそうに傾いたことは何度も経験しました。しかし不思議にもしばらく我慢していると帆舟が自分で立ち上がるのです。その復元力の大きさには何度も驚いたものです。
上の写真は前方の横45度の方向から風を受けて走っているヨットです。乗っている私はこんなに傾いても悠々としています。
傾いても絶対に横転しないことを体験的に分かっているからです。
上の写真はヨットの大きな復元力の原因になっている船底から下に伸びているキールを示しています。2008年に撮った写真です。
この舟は昔、私が1988年から足掛け1998年まで10年間乗ったものです。その後は群馬県のある方が美しく保ちながら大切に乗っています。ヤマハ19という現在は船齢37年くらいの帆舟です。
この写真の右側に大きくぶら下がっているのが舵です。
この大きな重い舵の前方の船底から鉄製のキールがぶら下がるように固定されています。写真の真ん中より少し左に舵より小さく写っていますが、実際は舵より広く大きな鉄製の板です。
これこそが復元力の秘密のカギなのです。舟の全重量の三分の一以上から半分近くの重量があります。
沖で強風に吹かれて、45度以上も傾いたこのヨットにしがみついて我慢していると、間もなく立ち上がってくれるのです。その度に西洋人に助けられたと実感するのです。体験的に西洋文化の素晴らしさが理解できたような気分になるのです。
その上、このキールのお蔭で横流れも防げます。ですから2枚の三角形の帆を立てると風上45度までは登れるのです。45度ずつジグザグに登れば、完全に風上に向って走ったことになります。
この様に完全に風上に向って走るのがヨットの一つの醍醐味で、風上に向かって走っている間中、前のジブセイルのすその綱を握っている家内が、「西洋人は偉い、偉い」と呟いているのです。私も同感です。
ヨットという小型帆船を走らせていると、その構造や部分品には全く無駄というものが無いのです。不必要なものをそぎ落として、そぎ落として軽くしてスピードが出るような構造にしてあるのです。それは合目的性の極致なのです。
不必要なものをそぎ落としても、必要なロープや部分品は間違いなくついています。
そのお陰で強風の怖い状況から逃れたことが何度もありました。その度に西洋人の英知に感服するのです。
この帆舟の体験のあと、横浜に係留展示してある大型の帆船日本丸を何度か訪問して、その船長の大西さんに詳しく説明してもらいました。
上は2008年に撮った日本丸の姿です。
詳しいことは省略しますが、ただその時年老いた船長の云った言葉が忘れられません。「帆船はヨーロッパ文化の神髄」だと言ったのです。そして帆船を実際に体験するとヨーロッパ文化が判るとも言っていました。全く同感です。
どんな民族文化でも悪い性質の文化と素晴らしいものとの両方があるものです。
現在、中東での戦乱はヨーロッパ文化の悪い部分が露呈されています。しかしヨーロッパ文化には皆さまご存じのように素晴らしいものがあるのです。今日は私が体験したヨーロッパ文化の素晴らしいほんの一部分をご紹介いたしました。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
=====参考記事2件==================
横浜に展示、係留されている日本丸のこと:
・・・・・この日本丸を訪問すると、一番、目立つのがロープ類です。
ところが、帆船の船乗りはロープという言葉は絶対に使わないのです。
使用目的別にハリヤードとかステイとか固有の名前で呼ぶのです。
日本丸では29枚の帆と横桁(ヤード)を動かすためのロープが245本ついているそうです。
甲板上の装置は全て人力で動かします。ロープを手で引っ張ってみて、何処が動くか見ればロープの操作方法が理解できるのです。
その仕事をするのがセーラーという水兵達なのです。セーラーは直訳すれば帆走員です。水兵というと誤訳になります。そのセーラーを管理するのがオフィサー(将校)です。
こような海軍の組織もヨーロッパ文化の一部として高く評価すべきと思います。・・・・・・・
(訪問した日時:2008年4月25日午後2時、横浜市西区みなとみらい2-1-1岸壁にて)