昔、漢文の授業の時、「鼓腹撃壌」という述語を習ったことを憶えている方も多いと思います。「腹鼓を打ち、足踏みをして歌いながら楽しむ」という意味ですが「日が昇れば耕作し 日が沈めば休息する。 水が飲みたければ井戸を掘って飲み。 食べ物を食べたければ田を耕す。 帝の力が、どうして私に関わりがあろうか」という詩の一節なのです。
上の文章の中の「帝の力」を「民主政治」と置き換えてみましょう。
現在、日本には民主政治が定着していて、政治に関心が無くても多くの人は幸せな生活が出来ます。ですから趣味の生活を楽しみ「民主政治」のことを考えない人が多いのです。
しかし趣味の生活にだけ耽っていると、アメリカで、民主主義崩壊の兆候が起きていることに気がつきません。
アメリカの有力紙がみな「トランプ氏は民主主義への脅威」と論調を繰り広げていることを見逃してしまいます。
太平洋の向こう側で騒いでいることに無関心な人もいます。趣味の生活だけに興味があり、何故アメリカで大騒ぎをしているか理解しないのです。
しかし人それぞれですから、それも良いでしょう。誤解しないで下さい。私はそういう人を非難しているのではありません。
しかし私自身は非常に驚き、怖い社会現象だと注意深く見守っています。
民主主義の本家本元のアメリカで民主主義が崩壊し、独裁政権が生まれる可能性のある現象が起きているのです。
独裁政権はミャンマーやタイで過去にありました。軍事クーデターで起きたのです。
そして中国や北朝鮮では共産革命戦争の結果出来たのです。
しかるにアメリカでは民主的な大統領の予備選挙で差別主義、排他主義のトランプ氏が人々の支持を集めて優勢な立場を維持しているのです。
昔の話ですが、議会制民主主義のドイツでヒットラーが扇動的な演説で選挙を勝ち続けて、しまいには独裁者になった歴史があります。
ヒットラー独裁政権成立の背景は、現在のトランプ氏支持の背景とは全く違います。ですから全然類似性は無いと主張する人もいます。部分的にはその主張に同感です。
しかし連続する予備選挙を勝ち抜いて排他的な政権を作ろうとしているトランプ氏は形の上ではヒットラーの場合と非常に似ているのです。
両者は演説の天才です。政治に関心の無かった人々を自分の支持者にしてしまうのです。
現在の社会に不満を感じている人々の心を外国人へ対する憎しみや復讐心へ変えて、それを煽り立てる弁舌なのです。人間の持ってる悪い情念を刺激し、それを煽り、増大して、自分がその憎しみを解決すると言うのです。偉大なアメリカにして、憎しみや恨みを晴らしてやると大声で叫ぶのです。
これこそが、輝かしいアメリカの民主主義の歴史を崩壊させる脅威になっているのです。ですからこそアメリカの良識ある人々や大新聞の論説委員がこぞって警鐘を鳴らしているのです。
しかしいつの世も良識ある人々は少数派です。この点が私の心配なのです。
日本は豊かな国になりました。政治に関心が無くても楽しく毎日を暮らせます。ましてや海の向こうの外国のことなど心配しなくても幸せに暮らしていけるのです。
ですから現在アメリカで起きている現象に関係が無いと考えるのは自然なことです。
しかしよく見ると、「人間の持ってる悪い情念を刺激し、それを煽り、増大して、自分がその憎しみを解決すると言う政治家」は日本にも多くいます。実例を書かない方が良いと思いますが、原発再開や安保体制の改革や日中関係などのいろいろな問題で、人々の恐怖心を刺激し、自分の支持者にしようとする政治家は少なくないのです。
「人のふり見て、わが身をなおす」という言葉のあるようにアメリカ社会で起きていることを見れば日本のことを正しく直すことが出来るのではないでしょうか。
今日の挿絵代わりの写真は昨日撮ってきた桜の花の写真です。
それはそれとして、
今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)