後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

厳しい共産党独裁下の中国にもある宗教の自由

2016年08月09日 | 日記・エッセイ・コラム
神の存在や宗教を否定するのが本来の共産主義です。
中国の共産党独裁政権の厳しさをみるととても宗教の自由があるとは思えません。
マスコミには中国政府内の激しい権力闘争や、中国海軍の尖閣諸島領海の侵犯などの殺伐としたニュースが何度も出ます。そんな社会に宗教の自由なんて本当にあるのでしょうか?

ところが宗教の自由が厳然と存在しているのです。しかしある限定は存在するのですが。
この「ある限定」の内容は後にして、まず道教寺院の玄妙観での光景の写真をご覧ください。玄妙観は蘇州にあります。

1番目の写真は夕暮れの玄妙観の境内です。人々が寛いで歩いています。乳母車を押している母親もわき見をしながらのんびり歩いています。のどかで平和な光景です。

2番目の写真は祀ってある神々の像です。本尊を補佐する神々のようです。

3番目の写真では中年の女性がお賽銭箱(功徳箱)にお金を入れて立ったままお祈りをしています。息子の大学入試が合格するように祈っているのかも知れません。

4番目の写真の右側の女性は拝み台の上に膝まづいて祈ってます。その方が同じお賽銭なら願い事がかないそうな気がします。

5番目の写真では女性が膝まづいています。

6番目の写真では男性がおみくじを買って思案しています。以上の写真は、中國に住んでいた親しい友人が2014年9月に蘇州で撮ったものです。

日本の新聞にこのような穏やかな中国人の暮らしぶりの写真は出ません。 しかし日常の中国人は静かに家族の平安を祈っているのです。 われわれと変わらないのです。

さて道教は中国の民間信仰で、日本の神道のような多神教の宗教です。
そして道教は仏教と儒教とともに中国の三大宗教と言れています。ですから大部分の中国人はこの三大宗教を信じています。そのどれかを信じる人もいますが、多くは同時に、それぞれを信じています。
その他に2300万人ほどのキリスト教信徒や1800万人ほどのイスラム教徒がいます。なおこれらの信徒数の数は資料によって多少違います。
中国の仏教はおもにチベット仏教(ラマ教)と、日本と同じ大乗仏教です。
中国の宗教につぃては末尾につけた参考資料をご覧下さい。

最近、中国は宗教ブームでいろいろな宗教が活性化し、それぞれの信者数が急増しているようです。 その理由は独裁政治を続けている中国共産党が宗教の自由を大幅に認めているからです。
しかしそれには「ある限定」があるのです。
その内容は、「共産党へ楯突かない限り」というものです。
中国の民主化を主張したり、独裁政治を批判しない限り、自由に宣教し、自由に信仰してて良いのです。
ただし全ての宗教組織は政府へ届けるのが命令されています。
この宗教の流行は今後も続き、中国では宗教はますます盛んになると思われます。
そこで中国の宗教や信仰の中身を理解すれば中国人への理解が一段と深まります。それを理解するカギになるのが道教です。
道教寺院は日本の神社のように大小さまざま何処にでもあります。
道教には理路整然とした明快な教義も理屈もありません。賽銭を上げて拝めば、家内安全、無病息災、商売繁盛になるのです。入試も合格しますし、結婚も出来ます。よろずの願い事をかなえてくれるのです。
祀られている神様は関羽のような英雄であったり、地方の偉人であったり、千差万別です。立派な人が死ぬと、人々が守り神として祀るのです。
この様な信仰は日本の神道と非常に似ています。 日本人の多くは仏教と神道の両方を信じています。
同じ様に中国人は仏教徒もキリスト教徒も無宗教の人々も道教寺院にお賽銭を上げて家族の幸福を祈るのです。
道教の寺院(宮観)は漢民族が住んで居る場所なら世界中にあります。
日本人が昔、樺太や満州に神社を建てたように道教寺院は漢民族の守り神なのです。民族の宗教なのです。

今日の記事は中国の宗教事情について明るい面を書きましたが、法輪功弾圧やローマ法王との長年の対立など暗い側面もあるのです。
どちらも共産党独裁の結果、必然的に起きたことです。これらの問題はいずれ稿をあらためて何時か書いてみたいと思います。

しかしどんな民族でもお互いに仲良くなるためには、それぞれの平凡な毎日の風景を見れば良いのです。私はいつもそのように信じて来ました。
日本と中国とのあいだに絶対に戦争が起きないように祈っています。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたしす。後藤和弘(藤山杜人)
======参考資料:「中国の宗教政策」===========
 1997年10月発表の中華人民共和国・国務院報道弁公室の宗教に対する政策の概略;
http://j.people.com.cn/special/religion/baishu.html
1.中国の宗教の現状
2.宗教信仰の自由の法的保障
3.司法と行政による宗教信仰の自由の保障および監督
4.独立自主運営の宗教事業に対する支持
5.少数民族が宗教を自由に信仰する権利の保護

1.中国の宗教の現状

中国では様々な宗教が信仰されている。中国には主に、仏教、道教、イスラム教、カトリック、キリスト教の信者がいる。中国公民は、信仰する宗教を自由に選び、自分が信じる信仰を表現することができ、また宗教的身分を明らかにすることができる。統計によると、国内には宗教を信仰している人々は1億人おり、宗教活動施設は8万5千ヶ所、宗教関連の教職員はおよそ30万人、3千以上の宗教団体がある。これらの宗教団体は、宗教関連の教職員を育成するための宗教学院・大学74ヶ所を運営している。

――中国では、仏教は2千年の歴史を誇る。中国には現在、仏教寺院がおよそ1万3千ヶ所あり、出家した僧侶・尼僧は20万人、そのうち西蔵(チベット)系仏教のラマ僧は12万人、活仏は1700人、寺院は3千ヶ所、巴利語系仏教の比丘(びく)や長老はおよそ1万人、寺院は1600ヶ所に上る。

――道教は中国で生まれた宗教であり、その歴史は1700年以上も前に遡る。国内には道教寺院1500ヶ所があり、2万5千人以上の乾道、坤道の道士がいる。

――イスラム教は7世紀に中国に渡った。イスラム教は主に回族、ウイグル族など10の少数民族の間で信仰されている。これらの少数民族の人口はおよそ1800万、モスクは3万ヶ所、およそ4万人の伊瑪目や阿ごう(勹+言)がいる。

――カトリックは7世紀に中国に渡り、1840年のアヘン戦争後、信者の規模が増えた。中国には現在、カトリック信者400万人、教職員4千人がおり、教会などの活動施設4600ヶ所がある。

――キリスト教は19世紀に中国に入り、アヘン戦争後、信者数が増加した。中国には現在、キリスト教信者1千万人、宣教師1万8千人がおり、教会1万2千ヶ所、活動場所や集会所2万5千ヶ所がある。

中国で全国的な活動行なっている宗教団体には、中国仏教協会、中国道教協会、中国イスラム教協会、中国カトリック愛国会、中国カトリック教主教団、中国キリスト教三自愛国運動委員会、中国キリスト教協会などがある。各宗教団体は、独自の規定に基づいて、指導者や指導機関担当者を選挙、選出している。

中国の各宗教団体は自主的に教務活動を進めており、必要に応じて、宗教学校の開校、宗教経典の発行、宗教的刊行物の出版、社会公益事業を行なっている。中国は各国同様、宗教と教育の分離を原則としており、国民教育に宗教教育が持ち込まれることはない。一部の大学や研究機関では、宗教学教育や研究が行なわれている。各宗教組織が運営する宗教学校では、その宗教の必要性に基づいて、宗教的な専門教育が行なわれている。宗教教職員による正常な教務活動については、宗教活動の場所で、あるいは宗教的習慣に基づいて信者の自宅で、あらゆる正常な宗教活動が行なうことができ、これらは法的により保護されており、いかなる干渉も受けない。

1966年から1976年にかけての「文化大革命」では、宗教をはじめ、中国社会のあらゆる分野が大きな被害を受けた。中国の各級政府は「文化大革命」の誤りを訂正する過程で、宗教信仰の自由を保障する政策を復活させ、政策を確実に実行するために、大きな努力を払った。

長い歴史の中で、中国にあるあらゆる宗教文化は、中国の伝統的思想や文化の一部に組み込まれている。中国の宗教信者の間には、国と宗教を愛する伝統がある。中国政府は、宗教界の信者が団結して積極的に国家建設に参加することを支持し、推奨している。

中国では、あらゆる宗教の地位は平等で、調和と共存を基礎としているため、これまでに宗教的紛争が発生したことはない。宗教を信じる人々と信じない人々はいずれも互いを尊重し、団結して付き合っている。
・・・以下省略・・・・