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後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

石原慎太郎氏の欧米人差別とトランプ氏の差別主義の共通性

2016年08月22日 | 日記・エッセイ・コラム
最近の文芸春秋の9月特別号に石原慎太郎氏が、「日本は「白人の失敗」に学べ」という記事を書いています。

この記事の中で彼は白人の植民地収奪が現在のイスラム過激派のテロの原因になっていると書いています。
そして田中角栄氏の失脚は、田中氏がアメリカを怒せたので、アメリカがしたことだと書いています。
さらにアメリカでの人種間対立を悪化させたのはオバマ大統領だと言うのです。

そこで日本はこれらの白人の悪行や失敗から学ぶべきだと言います。
その結果、日本は移民を日本になじませて、入れろと主張しています。
最後の部分ではアメリカの先端的な戦闘機や武器は日本の先端技術が支えていると言うのです。

結論として、「ヨーロッパは衰退し、EU崩壊は目前のこととなりつつある。このままではヨーロッパはもたない。アメリカの人種的分裂もひどくなるばかりである。そんな時代だからこそ、白人でもなく、キリスト教徒でもなくイスラム教徒でもない日本人の役割は重要になっている。日本ほどアメリカが必要としている国は無いと言いたい、混迷を深める世界にあって、最も重要な役割を果たせるのはこの日本であることを、日本人は知っておかなければいけない。」と主張しているのです。
すなわち今後の世界では日本人が一番重要になると自画自賛しているのです。

この記事を読んで私は石原氏は差別主義者で、その上排他的考えの持ち主だと感じました。
そして、嗚呼、これはアメリカの大統領候補のトランプ氏の差別主義や排他主義と同じ性質だと感じたのです。

石原氏は白人を差別し、嫌います。彼等の悪行をあげつらい現在のテロ事件の原因になっているというのです。
アメリカ社会の白人と黒人など人種対立が将来ますます激しくなると言うのです。

一方のトランプ氏は人種にかかわりなくイスラム教徒は差別してアメリカへの入国を禁止すると言うのです。メキシコとの国境に壁を作り、メキシコ人の不法移民を禁止すると言うのです。

石原氏とトランプ氏の排他主義の違いは差別の基準だけです。
石原氏は日本人か白人か黒人かという基準を使います。同じアジア人へ対する考慮が見られません。
トランプ氏はイスラム教徒かキリスト教徒かという基準で差別します。そして不法移民でアメリカ人の職を奪うか否かという基準でメキシコ人を差別し排斥します。

誤解の無いように書きますが民族の違いはその文化の差別から自然発生的に生じます。ですから差別というものが全て悪いと私は考えていません。
問題は差別の基準の問題です。石原氏の基準に問題があるのです。同様にトランプ氏の基準が悪いのです。

ここでかねがね私が考えていた政治家としての石原氏の弱点を短く書いておきます。
彼は卓越した国内政治の指導者です。たった一つの弱点は彼には国際的視野が完全に欠落していることです。

今日取り上げた、「日本は「白人の失敗」に学べ」という記事をアメリカ人やヨーロッパ人が読んだらどのように考えるでしょうか?
白人を一方的に悪と断罪していることに怒りを感じるでしょう。
アジアのいろいるな国の人が読んだらどう思うでしょうか?アジア人を無視しているので悲しく思うでしょう。
石原慎太郎氏にはそのような発想が欠落しているのです。

何故、欠落しているか?その原因を考えると彼には欧米に住んだ経験がないのです。アジアのいろいろな国に住んだことがないのです。
若くして芥川賞を受賞して国内ではなばなしくもて囃されました。弟の裕次郎さんも一緒にもて囃されました。
その後、国内政治家として高く評価され忙しくなり、外国に長期間住むこと出来ませんでした。

外国に長期間住んでみると白人、黒人、日本人と差別することの愚かさがしみじみ理解出来るはずです。
人間は心の中での差別はさけられません。
しかし翻訳される可能性のある「文芸春秋」に、あのような記事を公表することは国益にかなうものでしょうか?
白人が読んだら嫌悪する筈です。同じことでも礼儀正しい言い回しを使えば良いのです。

もう一つの石原氏の白人嫌いは、彼がキリスト教をあまりにも知らな過ぎるからと思います。
キリスト教徒のスペイン人が南米を蹂躙し、残酷な所業をしたからキリスト教は悪であると単純に思っているのでしょうか?
どんな宗教でも悪い側面と良い側面があります。どちらの側面を大きくするかは人間が決めることなのです。
もし当時、日本人が大洋の航海術を知っていて、鉄砲を持っていたとしたら、日本人も南米で同じことをした可能性もある筈です。
そのことを考えない態度が偏狭過ぎるのです。

世界にはいろいろな人種が住んでいます。実に種々の宗教もあります。この状態は将来も変わらないでしょう。
ですからこそ、石原氏やトランプ氏のような差別主義は人類に幸をもたらさないと信じています。

今日の挿し絵代わりの写真は、石原氏が軽く考えているキリスト教の風景です。
ユネスコの世界遺産へ申請中の長崎の教会群とキリスト教関連遺産の中の3つの天主堂の写真です。上から順に、大浦天主堂、野首集落跡と旧野首教会堂、そして江上天主堂です。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)