後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

欧米人の優れた合理性は帆船の構造を見れば一目瞭然

2016年08月29日 | 日記・エッセイ・コラム
明治の文明開化以来、欧米人を理解して、その文明文化を早急に輸入することが日本の国家目標であったのです。
近代科学、蒸気機関、ジーゼルエンジンなどの技術の導入は素早く出来ました。しかし欧米人の考え方を理解するということはいまだに難しいと言われています。。
東洋人や中東の国々の人と、欧米人との大きな違いの一つは、欧米人の強い合理主義にあるのではないでしょうか。
そこで今日は横浜に係留、展示してある帆船日本丸の構造を使って欧米人の合理主義の実際を説明したいと思います。何故なら日本丸には欧米の合理主義がぎっちり詰まって、一切の無駄なものが無いからです。

さて帆船日本丸は、姉妹船海王丸とともに昭和3年の第55帝国議会で予算案が可決し、英国のリース市のラメージ&ファーガソン社へ発注されました。
ラメージ&ファーガソン社は設計と鋼材の切り出しと部品の調達を行い、全て日本へ輸送し、組み立ては 神戸川崎造船所で行われました。昭和5年3月31日に竣工し日本側へ引渡されました。
すべての部品は鋼材に至るまで英国製であり、初めの帆走・操舵技術は英国人教官の直接指導によったのです。現在でも船内の鋼材には鋼材の切削・加工を行ったスキニンググローブ社(England)の名前が明記されています。

上の1番目の写真は横浜の桜木町に係留されている帆船日本丸です。写真は2008年4月に私が撮ったものです。
写真をみると4本のマストが立っていて、それぞれに水平の帆桁が5、6本ずつついています。
そしてマストや帆桁から何本ものロープが下の船体に張ってあります。このロープの総数は245本あります。
この245本のロープにはそれぞれ合理的な目的があり、別々の名前がついているのです。船上の水夫は皆この名前を知っていて、29枚の帆の上げ下ろしの時、自分が担当しているロープを引っ張ったり、ゆるめたりするのです。それを船長の号令に従って一糸乱れずに行うのです。

2番目の写真は29枚の帆を大西典一船長の号令に従って全て揚げた日本丸の写真です。
私は大西船長の号令の声を聞きながら、多数の水夫たちが一糸乱れずに全ての帆を順序良く揚げていく光景を見ていました。

帆船はどんなに大きくても人力でロープ操作をして走る船です。小さな人力のみで大きな帆を高く揚げるためにあちこちにウインチの原理を利用した滑車がついています。245本のロープが命なのです。そこでロープの写真を示します。

3番目の写真はマストを船体に固定するロープ類と帆桁の向きを変えるロープ類です。

4番目の写真は29枚の帆を上げ下ろしするためのロープ類です。

さて帆船ではロープという言葉は使いません。使用目的別にハリヤードとかステイとか固有の名前がついているのです。しかし今回は簡単のため、すべてロープと呼ぶことにそいています。
ゴチャゴチャしたロープ類の写真を見ても大型帆船の構造は一瞬にして分かるというわけにはいきません。しかし数多くのロープ類には、たった2種類しかないのです。
1)マストをしっかり立てるため船体へ固定したロープ類(ステイとシュラウド)、
2)帆を上げたり、向きを変えるためのロープ類(ハリヤードやシート)。

この複雑な大型帆船の構造は一般に趣味として使われているクルーザー型のヨットを見ると簡単に理解出来ます。

5番目の写真はクルーザー型のヨットの構造を示しています。
この一本マストのヨットと4本マストの大型帆船の構造と帆走の原理はまったく同じなのです。
1)マストをしっかり立てるため船体へ固定したロープ類をクルーザーではステイとシュラウドと言います。
2)前後の2枚の帆を上げたり、向きを変えるためのロープ類をクルーザーでも同じくハリヤードやシートと呼びます。

私はこのようなクルーザーの帆走を25年間、趣味にしていました。
クルーザーヨットに乗っていると、その部品一つ一つの合目的な完璧性、船全体の構造の無駄の無さ、絶対に転覆しないキールの重さ、などなどを体感的に理解出来ます。全て合理的に出来ているのです。
ですから、帆船こそ欧米人の合理主義の極地の一つだと体験的に理解したのです。
これこそヨーロッパ文化の真髄と、クルーザーに乗る度に感動したものです。

日本丸は横浜市、JR桜木町駅前のみなとみらい日本丸係留岸壁に展示、公開されています。
国土交通省所管の大型帆船で、横浜の市民が、甲板ボランティアーになり、ロープ操作と修理や保守を担当しています。船倉にも自由に入り保管したり、屑ロープを編みなおしてもう一度使えるようにしています。帆船上ではロープ類は絶対に捨てないで、使えなくなるまで再利用するのです。
日本丸では帆の上げ方や種々の修理方法を、以前この船の船長や航海士をしていた人々が直接、根気良く教えています。
教わりながら帆船特有の文化を理解出来るのです。
一度、ご覧になっては如何でしょうか?

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)

日本の世界遺産認定の疑問と批判・そんなものが何故、世界遺産なのか?

2016年08月29日 | 日記・エッセイ・コラム
昨日の記事で、世界文化遺産の一つの「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」をご紹介いたしました。
これは日本にある16の世界文化遺産の一つです。他に自然遺産が4つあります。
国連の世界遺産の認定には以前から興味があって、「負の遺産」も含めて、いろいろな角度から考えてきました。
昨日、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」関連の25の構成資産の全てを見ていると非常に大きな疑問が湧き出てきました。
疑問とは「そんなものが何故、世界の文化遺産なのか?」という疑問です。
そこで日本にある16件の世界文化遺産と4件の世界自然遺産を改めて眺めてみました。
そうすると、「そんなものが何故、世界の文化遺産なのか?」という疑問が益々深まるばかりです。
今日は何故このような問題が起きているかという原因を考えました。

「そんなものが何故、世界の文化遺産なのか?」という問題が起きる大きな原因は下の二つあると思います。
(1)日本政府が国連へ候補の案件を提出する目的が、寂れた地方の観光地の再活性化にあるためです。
(2)候補の案件は政治家が決定します。従ってその案件が世界的に比較して本当に人類の遺産として残すべ貴重な文化財なのかという選別が行われていないのです。
芸術や宗教や哲学や比較文化人類学のような文化の各分野を専門にして、国際的に活躍した人々によって構成された選別委員会が決めるのではないのです。地元の教育委員会の意見は参考にしますが、教育委員は地元の狭い視野になりがちなのです。
したがって上の(1)の目的で実行されていますから、各地方の出身の政治家の力関係で推薦案件が決まってしまうのです。

それにしても、これではあまりに酷いので、知床や屋久島のような誰でも納得する案件も推薦して来たのです。

末尾の参考資料に日本の20の世界遺産の一覧表を示してあります。
世界的に見て価値の無い一例を示します。それは、18、明治日本の産業革命遺産です。
その構成資産の一つに旧八幡製鉄の古い溶鉱炉が含まれています。明治初期に作られて近代式に熱風を吹き込む溶鉱炉です。しかしそれはイギリスやドイツの近代式溶鉱炉を真似して作ったものです。イギリスにある最初の熱風式溶鉱炉なら間違いなく世界遺産にふさわしいでしょう。

ですからそれを世界遺産として推薦することが間違っていると思います。
世界遺産ではなく、それは日本の将来の為に残すべき「日本文化遺産」なのです。
こんな基準で見直せば以下は世界遺産にはふさわしいとは言えません。むしろ日本文化遺産と呼ぶのが適切ではないでしょうか?
    富岡製糸場と絹産業遺産群
    石見銀山遺跡とその文化的景観
    明治日本の産業革命遺産、など。
そして以下の自然遺産は確かに美しい風景ですが、世界的に考えればありふれた風景に違いありません。
    白神山地
    小笠原諸島

この他のもう一つの疑問点は、それぞれの案件に20、30と数多くの構成資産が含まれていることです。
これは地域の振興を目的にした政治家があれもこれもと追加して行った結果なのでしょう。
しかし今日はあまり長くなるのでこの辺で止めます。

今日の挿し絵代わりの写真は過ぎ行く夏を惜しみつつ湘南の海の風景の写真をお送りいたします。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
===参考資料=====================
日本の世界遺産;http://nihon-sekaiisan.com/
世界文化遺産が16、そして世界自然遺産が4つです。
知床 – (北海道)
1、白神山地 – (青森、秋田)
2、平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群 – (岩手)
3、日光の社寺 – (栃木)
4、富岡製糸場と絹産業遺産群 – (群馬)
4、国立西洋美術館本館 – (ル・コルビュジエの建築と都市計画の一部として) – (東京)
5、小笠原諸島 – (東京)
6、富士山-信仰の対象と芸術の源泉 – (静岡、山梨)
7、白川郷・五箇山の合掌造り集落 – (岐阜、富山)
8、古都京都の文化財 – (京都)
9、古都奈良の文化財 – (奈良)
10、法隆寺地域の仏教建造物 – (奈良)
11、紀伊山地の霊場と参詣道(通称:熊野古道) – (和歌山、奈良、三重)
12、姫路城 – (兵庫)
13、石見銀山遺跡とその文化的景観 – (島根)
14、原爆ドーム – (広島)
15、厳島神社(宮島) – (広島)
16、明治日本の産業革命遺産 – (山口、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島、岩手、静岡)
17、厳島神社(宮島) – (広島)
18、明治日本の産業革命遺産 – (山口、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島、岩手、静岡) 軍艦島ツアーレポート
19、屋久島 – (鹿児島)
20、琉球王国のグスク及び関連遺産群 – (沖縄)