明治の文明開化以来、欧米人を理解して、その文明文化を早急に輸入することが日本の国家目標であったのです。
近代科学、蒸気機関、ジーゼルエンジンなどの技術の導入は素早く出来ました。しかし欧米人の考え方を理解するということはいまだに難しいと言われています。。
東洋人や中東の国々の人と、欧米人との大きな違いの一つは、欧米人の強い合理主義にあるのではないでしょうか。
そこで今日は横浜に係留、展示してある帆船日本丸の構造を使って欧米人の合理主義の実際を説明したいと思います。何故なら日本丸には欧米の合理主義がぎっちり詰まって、一切の無駄なものが無いからです。
さて帆船日本丸は、姉妹船海王丸とともに昭和3年の第55帝国議会で予算案が可決し、英国のリース市のラメージ&ファーガソン社へ発注されました。
ラメージ&ファーガソン社は設計と鋼材の切り出しと部品の調達を行い、全て日本へ輸送し、組み立ては 神戸川崎造船所で行われました。昭和5年3月31日に竣工し日本側へ引渡されました。
すべての部品は鋼材に至るまで英国製であり、初めの帆走・操舵技術は英国人教官の直接指導によったのです。現在でも船内の鋼材には鋼材の切削・加工を行ったスキニンググローブ社(England)の名前が明記されています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/c1/0560a217451e7aff7f156c70fa49323e.jpg)
上の1番目の写真は横浜の桜木町に係留されている帆船日本丸です。写真は2008年4月に私が撮ったものです。
写真をみると4本のマストが立っていて、それぞれに水平の帆桁が5、6本ずつついています。
そしてマストや帆桁から何本ものロープが下の船体に張ってあります。このロープの総数は245本あります。
この245本のロープにはそれぞれ合理的な目的があり、別々の名前がついているのです。船上の水夫は皆この名前を知っていて、29枚の帆の上げ下ろしの時、自分が担当しているロープを引っ張ったり、ゆるめたりするのです。それを船長の号令に従って一糸乱れずに行うのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/fd/f4f90ceebc92f3273434550e37cebab4.jpg)
2番目の写真は29枚の帆を大西典一船長の号令に従って全て揚げた日本丸の写真です。
私は大西船長の号令の声を聞きながら、多数の水夫たちが一糸乱れずに全ての帆を順序良く揚げていく光景を見ていました。
帆船はどんなに大きくても人力でロープ操作をして走る船です。小さな人力のみで大きな帆を高く揚げるためにあちこちにウインチの原理を利用した滑車がついています。245本のロープが命なのです。そこでロープの写真を示します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/8f/65941adcd05eb2d8426e81d7cd357cf8.jpg)
3番目の写真はマストを船体に固定するロープ類と帆桁の向きを変えるロープ類です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/5b/66ef355086f8f0a8946beda61489e4da.jpg)
4番目の写真は29枚の帆を上げ下ろしするためのロープ類です。
さて帆船ではロープという言葉は使いません。使用目的別にハリヤードとかステイとか固有の名前がついているのです。しかし今回は簡単のため、すべてロープと呼ぶことにそいています。
ゴチャゴチャしたロープ類の写真を見ても大型帆船の構造は一瞬にして分かるというわけにはいきません。しかし数多くのロープ類には、たった2種類しかないのです。
1)マストをしっかり立てるため船体へ固定したロープ類(ステイとシュラウド)、
2)帆を上げたり、向きを変えるためのロープ類(ハリヤードやシート)。
この複雑な大型帆船の構造は一般に趣味として使われているクルーザー型のヨットを見ると簡単に理解出来ます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/c1/2ebd3ce4e280abfa5155bc8b1123fbd7.jpg)
5番目の写真はクルーザー型のヨットの構造を示しています。
この一本マストのヨットと4本マストの大型帆船の構造と帆走の原理はまったく同じなのです。
1)マストをしっかり立てるため船体へ固定したロープ類をクルーザーではステイとシュラウドと言います。
2)前後の2枚の帆を上げたり、向きを変えるためのロープ類をクルーザーでも同じくハリヤードやシートと呼びます。
私はこのようなクルーザーの帆走を25年間、趣味にしていました。
クルーザーヨットに乗っていると、その部品一つ一つの合目的な完璧性、船全体の構造の無駄の無さ、絶対に転覆しないキールの重さ、などなどを体感的に理解出来ます。全て合理的に出来ているのです。
ですから、帆船こそ欧米人の合理主義の極地の一つだと体験的に理解したのです。
これこそヨーロッパ文化の真髄と、クルーザーに乗る度に感動したものです。
日本丸は横浜市、JR桜木町駅前のみなとみらい日本丸係留岸壁に展示、公開されています。
国土交通省所管の大型帆船で、横浜の市民が、甲板ボランティアーになり、ロープ操作と修理や保守を担当しています。船倉にも自由に入り保管したり、屑ロープを編みなおしてもう一度使えるようにしています。帆船上ではロープ類は絶対に捨てないで、使えなくなるまで再利用するのです。
日本丸では帆の上げ方や種々の修理方法を、以前この船の船長や航海士をしていた人々が直接、根気良く教えています。
教わりながら帆船特有の文化を理解出来るのです。
一度、ご覧になっては如何でしょうか?
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
近代科学、蒸気機関、ジーゼルエンジンなどの技術の導入は素早く出来ました。しかし欧米人の考え方を理解するということはいまだに難しいと言われています。。
東洋人や中東の国々の人と、欧米人との大きな違いの一つは、欧米人の強い合理主義にあるのではないでしょうか。
そこで今日は横浜に係留、展示してある帆船日本丸の構造を使って欧米人の合理主義の実際を説明したいと思います。何故なら日本丸には欧米の合理主義がぎっちり詰まって、一切の無駄なものが無いからです。
さて帆船日本丸は、姉妹船海王丸とともに昭和3年の第55帝国議会で予算案が可決し、英国のリース市のラメージ&ファーガソン社へ発注されました。
ラメージ&ファーガソン社は設計と鋼材の切り出しと部品の調達を行い、全て日本へ輸送し、組み立ては 神戸川崎造船所で行われました。昭和5年3月31日に竣工し日本側へ引渡されました。
すべての部品は鋼材に至るまで英国製であり、初めの帆走・操舵技術は英国人教官の直接指導によったのです。現在でも船内の鋼材には鋼材の切削・加工を行ったスキニンググローブ社(England)の名前が明記されています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/c1/0560a217451e7aff7f156c70fa49323e.jpg)
上の1番目の写真は横浜の桜木町に係留されている帆船日本丸です。写真は2008年4月に私が撮ったものです。
写真をみると4本のマストが立っていて、それぞれに水平の帆桁が5、6本ずつついています。
そしてマストや帆桁から何本ものロープが下の船体に張ってあります。このロープの総数は245本あります。
この245本のロープにはそれぞれ合理的な目的があり、別々の名前がついているのです。船上の水夫は皆この名前を知っていて、29枚の帆の上げ下ろしの時、自分が担当しているロープを引っ張ったり、ゆるめたりするのです。それを船長の号令に従って一糸乱れずに行うのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/fd/f4f90ceebc92f3273434550e37cebab4.jpg)
2番目の写真は29枚の帆を大西典一船長の号令に従って全て揚げた日本丸の写真です。
私は大西船長の号令の声を聞きながら、多数の水夫たちが一糸乱れずに全ての帆を順序良く揚げていく光景を見ていました。
帆船はどんなに大きくても人力でロープ操作をして走る船です。小さな人力のみで大きな帆を高く揚げるためにあちこちにウインチの原理を利用した滑車がついています。245本のロープが命なのです。そこでロープの写真を示します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/8f/65941adcd05eb2d8426e81d7cd357cf8.jpg)
3番目の写真はマストを船体に固定するロープ類と帆桁の向きを変えるロープ類です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/5b/66ef355086f8f0a8946beda61489e4da.jpg)
4番目の写真は29枚の帆を上げ下ろしするためのロープ類です。
さて帆船ではロープという言葉は使いません。使用目的別にハリヤードとかステイとか固有の名前がついているのです。しかし今回は簡単のため、すべてロープと呼ぶことにそいています。
ゴチャゴチャしたロープ類の写真を見ても大型帆船の構造は一瞬にして分かるというわけにはいきません。しかし数多くのロープ類には、たった2種類しかないのです。
1)マストをしっかり立てるため船体へ固定したロープ類(ステイとシュラウド)、
2)帆を上げたり、向きを変えるためのロープ類(ハリヤードやシート)。
この複雑な大型帆船の構造は一般に趣味として使われているクルーザー型のヨットを見ると簡単に理解出来ます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/c1/2ebd3ce4e280abfa5155bc8b1123fbd7.jpg)
5番目の写真はクルーザー型のヨットの構造を示しています。
この一本マストのヨットと4本マストの大型帆船の構造と帆走の原理はまったく同じなのです。
1)マストをしっかり立てるため船体へ固定したロープ類をクルーザーではステイとシュラウドと言います。
2)前後の2枚の帆を上げたり、向きを変えるためのロープ類をクルーザーでも同じくハリヤードやシートと呼びます。
私はこのようなクルーザーの帆走を25年間、趣味にしていました。
クルーザーヨットに乗っていると、その部品一つ一つの合目的な完璧性、船全体の構造の無駄の無さ、絶対に転覆しないキールの重さ、などなどを体感的に理解出来ます。全て合理的に出来ているのです。
ですから、帆船こそ欧米人の合理主義の極地の一つだと体験的に理解したのです。
これこそヨーロッパ文化の真髄と、クルーザーに乗る度に感動したものです。
日本丸は横浜市、JR桜木町駅前のみなとみらい日本丸係留岸壁に展示、公開されています。
国土交通省所管の大型帆船で、横浜の市民が、甲板ボランティアーになり、ロープ操作と修理や保守を担当しています。船倉にも自由に入り保管したり、屑ロープを編みなおしてもう一度使えるようにしています。帆船上ではロープ類は絶対に捨てないで、使えなくなるまで再利用するのです。
日本丸では帆の上げ方や種々の修理方法を、以前この船の船長や航海士をしていた人々が直接、根気良く教えています。
教わりながら帆船特有の文化を理解出来るのです。
一度、ご覧になっては如何でしょうか?
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)