国連のユネスコの世界遺産には3種類に分かれています。知床や白神山地のような自然遺産と、京都の文化財や白川郷の合掌造り集落などの文化遺産、と日本にはまだ無い複合遺産の3種類です。
自然遺産とは文字通り非常に美しい景観の山や湖や海の組み合わせが主なものです。一方文化遺産とは人類の遺産として残すべき人間の作った特別な文化のことでです。
複合遺産とはこの2種類の遺産が複合したもので、日本にはまだありません。
今日、ご紹介する「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」は文化遺産に分離されます。
これは富士山にまつわる信仰や宗教と、芸術活動に対して認定されたものです。
従って富士山や富士五湖や幾つかの浅間神社がそれぞれ単独で認定された訳ではありません。
しかし観光客を集めるためもあって、「世界遺産の忍野八海」を見に行こうとか「世界遺産の北口富士浅間神社」をお参りに行こうという表現がよく使われています。
しかしこの表現は、文化という二文字が省略されているので、しばしば誤解を招くことになります。
さて、2013年に認定された「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」には、それを証明する構成資産が全部で25箇所もあるのです。この25の構成資産の全部を一まとめにして世界文化遺産に認定されたのです。
すなはち富士山、富士五湖、忍野八海、北口富士浅間神社などが世界文化遺産に認定された理由はそれにまつわる文化が貴重だったからなのです。
一昨日、この25の構成資産の一つである北口富士浅間神社の写真をいろいろ撮って来ました。その写真の説明の前にまず全体的な説明をいたします。
静岡県と山梨県にまたがる富士山は古来より信仰の対象とされ、その上、芸術上の主要な題材としてされてきました。
その日本人の富士山にまつわる宗教活動と芸術活動が国際的に非常に貴重だと認められたのです。
それでは芸術活動とは具体的に何を意味するのでしょうか?
今から約1,200年前、奈良時代にはすでに富士山を題材にした歌が、日本最古の歌集である「万葉集」に詠まれています。
また、富士山は、『竹取物語』や『伊勢物語』などの古典作品をはじめ、俳句や漢詩、夏目漱石や太宰治の文学作品にも取り上げられてきました。
絵画の世界では、平安時代から富士山は絵画に描かれるようになります。現存する最古の絵画は、秦致貞の『聖徳太子絵伝』です。
そして江戸時代になると、富士登山が「富士講」等を通じて庶民に爆発的に人気となると、富士山も多くの絵師に描かれるようになりました。葛飾北斎の『冨嶽三十六景』や歌川広重の『不二三十六景』、『東海道五拾三次』など、様々な場所から見た富士山が浮世絵に描かれています。浮世絵が海外に輸出されるようになると、ゴッホやモネなど、西洋の芸術家にも大きな衝撃を与えました。
それでは一方の宗教活動とは何でしょうか?
それは富士山信仰のことです。富士山そのものを信仰の対象としたもので修験道の山行きとそれを支える幾つかの登山口にあるそれぞれの浅間神社です。修験道の山行きが重要なので吉田口や須走口から登る登山道などもこの文化遺産に含まれているのです。
それでは構成資産の一つである北口富士浅間神社を一昨日撮って来た写真に従ってご紹介いたします。
1番目の写真は本殿です。元和元年(1615)鳥居土佐守創建です。一間社入母屋造、向拝唐破風造、檜皮葺屋根、安土桃山様式で 昭和28年、国指定重要文化財に指定されました。
2番目の写真は修験者と僧侶に導かれた富士講の行列です。この写真こそ富士山信仰の修験道の山行きの出発前の行列なのです。
「六根清浄、・・・」と唱和すれ声が杉並木に神秘的にこだましていました。
3番目の写真も2番目と同じ僧侶に導かれた富士講の行列です。富士信仰は修験道で神仏混交の信仰です。
4番目の写真は本殿前から見た杉の巨木の並んだ参道の写真です。
5番目の写真は本殿とその右下に和服の女性と黒人が写っている写真です。和服の女性が本殿の横での無料の抹茶の席へ誘っています。
6番目の写真は本殿横の野点の様子です。和菓子も上等で茶のたて方もなかなかなものでした。実に優雅な野点でした。
7番目の写真は家内とそこで仲良くなったジャマイカ人の男性の写真です。リオ五輪で金メダルを三個とったウサイン・ボルトの従兄弟だという人と家内がボルトのポーズをとってふざけています。
以上の写真はあくまでも25構成資産のたった一つのご紹介です。
北口富士浅間神社は山中湖に行く道の途中にあるので、昔から何度も寄りました。
いつも人影の少ない静かな神社でしたが、一昨日は参拝客が多くて、野点の抹茶のサービスまでありました。これも世界文化遺産に認定されたお陰でしょうか。
今度は寄なかった忍野八海にはいつも中国人の観光客が溢れ、中国語が飛び交っています。
世界自然遺産は美しい自然の保護に役にたちます。世界文化遺産は各地の貴重な文化の保存に役にたちます。しかしあまりにも観光客が増大すると逆効果になる恐れが感じられます。何故か考えさせる問題です。そんなことを考えながら写真を撮ってきました。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
=====参考資料===============
構成資産とは、富士山が「信仰の対象」「芸術の源泉」となった価値を具体的に証明できる文化資産のこと。山体だけでなく、古より富士山と関わりを持つ周囲の神社や登山道、風穴、溶岩樹型、湖沼などがあります。世界文化遺産としてふさわしい価値を有している、富士山の構成資産のすべてをご覧ください。
構成資産は全部で25箇所! これぜーんぶで「世界遺産」なんです!
http://www.fujisan223.com/reason/kouseishisan/
1. 静岡県・山梨県
富士山(富士山域)
「信仰の対象」と「芸術の源泉」の価値を持つ、標高約1,500m以上の重要な地域に9件の構成要素が存在。
1-1. 静岡県・山梨県
山頂の信仰遺跡群
火口壁に沿って神社等の宗教関連施設が分布し、山頂部で宗教行為が体系化されたことを示しています。
1-2. 富士宮市
大宮・村山口登山道(現 富士宮口登山道)
富士山本宮浅間大社を起点とし、村山浅間神社を経て山頂南側に至る登山道。資産範囲は六合目以上です。
・・・中略・・・
1-5. 富士吉田市/冨士河口湖町
吉田口登山道
北口本宮冨士浅間神社を起点とし、山頂を目指す登山道。18世紀後半以降、最も多く利用されています。
1-6. 富士吉田市
北口本宮冨士浅間神社
浅間大神が祀られていた遙拝所を起源とし、1480年には鳥居を建立。富士講とのつながりが強いとされる。
・・・以下省略・・・・
そして静岡県の三保の松原が25番目の構成資産になっています。
自然遺産とは文字通り非常に美しい景観の山や湖や海の組み合わせが主なものです。一方文化遺産とは人類の遺産として残すべき人間の作った特別な文化のことでです。
複合遺産とはこの2種類の遺産が複合したもので、日本にはまだありません。
今日、ご紹介する「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」は文化遺産に分離されます。
これは富士山にまつわる信仰や宗教と、芸術活動に対して認定されたものです。
従って富士山や富士五湖や幾つかの浅間神社がそれぞれ単独で認定された訳ではありません。
しかし観光客を集めるためもあって、「世界遺産の忍野八海」を見に行こうとか「世界遺産の北口富士浅間神社」をお参りに行こうという表現がよく使われています。
しかしこの表現は、文化という二文字が省略されているので、しばしば誤解を招くことになります。
さて、2013年に認定された「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」には、それを証明する構成資産が全部で25箇所もあるのです。この25の構成資産の全部を一まとめにして世界文化遺産に認定されたのです。
すなはち富士山、富士五湖、忍野八海、北口富士浅間神社などが世界文化遺産に認定された理由はそれにまつわる文化が貴重だったからなのです。
一昨日、この25の構成資産の一つである北口富士浅間神社の写真をいろいろ撮って来ました。その写真の説明の前にまず全体的な説明をいたします。
静岡県と山梨県にまたがる富士山は古来より信仰の対象とされ、その上、芸術上の主要な題材としてされてきました。
その日本人の富士山にまつわる宗教活動と芸術活動が国際的に非常に貴重だと認められたのです。
それでは芸術活動とは具体的に何を意味するのでしょうか?
今から約1,200年前、奈良時代にはすでに富士山を題材にした歌が、日本最古の歌集である「万葉集」に詠まれています。
また、富士山は、『竹取物語』や『伊勢物語』などの古典作品をはじめ、俳句や漢詩、夏目漱石や太宰治の文学作品にも取り上げられてきました。
絵画の世界では、平安時代から富士山は絵画に描かれるようになります。現存する最古の絵画は、秦致貞の『聖徳太子絵伝』です。
そして江戸時代になると、富士登山が「富士講」等を通じて庶民に爆発的に人気となると、富士山も多くの絵師に描かれるようになりました。葛飾北斎の『冨嶽三十六景』や歌川広重の『不二三十六景』、『東海道五拾三次』など、様々な場所から見た富士山が浮世絵に描かれています。浮世絵が海外に輸出されるようになると、ゴッホやモネなど、西洋の芸術家にも大きな衝撃を与えました。
それでは一方の宗教活動とは何でしょうか?
それは富士山信仰のことです。富士山そのものを信仰の対象としたもので修験道の山行きとそれを支える幾つかの登山口にあるそれぞれの浅間神社です。修験道の山行きが重要なので吉田口や須走口から登る登山道などもこの文化遺産に含まれているのです。
それでは構成資産の一つである北口富士浅間神社を一昨日撮って来た写真に従ってご紹介いたします。
1番目の写真は本殿です。元和元年(1615)鳥居土佐守創建です。一間社入母屋造、向拝唐破風造、檜皮葺屋根、安土桃山様式で 昭和28年、国指定重要文化財に指定されました。
2番目の写真は修験者と僧侶に導かれた富士講の行列です。この写真こそ富士山信仰の修験道の山行きの出発前の行列なのです。
「六根清浄、・・・」と唱和すれ声が杉並木に神秘的にこだましていました。
3番目の写真も2番目と同じ僧侶に導かれた富士講の行列です。富士信仰は修験道で神仏混交の信仰です。
4番目の写真は本殿前から見た杉の巨木の並んだ参道の写真です。
5番目の写真は本殿とその右下に和服の女性と黒人が写っている写真です。和服の女性が本殿の横での無料の抹茶の席へ誘っています。
6番目の写真は本殿横の野点の様子です。和菓子も上等で茶のたて方もなかなかなものでした。実に優雅な野点でした。
7番目の写真は家内とそこで仲良くなったジャマイカ人の男性の写真です。リオ五輪で金メダルを三個とったウサイン・ボルトの従兄弟だという人と家内がボルトのポーズをとってふざけています。
以上の写真はあくまでも25構成資産のたった一つのご紹介です。
北口富士浅間神社は山中湖に行く道の途中にあるので、昔から何度も寄りました。
いつも人影の少ない静かな神社でしたが、一昨日は参拝客が多くて、野点の抹茶のサービスまでありました。これも世界文化遺産に認定されたお陰でしょうか。
今度は寄なかった忍野八海にはいつも中国人の観光客が溢れ、中国語が飛び交っています。
世界自然遺産は美しい自然の保護に役にたちます。世界文化遺産は各地の貴重な文化の保存に役にたちます。しかしあまりにも観光客が増大すると逆効果になる恐れが感じられます。何故か考えさせる問題です。そんなことを考えながら写真を撮ってきました。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
=====参考資料===============
構成資産とは、富士山が「信仰の対象」「芸術の源泉」となった価値を具体的に証明できる文化資産のこと。山体だけでなく、古より富士山と関わりを持つ周囲の神社や登山道、風穴、溶岩樹型、湖沼などがあります。世界文化遺産としてふさわしい価値を有している、富士山の構成資産のすべてをご覧ください。
構成資産は全部で25箇所! これぜーんぶで「世界遺産」なんです!
http://www.fujisan223.com/reason/kouseishisan/
1. 静岡県・山梨県
富士山(富士山域)
「信仰の対象」と「芸術の源泉」の価値を持つ、標高約1,500m以上の重要な地域に9件の構成要素が存在。
1-1. 静岡県・山梨県
山頂の信仰遺跡群
火口壁に沿って神社等の宗教関連施設が分布し、山頂部で宗教行為が体系化されたことを示しています。
1-2. 富士宮市
大宮・村山口登山道(現 富士宮口登山道)
富士山本宮浅間大社を起点とし、村山浅間神社を経て山頂南側に至る登山道。資産範囲は六合目以上です。
・・・中略・・・
1-5. 富士吉田市/冨士河口湖町
吉田口登山道
北口本宮冨士浅間神社を起点とし、山頂を目指す登山道。18世紀後半以降、最も多く利用されています。
1-6. 富士吉田市
北口本宮冨士浅間神社
浅間大神が祀られていた遙拝所を起源とし、1480年には鳥居を建立。富士講とのつながりが強いとされる。
・・・以下省略・・・・
そして静岡県の三保の松原が25番目の構成資産になっています。