志摩芳次郎の「俳句をダメにした俳人たち」という痛快な本がある。
その中に「うそつき俳人・中曽根康弘」がある。
まずよく知られた俳人政治家の句を紹介している。
三木武吉涼しく痩せて眉太し 万木(大野)
鶯や美濃の牧谷紙どころ
竜飛崎鷹を放ってそばだてり 橙青(大久保)
寒月の満ちつつ寒のゆるみけり
火種なき老政治家の古火鉢 鰌児(林)
蒲団まで日の差込める病臥かな
ミモザ咲くカルタゴの石拾ひたり 徳馬(宇都宮)
セルの胸ふくよかなりしをみなかな
コスモスの揺るる一叢里帰り 貞鳳(今泉)
あくびして子猫の口も小春かな
これらはそれなりに立派だと志摩は褒めている。しかし、戦後すぐの社会党内閣の首班、片山哲などはひどいのを詠んでいる。
十和田湖に爆弾投げて夏涼し
これは誰が見てもいただけない。
さきの大久保橙青は初代海上保安庁長官で本名、大久保武雄。ホトトギスのご出身だそうだ。
もっとも上手いと評価しているのは、タレント議員の一龍斎貞鳳。たしかにコスモスの句などよさそうだ。
さて、中曽根さんの句である。
亡き父母を呼びかひ鳴くや蝉時雨 康弘
炎天へ霊火噴き立ち原爆忌
「中曽根さまの俳句である。器用だけで、心がこもっていない。そんな感じを受ける。蝉時雨を鳴くというのは拙劣。蝉時雨は蝉が振るに鳴くことをいう。霊火噴き立ちは、おかしい。噴水ではないのだ。首相をしりぞいたこれからの中曽根さまの俳句に注目したい」
毒舌の志摩芳郎も権力者・中曽根さんには、少し遠慮がち。でも言うことだけは言っている。
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