玉村豊男著「旅の流儀」(中公新書)を読みました。「旅の空」というタイトルで『旅行読売』に2012年4月から3年間掲載されたエッセイをもとにした本です。パリに留学していた学生時代の話から添乗員や通訳として働いた時の話、長野県東御市に居を構えてからのワイン製造やレストランの話までバラエティに富んだ含蓄のある内容です。世界中の話が出てきますが、音楽ではニューヨークの秋を。
PETE MALINVERNI (ピート・マリンベル二)
AUTUMN IN NEW YORK (Reservoir 2002年録音)
スタンダードの「ニューヨークの秋」は、たくさんの人が録音しています。ピアノでは、ケニー・バロンがリーダー作のタイトルにしていましたが、ピート・マリンベルニもこの曲をタイトルにしてアルバムを作っていました。マリンベルニのプレイはバップが元ですが、ここでは、それに加えクラシカルなところやビル・エヴァンスからの影響を感じさせるところなど多様性が窺われます。
メンバーは、マリンベルニ(p)、デニス・アーウィン(b)、リロイ・ウィリアムス(ds)。デニス・アーウィンは、重量級のベースを弾くというイメージがありますし、リロイ・ウィリアムスは、バリー・ハリスとの共演で知られていて、マリンベルニのリーダー作に相応しいメンバーが参加しています。
曲は、マリンベルニの自作が、「Simpatico」、「Elegy」、「Contemplative」、「Little David」の4曲。スタンダードが、「Too Close For Comfort」、「My Shining Hour」、「In Love In Vain」、「Long Ago and Far Away」、「Autumn in New York」の5曲。「Elegy」は、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件により亡くなった2人の旧友に捧げられたものです。
マリンベルニ(p)が、鎮魂の意味を込めて作った味わい深いアルバム。「Elegy」は、クラシカルな感じの鎮魂歌で、「In Love in Vain」や「Autumn in New York」も静謐さを湛えています。「My Shining Hour」や「Long Ago and Far Away」は明るめの軽快な演奏ながら、マリンベルニのソロは一音一音繊細な音の運びをしています。アーウィンのベースがどっしりと支えていて、彼のソロも入ります。
【玉村豊男著「旅の流儀」(中公新書)】
「なんでもない風景」と題された一篇に、『旅先で心惹かれるのは、とりたてて変哲もない、どこにでもあるような普通の風景である。』として、『わざわざ遠くの名所を見に行くより、ホテルの近所を歩くほうが、私にとっては魅力的だ。』とあり、この一節は、記憶に残りました。ガイドブックに頼ってばかりいては確かにつまらないです。
【ヴィラデストガーデンアンドワイナリー】