名著として知られる田中澄江著「花の百名山」が、2017年6月10日に文庫新装版として復刊されたので購入し、初めて読みました。元は雑誌「山と渓谷」に連載されたものだけに、登山愛好者向けに書かれたものですが、一般向けでもあります。
を
北海道から九州まで、自ら登った山の中から、花の多い100の山を選び、山行記とその山の歴史や咲いている花などについて記しています。選択した山と花の例として、目次から長野県に関連した10の山を抜き書きしてみます。
61 仙丈岳・シナノナデシコ
62 根子岳・ウメバチソウ
63 苗場山・ツルコケモモ
64 霧の塔・トキソウ
65 守屋山・ザゼンソウ
66 黒斑山・ヒメシャジン
67 浅間山・ムラサキ
68 槍ヶ岳・トウヤクリンドウ
69 白馬岳・コマクサ
70 木曽駒ケ岳・ヒメウスユキソウ
著者の高山植物(花)に対する深遠な知識に驚かされ、また、戦国時代を中心とした歴史への造詣、古典文学の知識もところどころで披露され、話が幾重にも重なって重厚さがあります。例えば、黒斑山の章では、島崎藤村の「千曲川旅情の歌」から話が始まるなど、新鮮な気持ちになります。
高山植物については、平地の花と同じイメージでいたのですが、近年登山に行くようになって、全く別物だと気づき、高山植物(花)を見るのが僕の山登りの楽しみの一つになりました。そういう意味でもガイドブック的なところのあるこの本は役に立ちますし、あまり高くない山を取り上げているのもいいところです。
木曽駒ケ岳の「ヒメウスユキソウ」は、実際に目にしているので、文章が視覚的にも具体化され、魅力的な章になっていました。上記の10の花の中では、「ヒメウスユキソウ」の他にも、ザゼンソウ、ヒメシャジン、トウヤクリンドウ、コマクサは見たことがありますが、別の山で見たものです。「ヒメシャジン」を見に、花の季節に黒斑山に登りたいという気持ちになりました。
【著者のイラストから】